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駐車場や土地などを持つ投資家にとって、遊休資産の有効活用は気になるトピックのひとつ。近年、遊休資産をシェアするサービスが続々と登場し、多くのユーザーを獲得していることからも関心の高さがうかがえる。

最近では、空きスペースを駐車場として貸し出したい人と駐車場を一時的に借りたい人とをマッチングし、遊休資産の有効活用を促進する「駐車場シェアリングサービス(駐車場予約サービス)」の動きが活発化している。

というのも、この駐車場シェアリングサービスへ参入する企業が相次いでいるのだ。古くは2012年に軒先株式会社(以下、社名のみ記載)が「軒先パーキング」をスタート。2014年にはakippaが、大阪で「akippa(あきっぱ)」を開始。このあたりの2社が先駆け的な存在だろう。

翌年2015年には時間貸駐車場事業を展開する(株)シェアリングサービスが「トメレタ」を、2016年には同事業大手のパーク24と三井不動産リアルティが、それぞれ「B-Times」と「toppi!(トッピ!)」を開始。

さらに今年2017年2月には楽天が「ラクパ」を開始したほか、大型連休を目処にリクルート住まいカンパニーは「SUUMOドライブ」の提供に乗り出すと発表している。

4月には「ラクパ」と「トメレタ」が一部機能においてサービス連携を開始。「ラクパ」ユーザー(借り主)は同サイト経由で、「トメレタ」に登録された一部の駐車場を一括検索できる。つまり「トメレタ」で登録されている駐車場は、より多くのユーザーに利用される機会が広がるため、投資家にとっても利便性が大きいといえるだろう。

このように、楽天やリクルートなど、グループサービスを数多く所有し、それに伴う膨大な会員情報を持つ大企業が続々と、駐車場シェアリングサービスに参入していることから、同市場のさらなる拡大・普及が見込まれる。

増え続ける自動車、進まない駐車場整備

それにしても、なぜ駐車場シェアリングサービス市場が、ここまで盛り上がっているのか。駐車場が不足している状況を漠然とイメージする方は多いだろうが、改めて数値データから考察してみよう。

警視庁の発表によると、都内全域における四輪車の瞬間路上駐車(違法)台数は、平成28年に約5万9000台となった。平成22年以降、ほぼ横ばいで推移してきたが、平成27年(約5万8000台)と比較すると平成28年は増加を示している。23区だけの数値を見ても同様の傾向がある。

路上駐車は当然ながら交通渋滞を引き起こす原因のひとつとなる。また路上駐車された自動車への衝突事故やそれに起因する交通事故も後を絶たず、路上駐車は道路交通における障害となっている。ただ、駐車スペースがないから、仕方なく路上に停めるというドライバーは少なくないはずだ。

その根拠となるデータは、国土交通省が発表した「自動車保有台数と駐車場台数(*1)の推移」と「年度別駐車場整備状況の推移」。これらを見ると、平成26年時点で、自動車の保有台数(全国)が約7708万台であるのに対し、駐車場は487万台と明らかに足りていないことがわかる。

さらに「都道府県別駐車場整備状況」を見ると、平成27年3月末時点において、自動車(保有台数/全国)1万台当たりの駐車場台数(台)は633台となっており、依然として駐車場は不足している状態だ。

国内の自動車保有台数は増え続けている。国土交通省が毎月上旬を目処に更新するデータによると、平成29年1月末時点における自動車保有車両数は約8166万台となり、前月に比べ5万8199台(0.07%)増加。前年同月と比べると約34万台(0.42%)増加し、65カ月連続のプラスとなっている。

うち、登録自動車(普通自動車、大型自動車など)は約4741万台(構成比58.06%)で、前年同月比10万158台(0.21%)増。軽自動車は約3257万台(構成比39.89%)で、前年同月比22万7139台(0.70%)増となった。

このように自動車が増え続ける一方で、駐車場整備は遅々として進んでいない。これらのデータからも、駐車場シェアリングサービスが利用者ニーズを満たし、今後市場規模が拡大していくことは想像に難くない。

