こんにちは。デザイナーのみなやまくみこです。今回は、知り合いの女性大家さんから相談を受けた事例をご紹介します。

空室が埋まらないということで、悩まれていたこのアパートは首都圏郊外にあり、築古+和室+風呂・トイレで3点ユニットといった、どちらかといえば競争力に欠ける物件です。

近隣には同様の単身向け物件が多く、そういった厳しい状況のなかで、なんとかご自身の物件を差別化させたいという希望をお持ちでした。そこで空室のアクセントクロスと床を変えて、印象を一新させることになりました。

もう一ついえば、家賃の価格帯が低いこともあり、多額のコストはかけられません。そこで、できるところはご自身でセルフリノベーションを行います。

さて、一体どんなお部屋になったのかレポートしたいと思います。

家賃が安い部屋のリノベーションの注意点

この物件は、築年数の経った単身者向けアパート。オーナーチェンジで購入されてから、内装はクロス交換、木部塗装、畳は表替えと最低限手を入れた状態です。

汚くはないけれど古い設備でも使えるものはそのままにしており、ターゲットは女性向けというよりは、どちらかといえば男性向けの方が良いように思えます。

また、近隣には同じような価格帯で同じような間取りの物件が多くあるため、個性がなければ内見にきても入居希望者の印象に残りません。

そこで「デザインリノベーションをしたい」ということになったのですが、ここで注意したいのは、「家賃の安い部屋で、費用をどこまでかけるか」ということです。

今回のように、部屋の魅力を押し上げるようなバリューアップを目的にした工事ではなくて、原状回復のリフォーム(入居者が生活することによって、また時間が経つことによって壊れたり汚くなった部分を新品に交換したり修繕したりするリフォームのこと)をするだけで何カ月もの家賃分の費用となり、大幅な赤字になるような物件もあります。

この物件はまさしくそれに該当する物件で、通常の原状回復コストですら収支を圧迫しているため、バリューアップのリノベーションといえど、そう金額はかけられません。

そこで、費用対効果と労力を考えて、壁は一面のアクセントクロスだけ交換(プロに発注)、床は自分自身で施工することにしました。

どちらかといえばクロスの方が初心者に貼りやすく、床の方が難しいものですが、ご自身で行う理由については後ほど解説させていただきます。


レトロなリーフ柄クロスでインパクトを出す

まずは壁です。以前のコラム「一目惚れ必至!! アクセントクロスのコーディネート術をプロが伝授!」でお伝えしましたが、アクセントを入れる壁面は、入口に立ったときに目を引く壁面が基本です。窓の有無やその位置、壁の面積などの条件も含めて判断します。

このあたりの地域は、地主・投資家どちらの物件も多く、アクセントクロスを使用した部屋も珍しくないそうです。事実、この部屋は以前からパステル調のアクセントクロスを使っていました。

なお、このアクセントクロスはオーナーさんが選んだそうです。女性らしく可愛らしいパステルのストライプ柄ですが、畳の和室とはちぐはぐなイメージです。

パステルのストライプ
現状の畳の和室とは合わない

天井が高く見えるので狭い部屋にはストライプ柄もオススメです。私から次の3種類を提案しました。

(1)レトロシックなストライプ
(2)レトロなリーフ柄
(3)ビンテージの床材柄

これはターゲットが男性ということを意識しています。またレトロやビンテージを選んでいるのは物件が古いからです。古い物件に新しいものを導入するときは、そこだけが浮いてしまいがちです。そのため、まわりの古い部分に馴染むような色味や素材を合わせることにしています。

また、本来、狭い部屋に柄を合わせるのは、圧迫感を与えるため避けますが、この部屋の場合は近隣でアクセントクロスを使用している部屋も多いと聞いて、個性を出すためにも、あえて柄クロスを提案しています。

オーナーさんはブルー・グリーンのレトロカラーと基調としたリーフ柄を選ばれました。以前のパステル調からすると大胆なイメージチェンジです。

リリカラ FE-8089

無地のカラークロスに比べて柄クロスは好みがわかれるものです。とくに花柄を使うときは女性限定になりがちなので、選ぶなら抽象的な植物柄がいいでしょう。このリーフ柄は遠目では規則的な模様に見えます。アップで見るとこんな感じです。

レトロな色が築年数の経った部屋に馴染みやすい

施工についていえば、一面だけのクロスであれば、面積も少ないのでDIYで行ってもそこまで大変ではありません。

また、プロに頼んでも一面だけの壁面の面積であれば、仮にメーター550円(糊付き)で6畳の和室の壁面であれば約10平米で、おおよそ6000円もあれば可能です。このオーナーさんは、これまでクロスを貼った経験がないということで、プロに発注しました。


クロスに合わせたビンテージカラーの簡易床

続いては床です。畳からフローリングにする工事は、いくら6畳一間とはいえ、10万円以上かかってしまいます。そこで、なんとかコストを下げたいというオーナーさんの意向で、今回は畳の上に敷ける簡易な床材を使いました。

釘や接着剤を使うことなく、重ねてはめ込むことで施工できるのが特徴で、カットするのもカッター1本ででき、後から取り外すこともできます。

インターネット通販でいくつか種類が出ていますが、今回使用したのは「クリックフロアーズ」という商品です。厚さ4mmで耐久性があり、すべて木目でカラーは12色あります。壁の色に合わせてビンテージバニラをセレクトしました。

畳の上に簡易な床材を敷く

こちらが施工中の風景です。特別な工具を使わないので、初心者の女性でもできました。フローリングやCF(クッションフロア)の上には敷けば違和感はありませんが、畳の上に敷くとフカフカする可能性があります。

沈み込むようであれば、畳のうえにべニヤ板を敷いて施工する方が良いでしょう。床のビフォー・アフターはこんな感じです。

Before

After

古い和室がフローリングに変身しました!

この「クリックフロアーズ」のサイズは厚さ4mm×幅145mm×長さ907mm。1箱12枚入り(約1.57平米)で約1畳が施工できます。1箱が送料込で5690円 (税込 6145 円)で6箱注文したので、材料費は3万6870円です。

慣れてくれば6畳であれば数時間といったところですが、まったく初めてのため、1日近くかかったという話でした。この価格と手間で和室がフローリングになれば、上出来ではないでしょうか。

今回のケースでは、アクセントクロス一面がリピート分(繰り返しの絵柄の繋ぎ目がスムーズになるように、クロスを購入すること)とのり付きで約7000円、床が約3万7000円で、合せて4万4000円でリノベーションができました。

まとめ

空室率が高い地域、物件に競争力がない、ライバル物件が多い……こういったケースでは、単なる原状回復工事では、どうしても物件の印象が弱くなりがちです。

デザインリノベーションで物件のブランディングを行うのはおすすめではありますが、家賃の価格帯が低く、かけた費用を回収するのが難しいケースもあります。そのため、この事例の大家さんのように一部をご自身で行い、一部を業者発注するというのもコストカットの手段としては有効です。

後のことを考えると、水回りや電気設備といった部分はプロに任せた方がよいですが、一面だけのクロスや床の上張りといったような表装の施工であれば、初心者であってもチャレンジできますし、材料もインターネット通販で手に入れることができます。

またワンルームのように施工面積が少ないお部屋では、すべてプロ発注したとしても多額の費用はかかりにくいので、その辺は安心だと思います。

表装であれば、最悪失敗してもやり直すことは難しくありませんし、思い切って冒険してみるのも手です。この繁忙期に満室を実現するために、できることはやってみましょう!