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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。
2016年4月14日に発生した熊本地震から約1年。一部の地域では、まだまだ大変な状況が続いているようです。被災された皆様におかれましては、心からお見舞い申し上げます。
そこで、お金を残す不動産投資コラム。今回は、熊本地震発生時を例に挙げ、地震や災害にあった時の税金について解説します。
被災した地域の申告期限は延長される
地震などに被災した地域では、生活自体もままならないので、ましてや税金の申告なんてできる状態ではありませんよね。
そこで、被災状況を把握した上で、国税通則法11条という、申告・納付等の期限が延長される法律を適用することがあります。
熊本地震を例に挙げると、地震が発生した8日後の平成28年4月22日に、熊本県が納税地となっている人や会社の申告・納付期限が、平成28年11月30日まで延長されました。
賃貸物件が地震で壊れた時の税金は?
賃貸用として所有、運営している物件が、地震などの災害で壊れてしまった時は、ケ-スによって扱いが異なってきます。
○個人が不動産賃貸業を事業的規模で運営しているケ-ス
物件を取り壊す等して、損失が発生した場合の損失額は、発生した年の不動産所得の経費とすることができます。
また、損失額が多額で赤字が発生している場合は、他の所得と損益通算(合算)することができます。
さらに、青色申告をしている人に限っては、損益通算してもまだ赤字が出ている場合は、その赤字を翌年以降3年まで繰り越しすることができます。
○個人が不動産賃貸業を事業的規模に満たない規模で運営しているケ-ス
次の2つの中から有利な方を選択できます。
(1)不動産所得の経費とするケ-ス
事業的規模のケ-スと同様、損失額を、発生した年の不動産所得の経費とできますが、他の所得と損益通算はできません。
(2)雑損控除を適用するケ-ス
雑損控除は、社会保険料控除や基礎控除等と同じ所得控除の一つで、災害、盗難、横領によって損害を受けた時に適用できるものです。
通常、事業用固定資産である賃貸物件は雑損控除の対象となりませんが、事業的規模に至らない場合は、雑損控除の適用ができます。
適用できる金額は次の2つのうちいずれか多い金額になります。
・(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
・(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
計算式の中の「差引損失額」は次のように計算します。
差引損失額=損害金額+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額
損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以降3年まで繰越すことができます。
また、自分だけでなく、生計を一にする(日常の生活の資を共にする)家族の損失も入れることができます。
地震保険などでもらった保険金に税金は掛かるのか?
では、災害で損失が発生した時にもらった保険金には税金は掛かるのでしょうか?
まず法人税法では、受け取った金額はすべて収入に、支払った金額は経費になりますので、法人で保険金を受け取ったなら、その金額は全額収入に計上されます。
一方、所得税法では、火災保険や地震保険で受け取った保険金は非課税になっています。
ただし、災害にあった物件を修繕して、修繕費の一部を保険金で賄っている場合は、その保険金の金額分は経費に入れることができません。
例えば、修繕に500万円掛かり、保険金で300万円受け取っているケ-スだと、経費にできる修繕費は200万円となります。
修繕費500万円-保険金300万円=経費にできる修繕費200万円
税金が軽減される災害減免法とは?
賃貸物件が被災して損失が発生したケ-スの税金は理解できたと思いますので、次に自宅や家財が被害にあった時の税金を解説しましょう。
自宅や家財が被害にあって損失が発生している場合は、次の2つの中から選択できます。
(1)雑損控除を適用するケ-ス
(2)災害減免法を適用するケ-ス
このうち(1)については先ほど解説しましたので、(2)の災害減免法について解説します。
災害減免法とは、次の条件に当てはまれば、所得税が軽減されるか免除される法律です。
・災害によって受けた住宅や家財の損害金額が、その時価の2分の1以上(保険金などにより補てんされる金額は除きます)
・災害にあった年の所得金額の合計額が1000万円以下
○災害減免法により軽減又は免除される所得税の額
所得金額の合計額 |
軽減又は免除される所得税の額 |
500万円以下 |
所得税の額の全額 |
500万円超750万円以下 |
所得税の額の2分の1 |
750万円超1000万円以下 |
所得税の額の4分の1 |
災害義援金を寄附した際の税金
最後に、被災した地域に義援金として寄附した人の税金を解説しておきましょう。
まず、個人が自治体に寄附をしたのであれば、特定寄附金となって、所得税や住民税の軽減があります。
また、自治体ではなくても、その寄附した団体が義援金を最終的に被災地に拠出するものであれば、特定寄附金となります。
特定寄附金に該当すれば、いわゆるふるさと納税をしたということになり、所得税、住民税が軽減されるわけです。
また法人が自治体や日本赤十字社に義援金を払った場合は、「国等に対する寄附金」となり、その全額が損金算入されますが、相手先によっては、損金算入できる金額に限度がありますので、確認が必要です。
このように被災した人や、被災した人を金銭的に応援した人には、様々な税金の措置がありますので、一通り覚えておくといいでしょう。
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