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このコラムでは、投資家にぜひチェックしていただきたいオススメの書籍を取り上げ、5分で概要がつかめるようにご紹介したいと思います。

今回は、和泉昭子氏による『ウォール街の金融マンも学んでいる お金持ちになる心理学』(日本実業出版社)。

お金持ちになるための情報やチャンスに対して意識を向ける

生活経済ジャーナリスト兼ファイナンシャル・プランナーである著者が、豊富な実績をもとに「お金を増やすための意識の持ち方」を説いた本書の軸になっているのは、「お金持ちになるためには、潜在意識の方程式を変える必要がある」という考え方。

そもそも、この考え方がユニークですが、つまりは自分の心の奥底にある、お金に対する思い込みや偏見などを、一度自分自身で認識する必要があるということです。

世の中には無数の情報がありますが、私たちの脳はそれらすべてを処理することができないため、無意識のうちに、「自分にとって重要な情報か否かを選別」しています。

そのため、いくら視覚の隅でとらえていたとしても、脳が自分にとって重要でないと判断してしまえば、それは「なかったもの」として処理されます。(26ページより)

つまり逆にいえば、脳が「自分にとって重要だ」と判断すれば、積極的に関連した情報を拾いにいくということ。だからこそ、幸せになったりお金持ちになったりするための情報やチャンスに対しても意識を向けるべきだというわけです。

脳は意識よりも潜在意識の言葉に従うから、思い込みに注意

とはいっても、ただ「意識を向ければいい」というものでもないのは、難しいところでもあります。というのも、意識のうえではお金持ちになるための情報を得ようとしていても、自分でも気づかないもっと深い部分(潜在意識=無意識)の領域で、「どうせ自分はお金に縁がない」「お金を手に入れると、代わりになにかを失う」というように考えていることがあるから。

でも、それが危険だというのです。脳は、意識よりも潜在意識の言葉に従うものだというのがその理由。

心の深いところで強い信念がある場合、脳はその考えに整合する情報を採用するからです。「意識する」ということは比較的たやすくできるのですが、潜在意識の領域で信じ切っている方程式を変えるのはそう簡単ではありません。

それはその人にとっての「普遍的な事実」で、「自分独自の考え」であるということに気づかずに生きているからです。(28ページより) 

だからこそ、いまの自分を閉じ込めている「見えない壁=フレーム」を突き破り、歪んだ方程式を修正しない限り、大きな変化は遂げられないというのです。 

「自分は多くのお金を稼ぐことはできない」と考えないで

著者はここで、読者に対して興味深い提案をしています。次に挙げるいくつかの数字のなかで、「自分の年収として無関係」と感じる金額があったら、それを覚えておいてほしいというのです。その数字は、以下のとおり。

300万円、500万円、1000万円、2000万円、3000万円、5000万円、1億円……(28ページより)

もし仮に、1000万円あたりで「自分には無縁だ」と感じたとしたら、なぜそう思うのか? 世の中には若くして多額のお金を稼いでいる人もいるのに、どうして3000万円、1億円という金額ではないのか? ここが、とても重要なポイントだといいます。

「あなたは年収1000万円しか稼げませんよ」と言われたわけでもないのに、自分の潜在意識のなかで、いつの間にか「自分の年収は1000万円が上限」と決めつけてしまっているから、そうなってしまうということ。

「景気が悪いから」「中小企業だから」「正社員じゃないから」など、人はさまざまな理由で、「自分は多くのお金を稼ぐことはできない」と考えてしまうもの。しかし、それは普遍的な事実ではないと著者は断言しています。不景気であっても、中小企業の社員でも、派遣社員でも、たくさんのお金を手にしている人はいるのだから。

お金に対する歪んだ思い込みを認識し、書き換えていく

自分自身で勝手に制約をかけて、その考え方に適合する情報を採用しながら生きているから、現実がそれに引っ張られて行くのです。(32ページより)

そこで、もしも将来に向かってより豊かになりたいと思うのであれば、自分が無意識のうちに持っている「お金に対する歪んだ思い込みの数々」を認識し、それを書き換えることが大切だというのです。

本書のこうした考え方は、アメリカのNLP&コーチング研究所のティム・ハルボムとクリス・ハルボム夫妻が開発した『The Wealthy Mind Seminar』(日本では「NLPマネ—クリニック」と呼ばれているそうです)の内容をベースに、著者なりのアレンジを加えたものなのだとか。

それをもとにファイナンシャル・プランナー(FP)、キャリア・コンサルタントの立場から、「どうすればお金を増やすことができるのか」について解説しているわけです。

しかし、同時に注目すべきポイントがあるとも感じました。上記の「潜在意識の方程式を変える必要がある」という考え方は、お金を増やすことだけではなく、人生そのものについてもいえるのではないかということ。

あくまで考え方の問題ですが、そう考えると、なかなかに奥深い内容だと捉えることもできるのではないでしょうか。