VR(バーチャルリアリティ)技術による内見サービス

最後に訪ねたのは、株式会社日本財託と東急リバブル株式会社。どちらもVR技術による内見を実施されているとのことでお話を伺った。

株式会社日本財託の法人事業本部法人営業部法人ソリューション1課長の橋口哲平氏と広報室・横尾幸則氏によれば、同社の「VRによる内見」は最近の流行に乗ったものではないということだった。同社では「企業の転勤に伴う賃貸物件の紹介」を行っており、海外も含めた遠隔地からの引越で内見ができない・時間が取れない顧客のために5年ほど前から「内見代行サービス」を提供していた。

これは同社のスタッフが物件を訪問し、顧客にかわって物件内外の動画を撮影して提供するというサービスであり、YouTubeに動画をアップロードし、顧客がそれを見るというものだった。このサービスの強化策として、同社は「VR技術による内見」を始めたのだ。

同社におけるVR技術による内見は、最近のゲーム機などで提供されているような特別な機器は必要としない。通常のスマートフォンさえあれば、同社から送られるURLにアクセスすることで画像が表示され、その画面を顔の正面に持って方向を変えると自在に部屋の内部を見渡すことができる。もちろんスマートフォンを取り付けられる市販のゴーグル型のVR機器(数千円程度)を使うこともできる。

VR技術による内見の画面

実際に体験させていただいたところ、まるで本当に部屋の中で周囲を見回しているかのような感覚を味わうことができた。特に同社は顧客の「VR技術による内見」への信頼を高めるために画像の鮮明さにはこだわっており、特別な画像処理がされたVR画像は隅々までクッキリと見ることができた。まさに「実際の内見と比べても遜色ないクオリティーを基準にしています」という同社の横尾氏の言葉通りであった。下記のリンクにアクセスすることで、サンプル画像を見ることができる。

https://goo.gl/uGxrov

画面内の操作方法も直感的でわかりやすく、物件内の部屋移動やベランダへ出ることも容易。特にベランダからの見晴らしは迫力があり、その場にいるかのような感覚を味わえた。

VR内見で成約率が6割に上昇

同社がこの「VR技術による内見サービス」を始めたのは2017年の1月からで、利用した顧客の物件成約率がおよそ6割を超えるなど高評価を得ている(なお、VR技術を含む「内見代行サービス」を未使用の顧客の物件成約率は4割を切る)。橋口氏の指摘する「実際に内見した場合はせいぜい一物件あたり5〜10分程度滞在するのが一般的だが、このサービスを使えば制限時間はなく、自由に見て回ることができる」という点も好評の要因と思われる。

また事前にこのサービスを使うことで内見する物件の数を絞ることができ、スピーディーに物件を決められた……という感想も多く、ある物件を内覧に行った先で「次の物件はこのような物件ですが、どうしますか?」というように、現場での物件比較にも利用されているとのこと。

橋口氏によれば「お客様に喜んでいただき楽しく部屋を探せて、コミュニケーションにも役立っている」とのことだった。不動産物件のオーナーとしても、従来は時間の制限などで検討候補に入らなかった物件が、VRによる内見を導入することによって、より多くの入居者に見てもらえるという効果が期待できるだろう。

「店頭」での接客が大きく変わる可能性も

「VR技術による内見」については、東急リバブル株式会社 賃貸営業第二部第一エリア エリアマネージャーの佐藤由美氏と三軒茶屋センターの佐久間千浩氏にも話を伺った。同社では接客カウンターに「VR技術による内見用のシステム」を備えている。専用のゴーグルとパソコンを使うことで希望の物件を内見するのだが、同社で導入したシステムの特徴は顧客が見ている部屋の画面を接客中の同社の社員がパソコンでリアルタイムに見ることができる点。

従って、現場で内見しているのと同様に、画面を見ている顧客が質問をしたり、視点を止めている場所について、適宜説明を行うことができるのだ。

東急リバブルで導入したVR内見システム

佐藤氏によれば、顧客により気にするところはさまざま(例:キッチンの冷蔵庫置き場の大きさ、天井の照明器具の有無、フローリングや壁紙などの色合いなど)で、これまでのホームページに掲載されている写真ではその全てには対応できていなかったと言う。それがこの「VR技術を使った内見」では、自由に顧客が見たいところを見ることができ、実際に物件を内見したときに「写真とはイメージが違った」と言われるトラブルが減ったとのことだ(なお、同社は本サービスを使った場合でも、必ず契約前に内見は行うようにしている)。

さまざまなメリットをもたらす「VR技術による内見」

同社で本サービスが始まったのは2017年3月10日であり、導入店舗はまだ三軒茶屋店、青葉台店、横浜店の3店に限られているが、これから順次広げて行く予定とのこと。そしてまだ導入してから間もない期間でも、導入効果は出ている。店頭で何件か候補が出た際に、実際にすべて内見すれば数時間かかるところを、VR技術による内見で候補を絞ることができ、3月のタイトなスケジュールの中で良い物件を見つけられた……という顧客の声があったという。

佐藤氏によれば、今までは物件の情報が写真と間取り図しかなく、物件の魅力を十分に伝えることができずに、最初から内見の候補から外れてしまう物件も多かったとのこと。だが「VR技術による内見」を使うことで、実際にその物件をその場で見てもらうことができ、「大通りに面している」「北向きである」などの不利な条件を、その物件がどのように克服しているかを目の当たりにできるようになったのは非常に営業面で可能性を感じる、ということだった。

ここまで見てきたように、不動産分野においてもさまざまなIT技術が活用され始めている。有効に使えば「物件オーナー」、「管理会社」、「入居者」のいずれにとってもメリットは大きいだろう。特にVR技術による内見は非常に大きなインパクトがあった。ぜひ、不動産オーナーにも体験していただきたい。

楽待新聞編集部

(取材協力)

Qrio株式会社
経営本部 増田裕理氏
http://qrio.me/smartlock/

不動産投資家
脇太氏
http://w-fudosan.com/

株式会社レックアイ
執行役員
住産業IT事業本部事業開発部長 兼 KKS事業部長
青柳淳氏
http://www.reci.co.jp/

株式会社日本財託
広報室 横尾幸則氏
法人事業本部 法人営業部 法人ソリューション1課
課長 橋口哲平氏
http://www.nihonzaitaku.co.jp/

東急リバブル株式会社
賃貸営業第二部 第一エリア
エリアマネージャー 佐藤由美氏
三軒茶屋センター 佐久間千浩氏
https://www.livable.co.jp/branch/chintai/RI/