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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、知っておくと得する税金の知識について、3つほどご紹介します。

セルフメディケーション税制

所得税には医療費控除という控除がありますが、健康な人はあまり使う機会がない控除ですよね。でも、このセルフメディケーション税制を使えば、特定の医薬品を購入した際に、所得から控除ができるようになりました

セルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること。医療費が国の財政を圧迫していることもあって、この制度が創設されました。

具体的には、定期健康診断などを受けている人が、特定の医薬品の購入額が年間1万2000円を超えた際に、1万2000円を超えた部分の金額(上限金額:8万8000円)について所得控除を受けることができます

仮に所得税と住民税を合わせた税率30%の人が、生計を一にする家族の分も含めて特定の医薬品を5万円購入したとすると、1万1400円の節税ができることになります。

購入額5万円-1万2000円=3万8000円×30%=節税額1万1400円

ただし、医療費控除との併用はできません。この税制は平成29年1月1日から、平成33年12月31日の間で購入した金額について適用できます。

医療費控除が10万円ない場合でも諦めない!

では次に、医療費が掛かったけど、年間10万円に満たないケースでの、知って得する知識を解説しましょう。

医療費控除と聞くと「年間10万円を超えないと適用できない」と諦めている人が多いようですが、医療費控除にはもう一つの基準があるんです。

それはその年の総所得金額等が、200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額」という基準です。

例えば、個人で物件を購入して諸経費が多く掛かった結果、その年の総所得金額が100万円になっていて、その年に掛かった医療費が8万円だったとしましょう。 

総所得金額100万円の5%は5万円です。そうすると、掛かった医療費8万円から5万円を差し引いた3万円について、医療費控除を適用することができます。

医療費8万円-(総所得金額100万円×5%)=3万円

また、自分の所得が高くても、共働きしている配偶者の所得が低ければ、そちらで医療費を払って適用することも可能です。医療費控除は、セルフメディケーション税制と同様、生計を一にする家族の医療費であれば、合算して適用できるので、5%基準は覚えておきたいですね。

サラリーマンでも支出を経費にできる? 「特定支出控除」

続いて、サラリーマンでも支出を経費にできるケースがある「特定支出控除」について解説します。もともと適用できる人がほとんどない制度でしたが、平成24年度の改正で、対象範囲が広げられています。

特定支出控除とは、業務にかかる支払いが多い場合に控除できる制度で、次のような支出が特定支出となります。

1.通勤にかかる費用

2.引越費用

3.単身赴任者の帰宅にかかる費用

4.研修にかかる費用

5.資格を得るためにかかる費用

※改正前は適用できなかった弁護士、医師、公認会計士、税理士等、業務に必要な資格を得るための費用も適用可能になっています。

6.業務に関する図書の購入費用

※改正で加えられた項目で、業務に必要な本、雑誌、新聞等が適用可能になっています。

7.業務に関する衣類の購入費用

※改正で加えられた項目で、業務に必要な制服、事務服の他、スーツ代も適用可能になっています。

8.業務に関する交際費用

※改正で加えられた項目で、業務に必要な接待代、取引先へのお歳暮代等も含まれるようになっています。

ただし、会社が負担してくれる分については適用できないので、1~4そして8は該当する人は少数でしょう。

また、6~8までは、合計65万円までで、65万円を超えると適用できません。

したがって、5の「資格を得るためにかかる費用」を支払った人なら、適用できる可能性が高いでしょう。

では、どれぐらい支出すると、特定支出控除が適用できるか見てみましょう。

特定支出控除は、特定支出に該当する支出が、下記表で計算した給与所得控除額の半分を超えると適用できます。ちなみに改正前は、給与所得控除額を超えなければ適用できませんでした。

○給与所得控除額の計算方法

給与等の収入金額

給与所得控除額

180万円以下

収入金額×40%

65万円に満たない場合には65万円

180万円超 360万円以下

収入金額×30%+18万円

360万円超 660万円以下

収入金額×20%+54万円

660万円円超 1000万円以下

収入金額×10%+120万円

1000万円超

220万円(上限)

では、具体的に計算してみましょう。

収入800万円の人が、年間120万円の特定支出を支払っているケースでは、20万円が特定支出控除として、確定申告で控除できます。

特定支出額120万円-{給与所得控除額(収入800万円×10%+120万円)×1/2}=特定支出控除額20万円

ただし注意点として、特定支出控除額を受けるためには、領収書に加えて、会社から業務上必要と承認された書類が必要になります。

僕たちのような税理士等の資格を取ろうとしている人にとっては、専門学校の費用もかなり多額になりますので、適用できるケースが多そうですね。

以上、知っておくと得する税金について、3つ解説しました。適用できる人は確定申告の際に、忘れないようにして下さいね。