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不動産投資はお金のある人しかできない。そう考える人も多いのではないか。実際、物件を購入するとなれば、ある程度まとまった額のお金が必要だ。気軽に手を出せるものではない。

だが、諦める必要もない。現時点で貯金がゼロならば、不動産投資に向けてこれからコツコツとお金を貯めていけばいいのだ。明確な目標さえ作れば「貯金生活」を乗り越えられるかもしれない。

岡山市にいくつもの物件を持つ岡山市の賃貸マスター・岡山大家の森さんは、まさに貯金ゼロの状態から不動産投資を志した。1年間で100万円以上の貯金に成功している。

もともとは不動産投資に興味がなかった森さん。そんな森さんの不動産投資へのプロセスと、不動産投資のポイントなどを詳しく聞いてみた。

大家は儲からない――ネガティブなイメージしかなかった

森さんは当初、不動産投資を始めようとは、まったく考えていなかったそうだ。むしろ「大家なんか、やるもんじゃない」とまで思っていたという。平成14年1月にアパマンショップに入社後、賃貸営業マンとして働くうちに、大家には多大な負担がかかると知ったからだ。

「管理物件を中心とした大量の空室を前に、がんばって入居者を決めても決めても、次から次へと空室ができる……本当にいくら決めてもキリがないんです……」

決まったと思えば短期間で退去したり、他の部屋が空いたりということを繰り返し、物件を抱える大家から「決めてくれ!」という悲痛な連絡が度々きたという。

森さんとしては「リフォームしましょう」「家賃を下げましょう」などの提案をするしかなく、結局は大家の負担になることばかりだ。「大家業が儲かる商売とはとても思えませんでした」と森さん。 

そんな中、あるとき森さんはふと気づいた。

「うまくできる大家さんは、不動産屋に相談しなくても自分で解決できます。だから滅多に連絡してこないんですよね」

森さんが会う大家はほとんどが困っている大家ばかりだ。

「そんな人ばかり見ていたから、大家業に対してネガティブな考えしか持っていなかったんだと思います」

いっときは不動産投資に対し、ネガティブな見方をしていた森さんが、なぜ不動産投資を始めたのか。入社して2年半ほど勤めた頃に、当時の会社の社長に勧められて『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んだのがきっかけだったという。これは不動産投資家にとってのバイブルともいえる本。

「この本を読んで、考え方が180度変わりました。自分が物件を持っていれば、客付けなんか自由自在じゃないかと思うようになったのです。

どこのどんな物件が、いくらで貸せるのか? そんなことは手に取るようにわかっていたので、なぜそんなことに今まで気づかなかったのか、悔しくてしかたなかったです」

森さんはそこから一念発起した。

貯金ゼロからの不動産投資、まずは1日500円作戦

必要なものは、まずお金だ。当時の貯金はほぼゼロ。月の手取りは20万円と少し。まずは1年間で100万円の貯金を目標にした。月に5万円貯金すれば60万円、ボーナスもすべて残せば100万円貯まる。

当時の森さんはバツイチの一人暮らし。1カ月の出費は下記のとおりだ。

家賃

4万5000円

生命保険

3万円 

電話代

2万円(会社の携帯電話はないため、仕事でも使用)

水道光熱費

1万5000円

ガソリン代

2万5000円(週1回ハイオク)

食費

56万円

その他

34万円 

ここから5万円の貯金をするとなれば、どれかの出費を削らなければならない。削れるのは食費とその他。森さんは食費をどれだけ切り詰められるか考え、「1日500円作戦」を開始した。

給料日に500円玉30枚を用意。会社の机に入れておき、毎朝出勤の度に1枚ポケットに忍ばせ、それで1日を過ごしました。ほとんど休みなく働いていたので、500円玉は会社に置いておけばよかったんです。31日の月は1枚足りないので苦労しました。2月は余裕があってよかったですね」

500円では1食分にしかならなさそうだ。そこで森さんは、夜にスーパーの見切り商品を買い込み、それをその日の夕食と翌日の朝食・昼食にしていたという。弁当や惣菜の半額、豆腐3パック100円などで過ごす毎日。

