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「不動産投資の本質は収益性だという話は、皆さんも聞いたことがあると思います。しかし最近物件を購入される方のなかには、この認識が希薄で購入判断を誤るケースが増えています

こう語るのは不動産コンサルタントの大橋亮太氏だ。都内の有名私大を卒業後、三井物産株式会社に就職。2011年に初めて物件を取得して、サラリーマン大家として物件規模を拡大した後、たった4年でセミリタイアを果たした

今回は、そんな大橋氏の成功の秘訣や、最近失敗している投資家のケーススタディなどを伺った。

「自分の軸を持つ」ことが成功への近道

大橋氏は、「自分の軸を持つ」ことが自身の不動産投資の成功に繋がったと分析する。

「地方の物件であっても、自分でも住みたいと思える立地や周辺環境にこだわりました。さらに、エリア最安値の家賃で運営してもきちんとキャッシュが回ることを絶対条件として当時は物件探しをしていました」

そのなかでも特にこだわったのは「情報収集」だという。

購入希望エリアの不動産業者全てをまわって、徹底的にヒアリングをしてから物件購入の判断をしていました。ヒアリングの重要性は前の職場で学んだことです。

商社マン時代、尊敬する先輩営業マンは毎日のように取引先を訪問していました。足繁くお客様のところに通っていると、断片的な情報が自ずと入ってきます。その情報単体では何の意味もないのですが、別の取引先からの情報と組み合わせると、価値がある情報に変化することがあるのです。

点と点が繋がって線になるというイメージでしょうか。つまり、情報量の最大化をはかることで、判断の精度をあげることができるのです」

不動産投資で信じるべきは、より多くの材料から導いた「自分の判断」であり、「何となく担当がいい人そうだったから」といった理由で投資判断をすることは危険だと大橋氏は指摘する。

そんな大橋氏にも、自身のサラリーマン大家時代をふり返ると、やはり失敗もあったという。

「中野区で実質利回り2.9%の区分駐車場を所有しています。4台駐車できる物件として売られていたものを580万円で購入しました。

土地の持分の評価が1500万円はあるので『これはいい買い物をした』と思っていたのですが、実際には2台ずつ縦列駐車する必要があるので、2台で契約する人がいなければ利回り半減です。しかも半地下なので、高さが1.55mに制限されていて、それも借り手を狭めています」

もともとはキャピタルゲイン狙いでの購入だったが、希望価格での購入者が現れなかったので、現在は共同担保として利用しながら、40年後にあるかもしれない建て壊しを待つ状況だという。管理費の高さも利回りを押し下げる要因となっている。

「自分の失敗談はリカバリー可能で、糧にもなっているのですが、最近の投資家さんからの相談は深刻なものが増えていると感じています」


駆け込みが急増! 大橋氏が分析する失敗パターンの特徴とは?

特に自己資金ゼロや、消費税還付、あるいは半年間満室家賃保証といったキーワードで、パッケージングされた提案に乗ってしまい後悔する方が多いです。

それ自体は悪いものではありませんが、言ってみれば賃貸経営の本質と異なる部分で『安心』を感じさせるものです。そこに目を奪われて判断を曇らせている人がいると感じます。

あくまで物件購入の判断は『家賃収入から返済や税金を払った後、資本を蓄積できるかどうか』を重視すべきであり、それが賃貸経営の本質です。そこが欠けていると事業として成り立ちません。それ以外の部分、目先の現金や、減価償却、『消費税還付で手元資金が増える』という理由だけで購入を決断するのは危険です」

事業の本質を捉えることが大切だと指摘する。実際に大橋氏のところへはどのような相談が寄せられているのだろうか。

「先日は、M県に満室時の表面利回り12%のRC物件を購入したという方から相談がありました。

利回りだけを見ると問題ないように思えますが、物件は3点ユニットの狭小ワンルームで競争力に欠けます。しかも立地は山の中といっていいような場所で周辺に単身者に喜ばれるような施設が何もありません。現在の入居率は5割、家賃は1万9000円とのことでした」

