プロギャンブラーが語る勝負理論は、投資で勝つ方法に通じる―。
15年間、世界を6周しながらカジノを渡り歩き、ギャンブルだけで生計を立ててきたプロギャンブラーのぶきさん。帰国してからは、その愛嬌ある人柄と15年間かけて培ってきた勝負経験の豊富さから、投資セミナーをはじめ様々な講演会に引っ張りだこなのだとか。今回はそんなプロギャンブラーのぶきさんに、投資に通じる勝負哲学について話を聞いた。
プロはギャンブルしない!?
——最近では投資セミナーで講演をされることもあるとうかがいましたが、どのようなお話をされるのですか?
「セミナーでは、リスク管理の方法や、ブレないメンタルの作り方、勝負に持ち込むスタンスなどについてお話ししています。投資界の大御所さんたちとトークバトルに出演した際、プロのギャンブルと投資には共通点が多いとご指摘いただきいろいろなセミナーに呼んでいただいています」
——ギャンブルというと運まかせのイメージが強いのですが、どういったところが投資と共通しているのでしょうか?
「アマチュアのギャンブル、遊びのギャンブルだと、その場のノリや感情で大金をつぎ込んでしまうことがあるかもしれませんが、プロはそんなギャンブルはしません。投資同様、確率や統計を駆使して資産を増やしていこうとします。プレイヤー同士の心理戦などもありますけど、心理すら数値化して、ベストな選択を計算します」
——「確率や統計を駆使して資産をいかに増やしていくかというゲーム」ということですか。
「そうです。投資も一番大事なのは『好きか』ではなく『勝てるか』。僕の場合は、たまたまそれがギャンブルだったというだけです。投資家として成功したいのなら、自分が好きなものではなく、自分に合った、自分が勝てる投資をしっかり選べるようになりたいですね」
不動産投資は、日本人に合っている!?
——自分に合った投資を見つけるためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?
「自分がどれくらいメンタル的、資金的な負荷に耐えられるかの見極めが大切です。それはつまり、どれだけのリスクを受け負えるかということになります。僕の持論ですが、日本人、特に会社で働いている方や忙しい方は、株やFXより不動産投資が向いています」
——それはどうしてですか?
「まず、株やFXをやるなら世界の投資家たちを相手に戦わなくてはいけません。それに加えて24時間市場の動きを気にして、世界各国で起こるニュースにも敏感にならなくてはいけないですよね。レバレッジの高さや相場のアップダウンの激しさもあります。銘柄や通貨によるかもしれませんが、最悪、所持金がゼロになる可能性が高い投資とも言えます。
それに比べて不動産投資は不確定要素が少なく、自分のペースで運用できるところ、世界を相手にしなくてもいいところが、日本人向けの投資だと考えています」
勝ちにこだわるな、勝つ準備にこだわれ!
——のぶきさんは、どんなギャンブルをされているのですか?
「最初の数年はブラックジャック、そのあとはポーカーをやっていました。ブラックジャックのいいところは、ほぼすべて数学や統計学で勝負ができるところ。ポーカーはそこに心理戦が入る感じですね」
——統計学で勝負ができる、とのことですが具体的にはどんなふうに統計学を使うのですか?
「ケリー基準(Kelly criterion)という、数学者が編み出したベストな賭け金を算出する方法があるんです。
ブラックジャックとは、プレイヤーとディーラーでトランプの点数をいかに21に近づけるか(超えると負け)を競うゲームなのですが、例えばカードが1枚も配られていないとき、プレイヤーの勝率は49%とします。全部で52枚あるカードのうち26枚を使って、まだエース(1点にも11点にもなる便利なカード)が一度も出ていない状態だと、勝率は約51%になるんです。
その時、所持金の2%を賭ける。ここで多すぎても少なすぎてもベストプラクティスにはならないんです。そういう長期的な視点が大切ですね」
——なるほど。その場の感情に任せて賭けるのではなく、統計学的なルールにもとづいて勝負をするんですね。
「『扉を開ける前に勝負を決めろ』という僕の格言があります。100万円持って行く場合、負けても最悪89万円まで、勝った場合も最高130万円までと、カジノに入る前にすべての可能性を統計で数値化して出し切ります。そして株やFXと同じく、リスクやラック(運)といった要素を少なくして細かく勝ち続けること、資産をゼロにしないことが大切なんです」
——他に、勝負をする上で気をつけていることはありますか?