都市圏だけではない、地方都市でも駐車場不足は問題に

駐車場不足の実情が把握できたところで、駐車場シェアリングサービスの提供元(運営会社)と、駐車場オーナーの生の声も聞いてみたい。本稿では楽天が提供する「ラクパ」を取り上げる。取材に応じてくれたのは新サービス開発カンパニー シェアリングエコノミー事業部の新井秀樹シニアマネージャーと近藤寛之さん。

昨今シェアリングエコノミーが新たな経済モデルとなっていることから、楽天も一般の人が所有する遊休資産を活用する新サービスを数年前から検討していたとのこと。いくつか出てきた事業候補のうち、現時点では法律的な規制がほとんどない、空き駐車スペースのシェアリングサービスを提供することが決まったのだという。

東京や大阪などの大都市における瞬間路上駐車(違法)台数も社会課題のひとつであり、事業化へ踏み切る材料となっているが、問題は都市圏だけで起きているわけではない、と新井さん。

「弊社が親会社を務めるプロ野球東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地・宮城球場『Koboパーク宮城』でも、駐車場不足が課題になっています。Koboパークの専用駐車場は650台程度の収容で、試合日は前売りの駐車券が即完売になります。休日の試合日には2600台必要になるという調査結果もあるようです。仙台駅から球場までの間に多数あるコインパーキングもすぐに埋まってしまうので、やむをえず電車で行く人も多いのが実情です」(新井さん)

スポーツの大会やイベント、コンサートなどが開催される際、駐車場が足りないという問題は、都市の規模に関わらず発生する。さらに、外国人観光客も増えていることから、駐車場不足は喫緊の課題だといえるだろう。

自動車を停めるスペースさえあれば、誰でも駐車場オーナーになれる

一都三県を中心に約1000車室の駐車場数からスタートしたラクパ。サービス開始後ユーザー(借り主)登録数は順調に増加している。グループサービスとの連携やグループサービスからの送客(楽天会員は全国8300万人)により、今後の伸びも期待される。

一方で、自宅の敷地の一部を見知らぬ人に貸し出すことに抵抗があったり、1日の数時間だけ・空いている曜日だけ貸し出すといったスタイルに馴染みがなかったりと、駐車場シェアリングにハードルの高さを感じる人もいる。

ただ、部屋や空きスペースを宿泊施設としてシェアリングするサービス「Airbnb」のように、利用者を確実に伸ばしている事例もある。Airbnbが2016年11月に発表したデータによると、日本のAirbnb物件に宿泊した訪日外国人総数は2015年には約130万人だったのに対し、2016年には300万人を超え、前年からの伸び率は230%となった。このように、今後サービスの認知度が上がり、浸透していくにつれ、シェアリングに対する抵抗感は薄れていくと思われる。

ラクパでは「自動車を停められるスペース」さえ持っていれば、誰でも駐車場として貸し出すことができる。とくに条件や規定はなく、舗装の有無も問わない。駐車場の写真と住所、駐車可能車両サイズ情報をラクパ上に登録するだけで、その日から駐車場オーナーになれるのである。

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機械を設置する必要もなく、初期費用や管理費なども不要。駐車料金の徴収はラクパが代行するため、オーナーがユーザーとやりとりすることもない。予約(1日単位、時間の設定も自由)が入ったら駐車場を空けておくだけ、と管理も手間がかからない。それでいてオーナーの取り分は駐車料金から手数料35%を引いた65%と、比較的高いのも魅力のひとつだ。

「駐車料金を設定するのは貸し主です。平均貸出額は1000円前後(1日単位)ですが、エリアごとに周囲の相場料金に応じて異なります。一例として、空港近くの場所を貸し出して、月に18000円ほどの売上になっている方もいます。周囲のコインパーキングの最大料金より、低い料金に設定していると予約が入りやすい傾向があります」(近藤さん)

周囲の駐車場料金を調査した上で、適正な値づけをしたいところだ。

駐車場オーナーが実践する活用法とは

ラクパに登録している駐車場オーナーとして話を聞かせてくれたのは、東京都内を中心に5棟50部屋を保有する投資家であり、楽待コラムニスト・プリンス破天荒としても活躍する溝口晴康さんだ。