表面利回りだけを見て飛びつくことなく、その数字が何の積み重ねによって成り立っているか分析することが重要だと大橋氏。

「たとえば、1万9000円の家賃で埋まらないエリアだったら、仮に家賃を1万3000円に下げても問題が解決しない可能性が高いです。なぜならそもそもの賃貸需要がないエリアだからです。

地方の単身者の手取りが13万円だとして、そのうち3割を家賃に回せると考えると、少なくとも3万円以上は出せるわけですから、やはりそのあたりが健全な賃貸経営ができる家賃ラインと考えるべきです」

また、相談を受けている物件は、世帯分の駐車場がない。そのため特に地方では不人気物件となりやすい。相談者は購入以来、ひとつも空室が埋められていない。

「購入後半年間は満室家賃が保証される条件で引き渡しを受けていますが、このまま半年経過すると、入金額は半分となり一気に返済が厳しくなります。私からは、現地で業者ヒアリングを行い、改善の見込みがなければ損切りすべきだと提案しました」

大橋氏に相談をする人は、大企業に勤める高所得のエリートビジネスマンも少なくないという。そのような優秀な人がなぜ失敗してしまうのか。そこにはエリート故の罠があると大橋氏は分析する。

エリートだからこそ陥る不動産投資の罠とは?

「一種の不動産投資におけるサンクコスト(埋没費用)だと思っているのですが、時給の高い彼らが貴重な可処分時間や土日を使って、物件検索や調査に時間を当てたとします。

当然、良い物件は簡単に見つからず空振りで終わることも珍しくありません。そこで『調査に投じたリソースを回収せねば』という意識が働いてしまい判断を早まってしまうのです」

たとえ無駄に終わるような結果だとしても、そこはきっぱり諦めるのが賢明だという。

「2つと同じものが存在しないのが不動産です。それゆえ、感情的に『欲しい』と思える物件も出てきます。その時に彼らは情報整理能力が高いがゆえに、自分自身に『もっともらしい買っても良い理由付け』をしてしまうのです。

しかし大きな組織で働くサラリーマンは『自分だけでの意思決定に慣れていない』ことも珍しくなく、そこが弱点となります。また、ある種の過信が悪い方向に作用することもあります」

優秀さに裏打ちされた本人のプライドの高さが、判断ミスを認めたり、損切りの決断を妨げたりするケースも多いのだとか。

自身も大企業で働いていた大橋氏が、現在は自分の城を構えて活動しているのは、商社マン時代に感じた違和感がキッカケだという。

「商社マン時代、商業用船舶の売買仲介が自分の仕事でした。実は船もマーケット商品で『海』という単一のマーケットにおいて荷物の量と船の数で、価格が決定していきます。このあたりは不動産と非常によく似ているところです。

『荷物を運ぶ船が足りない』と分かると、色々なところが造船に着手しますが、完成までに年単位で時間がかかる点も不動産と似ています。

だから、供給過剰も起こるし、マーケットも常に上下します。しかし商社は売り子ですから、相場の高低と関係なく常に船を売り続けなければなりません。そこに自分は違和感を持ったので独立したという経緯があります」

現在の不動産市況には過熱感があり、高値づかみの投資家が生まれることを危惧している大橋氏。今後も個人投資家の啓蒙に取り組んでいくという。

大橋亮太プロフィール

株式会社ムーブウィル代表取締役。自身のサラリーマン大家としての経験を活かし総合商社を脱サラし、不動産コンサルタントとして独立。商社マン時代に身につけたビジネススキルを駆使してコンサルティングを行う。

相談者の利益を最大化するため両手取引を行わないなどのポリシーをもって活動中。

2010年サラリーマンをしながら不動産投資の勉強を開始

2011年群馬県前橋市に物件を購入、重量鉄骨2DK×9部屋、利回り約18%

2013年茨城県つくば市に物件を購入、軽量鉄骨3DK×8部屋、利回り約15%

2013年東京都中野区に区分駐車場を購入、利回り約18%

2014年富山県富山市に物件を購入、ワンルーム×18部屋、利回り約20%