「僕は、ギャンブルの専門書以外にも、勝負哲学の本などを読むことが多いのですが、宮本武蔵が書いた『五輪書』の『水を手本としろ、水にならえ』と言う言葉が心に残っています。投資の世界でも同じですが、私たちを取り巻いている状況って常に変化しているものです。
だから、あるやり方で数回は勝てたからといって、次もそのやり方で勝てるとは限らない。常に批判的な姿勢で状況の変化をいち早く見分けるのが、勝ち続けるコツだと考えています」
ギャンブルでも投資でも勉強や反省は欠かせない!
——そもそも、のぶきさんは何故プロギャンブラーを目指したのですか?
「僕にとって仕事とは、人生の中で一番時間を使うもの。だからその時間がハッピーなら、人生が楽しくなるんじゃないかと考えたんです。はじめは、起業する気でいて25歳までに1000万円を貯めたのですが、仕事が軌道に乗って右肩上がりになるには3〜5年かかると聞きまして。
だったらその間夢中になれるような『休日でも休みたくない仕事』を探そう! と思い、やってみたい仕事を100個リスト化し、それが大晦日も休みたくない仕事なのかチェックしてみることにしました」
——「大晦日も休みたくない仕事」ですか。果たして、その結果は……?
「残念ながら、どれもたまには休みたくなる仕事でしたね〜。そんなとき、旅行に行ったラスベガスの書店で見つけたのが『Playing Blackjack as a Business(著:Lawrence Revere)』という本。
最初は、えっ!? ビジネスとしてのギャンブル? これが自分のやりたいことなの? って思ったのですが、大晦日にカジノに行く様子を想像したら全然いけるじゃん! と思いまして(笑)」
——もともとギャンブルの経験はあったのですか?
「経験ってほどでもないのですが、大学の卒業旅行で友達とラスベガスに行ったことがあります。
そのとき僕は全部賭けてやろうと80万円を持っていきまして、カジノでバンバンかけていたら、マネージャーみたいな人が来て『また来てください』と名刺をくれたんです。その名刺を見せたらホテルや飲食代がタダになるというVIP待遇を受けまして……。あの人がいなかったらもっとまっとうに働いていたはずです(笑)」
——プロになるまではやはり大変でしたか?
「ギャンブルの世界では、プロ=カジノから出禁にされることなんですが、そうなるまでの2年間は1日13時間くらいギャンブルの専門書や雜誌を読んで研究し、テクニックを身体で覚えていました。誰よりも真剣にギャンブルへ取り組んでいるはずなのに、勝てる確証が見えてこなくて……。タールの海を泳いでいるような感覚でしたよ。
プロになってからも勝負が終わったあとは、喫茶店で反省会をして、自分の予想と現状がどれだけ違うか確認したり、次の勝負の戦略を立てたりしていました。ただ上司から言われたことをすべきサラリーマンだったら、勝っても敗因を模索することはしなかったと思います。厳しい世界だからこそしっかり反省ができたんですね」
人生とは投資だ!
——のぶきさんがギャンブル(投資)で得たものとは、何でしょうか?
「勝負の勝ち方や、ブレないメンタル、努力の注ぎ込み方などたくさんあります。あと、大きな意味で自分の人生を賭けて世界を回った経験を投資と呼ぶのなら、たくさんの友人や、その国ならではの体験、世界的な視野を持てたことがリターンと言えるかもしれません」
——ズバリ、のぶきさんにとって投資とはなにか教えて下さい。
「人生はギャンブルです。つまり、投資とは人生です。自分の時間やお金、労力を賭けてそこから何かを得ることだと考えています。世の中って絶対的な安定はないと思っています。
なので、なにが起ころうが自分がすぐに動けるように、勉強は欠かさず常に準備しておくことでやってきたチャンスを掴みとるんです」

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