いくつか登録した駐車場のうち、1つは神奈川県川崎市に所有する物件の月極駐車場(月額1.5万円、駅徒歩約10分)だ。この駐車場がなかなか埋まらない時期があったことから、今年4月ラクパに登録し、貸し出すようになった。

写真提供:溝口さん

「今のところ、月極で貸し出した場合の3〜4割(4500円~6000円)ほどを回収できています。空きスペースのままで何も生み出さないよりは、多少なりとも収益になるほうがいいと考えています」(溝口さん)

新築物件を建設する目的で購入した土地(2017年4月末時点では更地)も、「着工までの期間限定」で実験的に貸し出している。自動車の所有者としては土や砂利の駐車場よりも、アスファルトやコンクリートで舗装された駐車場のほうが印象が良いだろうが、それでも立地が良いため借り手はつくという。こちらも4000円ほどの収益になっている。

自身が投資家で空き駐車場や空きスペースがあるなら、溝口さんのように「月極駐車場が決まるまで」「空き地になっている間だけ」というふうに、期間を決めてラクパなどの駐車場シェアリングサービスにスペースを提供するのが賢い選択かもしれない。

駐車場シェアリングサービスを始める前に準備しておきたい3つのこと

土地活用や税金などに知見のあるFP-MYS代表取締役社長兼CEOの工藤崇さんは、個人投資家が駐車場シェアリングサービスに手を出す際、気をつけたいポイントを大きく3つ挙げる。

○免責事項を作成し、弁護士に確認してもらう

「『駐車場で車上荒らしや事故など、何かあったとしても、責任はとれません』との旨を、駐車場に免責事項(ラクパにオーナー登録している場合は、ラクパから駐車場利用者に対し、免責事項が提示されている)を貼るなどして、利用者(借り主)に周知しておくのは重要でしょう。免責の告知が不足していると、万一何かあったときに貸し主が困る可能性もあります。

さらに免責事項を自分で作るだけではなく、法律上認められる内容になっているか、弁護士に確認してもらってください。依頼する弁護士によって費用は異なりますが、2〜5万円程度で済みます。意味のある免責事項を作るのに、リーガルチェックは必須です」(工藤さん)

○(できる方は)ネット対策(SEO、外国語対応)に注力する

「看板やチラシなどを出したり、観光案内所に宣伝の協力をお願いしたりとアナログな告知方法もありますが、今の時代は何よりネット対策が欠かせません。駐車場シェアリングサービスに登録しただけでは、サービス内・サービス利用者にしか検索されません。

『大手町 一丁目 駐車場』などとWeb検索され、かつ上位に表示されるよう、自分でもサイトを作るなど駐車場の存在感をネット上で高めることが大事です。ネット上で上位にこなくては、存在しないも同然です。さらに、日本語だけではなく英語や中国語、韓国語にも対応しておくと可能性は広がるでしょう」(工藤さん)

○(資金的に余裕があるなら)防犯カメラを設置する

「土地の所有者自身が関与していなくても、敷地内で起きたトラブルであれば、『映像を提供してほしい』と頼まれることがあります。防犯カメラを設置しておらず、映像がなかったとしても、責められることはないでしょうが、防犯カメラがあるほうが借り主側は安心感があり、『きちんとしている駐車場だから』とリピートされたり、口コミで伝わったりする可能性も期待できます」(工藤さん)

駐車場不足という社会問題はすぐに解決できるものではない。ゆえに駐車場シェアリングサービスは現在追い風状態にあり、遊休資産を持っていれば駐車場オーナーとして登録するのに大きなリスクはないと考えられる。専門家が教えてくれた注意点やアドバイスを踏まえ、一度試してみてはいかがだろうか。社会問題への貢献と収益面でのメリットを感じられるのではないだろうか。

楽待新聞編集部 

(取材協力)工藤崇さん

FP-MYS代表取締役社長兼CEO。ファイナンシャルプランニング(FP)を通じ、Fintech領域のリテラシーを向上させたい個人や、FP領域を活用してFintechビジネスを検討する法人のアドバイザーやプロダクト支援に携わる。Fintechベンチャー集積拠点FINOLAB(フィノラボ)入居。執筆実績多数。http://fp-mys.com/

(*1)駐車場台数は都市計画・附置義務駐車場・路上駐車場・届け出駐車場の合計値。