加藤隆2月_aijiro-Fotolia

写真© aijiro-Fotolia

ある年の年始早々の1月4日、名古屋の消防署から電話がきました。

私が所有している名古屋駅傍のアパートの1室で、練炭自殺を図っている者がいる。一酸化炭素が充満し、換気扇等を通じて、他の部屋にも漏れる可能性があり危ないので、すぐに全部屋の鍵を開けて欲しいとのこと。

しかし、私は管理会社に管理を任せており、鍵は持ってはいません。

第一、私は東京にいたため、すぐに名古屋に駆けつけるわけにもいきません。消防署の方には、管理会社に電話して下さいと言ったのですが、看板に記載の緊急連絡先が固定電話になっているようで、誰も出ないとのこと。

練炭自殺したのは誰……空室のはずの部屋で起こった騒動

その後も、消防署と私で何度か連絡を試み、やっと通じました。どうやら年始明けで、午後から出社だったようです。すぐに駆けつけて頂きました。

現場は、救急・消防・警察が駆けつけ大騒ぎ。生憎、練炭自殺を図った方はお亡くなりになりました。不幸中の幸いで、残り8室中7室の方は外出中。在宅中の1室の方は無事でした。

ですが、よく考えてみればその部屋は空室のはず……練炭自殺したのは一体誰?

管理会社に聞いたところ、年末の最中に急きょ入居希望され、ばたばたのなか私への連絡も忘れたまま、入居させたとのこと。

年末に入居し、年始に練炭自殺。まるで、死に場所でも探していたかのようです。

通常は、退去の際1カ月以上前に告知するか、1カ月分の家賃を払います。急に入居したいというのは、異例なことなのです。家賃滞納・トラブル等で、前の入居先を追い出されたのかも知れません。


所有物件が心理的瑕疵物件に

自殺・他殺等があれば、賃貸・売買の際には心理的瑕疵物件として、重要事項として告知しなければなりません。結果、賃貸料・売却価格は大暴落します。私の場合も、当該部屋については約6万円だった月額家賃が、本件直後、約3万円と半額になってしまいました。

さらに、腐乱化・白骨化までいった場合には、異臭が残ったり、床が腐ったりしますので、リフォーム費用は多額になるものです。

そういった場合、判例では連帯保証人・相続人等に、損害賠償請求ができることとされています。損害額の算定は、例えばリフォーム費用、家賃下落分×3年間等といった算定です。

本件の練炭自殺では、入居期間が短かったことと発見が早かったことから、腐乱・白骨化・液状化といった事態にはならず、通常の清掃レベル(数万円程度)で済みました。

(別件の首吊り自殺の際は、家具・家電付だったこと、長期間入居だったこと、異臭も残っていたこと等もあって、50万円近くのリフォーム費用が発生しました)

落ち着いた頃に管理会社経由で、当人の母親に話してもらったのですが、父親不在で経済的にも余裕がないようで、結局損害賠償請求はできませんでした

では、管理会社に対して請求したかというと、私はしておりません。たしかに、管理会社が報告なく入居させてしまったことで起きてしまった事件ですが、入居が年末年始の忙しい時期だったことや、2棟のアパートの管理で普段お世話になっていることもあり、管理会社の過失とするのは酷だと感じたからです。

今回の騒動で学んだ管理会社との付き合い方

この件は、区分所有マンションではなく、一棟物アパートで起こった事例です。一棟物アパート・マンションでこういった事件が起きれば、全体に影響が及びますので大変です。

本件では幸い、他8室の入居者にこの事態を説明しましたが、特に退去等、問題は起こりませんでした。しかし、もし殺人事件が起き、犯人が捕まらないといった場合に下手をこけば、全空になる可能性もあり得ます。リスクが集中し易いので、ある程度リスク分散も意識した方がいいでしょう。

オーナーの立場からすれば、一刻も早く入居者の方を確保したいあまり急な入居申込でも嬉しいものでしょう。ですが入居理由も確認した上で、入居審査等は慎重にするべきです。

又、管理会社の緊急連絡先は、固定電話ではなく携帯電話等常時連絡が付くようにしておいてもらうべきです。

私の場合には、不自然死、首吊り自殺、練炭自殺がありましたが、他にも身寄りのない高齢の方が病院でお亡くなりになったこともあります。

日本は、不景気で少子高齢化でもあり、身寄りのない高齢者の孤独死といった問題も増えてくるでしょう。身寄りがない場合、遺体の引き取り、死亡届等役所の手続き、葬式、残置物処理等、事務処理も大変です。ある程度は、地方公共団体(市等)が処理してくれますが、管理会社・大家等の手間は増えることでしょう。