「やればできるもんですね。貯金は1年で百数十万円に達し、とりあえず目標に到達しました。最初に強制的に貯金の5万円を抜いたのがよかったんでしょう。月末に残ったお金を貯金するのではたぶん無理だったと思います」

貯金のポイントは「最初に目標額を抜いておく」ことだ。生活は苦しくなるが、これなら確実に貯金ができる。

ファイナンシャルプランナーは、賃貸経営に役立つ資格

森さんは不動産コンサルティングマスター、競売不動産取扱主任者、住宅ローンアドバイザー、少額短期保険募集人試験など資格を多く持っているが、「賃貸経営にダイレクトに役立つ資格」はどの資格なのだろうか。

賃貸経営自体に一番役に立ったのは、ファイナンシャルプランナーですね。税金や保険、資産運用などお金に関する内容が多いですから、これは大いに役に立ちました。やはり経営ですから、税金の仕組みや減価償却のことは理解しておいたほうがよいですね」

一般的にも知名度が高い資格、ファイナンシャルプランナー。賃貸経営をするなら、お金に関する知識は当然、他の人よりも持っておかなければならないだろう。では不動産に関する資格はどうか。

宅建や不動産コンサルティングマスターは、賃貸経営そのものにはあまり関係ないものの、知識として持っておくのは良いと思います。ただ試験に合格しただけではペーパードライバーと同じですから、常に学び続けて知識の更新をしていかないといけませんね」

資格を取得したからといって安心してはいけない。どんなことでも最新の情報を手に入れ、それに対応できるようにしておくことが経営のポイントだろう。

これから不動産投資を始める方で、大家業を成功させたい方は、まずファイナンシャルプランナーの資格取得を目指すとよさそうだ。

戸建て、中でも「平屋」を好む理由

続いて森さんに、不動産選びで最も重要視することについて尋ねた。森さん流、不動産選びの極意は「他の物件と競合しないこと」だという。競合こそが一番のガンだと考えている、とも話す。

不動産投資では入居者の取り合いで競合することになる。客(入居者)は大家同士で競争させて、好条件を引き出そうとするためだ。これではリフォーム合戦、値下げ合戦などを避けられない。

「我々も日常的に相見積もりを取ったり、価格ドットコムで調べたりしますが、あれをやられるほうはきついですよ。利益を削って受注するしかないですから」

そこで森さんが目をつけたのが、「競合しにくい物件」だ。つまり「希少性の高い物件」のみを狙う。

希少性で考えると、基本的に集合住宅は除外されます。集合住宅は空間を最大限活用することを考えた商品で、大多数の人が取る戦略ですので、必然的に同種の物件が増えていく運命にあります」

超好立地なら集合住宅でも立地条件で希少性を発揮できるが、そういう集合住宅はそもそもそれほど安くは買えない。不動産投資ビギナーが最初から狙って成功するのは難しそうだ。

森さんは物件そのもので希少性を表現しやすいということで、戸建てに特化した戦略をとっている。大多数の人が取らない戦略だ。

「賃貸営業マンの頃に感じていたことですが、アパートやマンションを探しにきたお客さんならいくつもの物件を提案できます。そして3~4物件案内すれば決まります。しかし、戸建ては提案できる物件がかなり少ない」

森さんの感覚だと、アパートやマンションが10だとしたら、戸建ては1以下とのこと。いくつも提案できる物件はそれだけ類似品や代替品が溢れている証拠。つまり、ライバルが多いのだ。

賃貸営業マンが提案に困る物件こそが市場に足りていない物件なので、それを保有することでライバル関係を避けるようにしています」

戸建ての中でも、森さんがとくに好んでいるのは平屋だ。平屋は外壁や屋根のメンテナンス、解体も容易なわりに、2階建の戸建てと比べて賃料も大きく変わらないことが多いという。

「アパートやマンションと比べてマイホーム感覚で愛着を持っていただけることも多いですし、入居者ご自身で掃除や、ときには修繕までしていただけます。『家賃を安くするので、好きにしてもらっていいですよ』という形で、ノーリフォームで貸し出すこともしばしばです。賃料を優先する方からは逆に感謝されますよ」

