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このコラムでは、投資家にぜひチェックしていただきたいオススメの書籍を取り上げ、5分で概要がつかめるようにご紹介したいと思います。
第8回目は、北村庄吾氏による『制度を知って賢く生きる 人生を左右するお金のカベ』(日本経済新聞出版社)。
税金や社会保険の変化についていけない人は多い
本書の著者・北村庄吾氏は、社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー。多くのクライアントの相談にのってきた結果、痛感したことがあるそうです。それは、税金や社会保険の仕組みの変化についていけない人が多いこと。
損と得との分岐点は、さまざまな控除など制度の中身を知っていて、それをうまく活用すること。しかし、ほとんどの方がそのことを理解していないというのです。「確かにそうだな」と納得できる部分は、多少なりともある気がします。
そう、これは決して人ごとではないのです。だからこそ、制度の変化を知り、そのなかで賢く生きていく知恵を知り、行動することが重要だということ。
つまり本書ではそのような考え方に基づき、お金のカベを乗り越えるためのさまざまな方法を伝授しているわけです。
「本書で最も力を入れたのは、活用です。知ったうえで活用する。それが、私たちが、お金のカベを乗り越える上で最も重要なことです」(「まえがき」より)
税金、社会保険、金融商品など、あらゆる角度から制度や方法を解説する本書。今回はCHAPTER 5「今話題の節税方法、金融商品を賢く使ってお金を増やそう!」に注目。「NISAを使ったお金の増やし方」に焦点を当ててみたいと思います。
投資を促す国の政策NISA(ニーサ)
メガバンクのスーパー定期の金利は年0.01%しかつかないため、銀行の定期預金にお金を預けっぱなしだと、物価上昇や社会保障費の負担増の分、資産が目減りしてしまうことになります。
しかし、世の中にお金が回らないと景気がよくなりませんから、国もさまざまな策を講じているわけです。たとえば貯蓄から投資へ促す政策のひとつとして、2014年からスタートしたのがNISA(少額投資非課税制度)。
通常、投資で得た利益には約20.315%の税金がかかります。しかし、金融機関にある「NISA口座」を別途開設すると、1年間120万円までの売却益、配当金などの利益にかかる税金が非課税になります。(194ページより)
たとえば、1万円で投資信託を購入した人が、毎年300円の普通分配金を受け取り、5年後に1万2000円で売却したとしましょう。
通常であれば、売却益と分配益を合わせた3500円に20.315%の税金がかかっていたので、手取りは2789円しかもらえないことになります。しかしNISA口座で取引をすれば、3500円全額がもらえるという仕組み。
非課税率の取り扱いは年間120万円(買付代金の合計額)を上限に、投資した年から最大5年間受け取れるそうです。なお、NISAにはいくつかのルールがあるのでチェックが必要です。
NISAで押さえておきたい5つのルール
1.対象年齢は20歳以上
まず、20歳以上の男女で日本国内に住んでいる人が対象。また、口座は1つしか持つことができません。
金融機関を変更したいと思っても、1年単位でしか行えない。複数の金融機関に申し込んだとしても、税務署がきちんとチェックしているため、場合によっては手続きをやりなおさなければならなくなることも。
2.取引できる金融商品は限られる
取引できるのは、日本株と外国株、株式投資信託、REIT(リート、不動産投資信託)、ETF(上場投資信託)といった金融商品のみ。
国債・社債、外国債券、FX(外国為替証拠金取引)、外貨預金、公社債投資信託は取引できないといったルールがあります。
また、仮に1年間で非課税枠の120万円のうち、100万円投資して20万円余ったとしても、未使用分を翌年に繰り越すことは不可能。売却した非課税枠は再利用できないといった決まりがあります。
3.銀行で分配金を受け取ると税金がかかる!?
証券会社や銀行、ゆうちょ銀行などで口座は開設できるものの、上場株式の配当金などを非課税とするには、証券会社で口座を開き、証券会社で受け取る方式(株式数比例分配方式)を選択する必要があります。
株式投資信託の分配金は共通して非課税ですが、仮に上場株式の配当金、ETFの分配金をゆうちょ銀行や郵便局で「配当金領収証」を持ち込んで受け取った場合や、銀行口座で受け取る方式を選ぶと、20.315%の税率で課税されてしまいます。
4.誰かの口座で保有している資産は移すことができない
NISA口座は、新たに購入した上場株式や投資信託などが対象。そのため現在ほかの口座で保有している金融商品を移管することは不可能。
5.損失を出しても損益通算・繰越控除は不可
NISA口座で生じた売買損失は、課税される口座(特定口座、一般口座など)の収益との損益通算はできません。また、損失の繰越控除も不可。さらに特定口座や一般口座では、確定申告をすることで株式等譲渡損失の3年間の繰越控除ができますが、NISAはこれができません。
投資には、「リスクが怖い」「まとまったお金がない」「知識がない」などの心のカベがつきもの。そこで投資の初心者には、1カ月1万円ずつ、株式投資信託などに積み立て感覚で投資する方法を著者は勧めています。本書を参考にしながら、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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