こちらは手間もお金もかからないのに、感謝もされる。お互いに満足できるいい状態だ。

家賃収入は月に最高で130万円

不動産投資で森さんは、実際にどのくらいの収益を得ているのだろうか。森さん曰く、「5月完成の新築も含めると、家賃収入の合計は最高で130万円くらいです。他に太陽光約72kwの売電が入ります」とのこと。

利回りについては築古だけでなく、好立地の新築、将来性の高い物件とをミックスして運営しており、単純には語れないそうだが、下記の通り保有物件の収支を教えてくれた。

<中古物件>

○3、4、5号 昭和46年築/平成23年

・全空き250万円でまとめ買い

・3号平屋:家賃3.5万円、4号平屋:家賃2.5万円、5号平屋:家賃1.9万円

⇒計7万9000円 利回り37.92%

○7号平屋 昭和40年築/平成26年

・オーナーチェンジにて250万円で購入

⇒家賃3万5000円 利回り16.8%

○8号戸建て 昭和42年築/平成26年

・100万円で購入

⇒家賃3万5000円 利回り42%

計14万9000円×12=178万8000円

物件価格は600万円(リフォームはなし)のため、平均29.8%となる。

<新築物件/全て土地から購入>

○2号 平成21年新築

⇒平屋 利回り6.4%

○6、7号 平成24年新築

⇒戸建て 利回り8.3%

○13、14、15-1、15-2、テナント1号 平成28年築

⇒平屋、平屋長屋、テナント 満室想定利回り6.6%

※テナントは募集中(2017年5月現在)

○16-1、16-2号 平成29年新築

⇒平屋長屋 満室想定利回り10%

※5月末完成予定

<将来性を狙える物件>

・3棟まとめ買い

○10号平屋 昭和45年築

⇒家賃3万8000円

○11号平屋 昭和45年築

⇒3万8000円

○12号戸建て 昭和51年築

⇒4万円(リフォームなしで入居)

※物件価格は1500万円 9.28%、2年以内の計画道路延伸が決定

○アパート1号 昭和52年築

⇒家賃22万8000円

※物件価格は2500万円 10.9%、今まで集合住宅は避けてきたが、生活保護の入居の長い方が中心で、立地も良く130坪あるため、10~15年後の平屋新築用地として購入

零細大家でも勝ち抜く秘策

最後に、森さんのように地方都市で不動産投資を始めたい方へのアドバイスをいただいた。

「よほど過疎地でない限り、人口がゼロになるようなことはないでしょう。賃貸需要は少なからずあるはずです。それなりの都市であればどこでも戦えると思います。個人的には雪が降らないところがよいかと」

雪の降る地域は家の手入れが大変だ。慣れていなければなおさらだろう。真冬だと家の様子を見に行くこともなかなかできない。

森さん曰く、賃貸事業が悪化する原因は、場所に関わらずライバル物件との戦いでの疲労だそう。

「特殊な人脈などがないのであれば、ライバルが少ない、今後増えそうにないという場所、あるいは、そういった物件で勝負するしか、零細大家は勝ち目がないかもしれません」

不動産投資は決して簡単ではない。しかし、不動産投資について勉強し、希少性のある物件を見極めることができれば、森さんのように成功できるかもしれない。森さんのやり方を参考に、不動産投資を始めてみてはいかがだろうか。

岡山大家さんこと森さんのプロフィール

平成14年1月に不動産賃貸業の門を叩き、岡山市内7店舗で、営業、店長を経験する傍ら、ひたすら岡山市の賃貸物件をウォッチング。数千の部屋、数千のお客さんを相手に得た経験から、「自分で物件持って、自分で客付けしたらいいのでは?」と考え、大家になろうと決意。

当時、年収300万円台、貯金ゼロの状態から今もコツコツ積み上げ中の低属性零細大家。現在はサラリーマンを辞めて岡山の田舎でひっそりウンチクを発信中。

賃貸経営では、「平屋建てこそが最強アイテム」と頑なに信じ、平屋建ての布教活動を細々と行う。

岡山市の賃貸マスター 岡山大家の不動産投資日記

http://fanblogs.jp/okayamaooya/