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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、「ズル」をした大家さんの末路について、いくつか事例をご紹介します。

賃料を一部除外して申告したケース

不動産賃貸業の売上は、入居者から頂く賃料ですが、この賃料を除外して申告していたケースです。

サラリーマンが小遣い稼ぎ程度の目的で所有する、区分所有マンション1室の申告をしないケースもあれば、複数の物件を持っていて、その一部を除外して申告するケースもあります。

前者の場合は、給与以外の所得が年間20万円以内であれば、申告の必要はありませんが、それを超える場合には申告の必要があります。

どちらにしても、税務調査が入れば、除外して申告していることは、すぐにバレます。なぜなら、不動産は登記されているため、所有者はすぐにわかりますし、その不動産に入居者がいるかどうかも、税務調査のプロがちょっと調べれば、すぐにわかることだからです。不動産賃貸業は、他の商売よりも売上が把握されやすい商売と言えます。

もし、申告していないことがバレた場合は、3~7年ほど遡って税金を納める必要がありますし、他にもペナルティとしての税金を払うことになります。

個人的なゴルフ代を経費にした事例

不動産賃貸業は、あまり経費として計上できる項目が少ない商売です。実際に平成22年の国税不服審判所の裁決では、接待ゴルフとして計上していた経費が認められなかった事例があります。

個人で不動産賃貸業を営む納税者Aは、毎年30回以上、ゴルフクラブでプレーをしていました。その際の領収書の余白には、接待交際費を水増しして税金を少なくするために(本人が申述)、実際にプレーした人とは違う人の名前等を書いていました。

また、Aの他、Aの母B、そして法人Cでも不動産賃貸業を営んでいて、それらの帳簿を長男Dが記帳をしていましたが、決算期が近くなると、それぞれの所得金額を調整する目的で、ゴルフ代を配分していました。

結局、この一件は税務調査で認められず、国税不服審判所までいきましたが、認められていません。

結果、7年間で800万円以上の金額が、経費として認められませんでした。もし、Aの所得税率が40%だったなら、追加で320万円の税金を払うことになります。

もちろん、これに伴って住民税(10%)も新たに発生しますから、合わせて400万円の税金が追加で発生することになります。

脱税をした場合、どんなペナルティがあるのか?

では、脱税をして、税務調査等で明らかになった場合は、どんなペナルティがあるのでしょう? 以下の図をご覧ください。

○過少申告加算税、加算金(地方税)

まず、納める税金が少なかったことによるペナルティとして、過少申告加算税を払わなければいけません。過少申告加算税の税率は、未納の分の税金(本来納めるべきだった税金-当初納めた税金)の10%です。

ただし、未納の分の税金が当初に収めた税金と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合は、その超えている部分について15%になります。

例えば、当初に納めた税金が40万円だった場合は、40万円<50万円となりますので、50万円を超える部分に15%の税率が掛かることになります。

ちなみにゴルフ代の事例の場合、

・当初に納めた税金=0円
(0円<50万円のため、50万円を超える部分に15%掛かる)

・未納の分の税金=400万円

よって過少申告加算税は、50万円×10%+350万円×15%=57万5000円となります。

○重加算税、加算金(地方税)

重加算税とは、課税の基礎となる事実を隠ぺいし、または仮装して税をまぬがれようとしたときに課されるペナルティで、税率は35%です。かなり高いですね!

ゴルフ代の事例では、実際にプレーした人とは違う人の名前等を書いていたことから、重加算税が課されることになり、400万円追加で税金が課されていたとすると、140万円の重加算税となります。

重加算税:400万円×35%=140万円

○延滞税、延滞金(地方税)

延滞税は、納税を延滞したことによる利息としての税金です。延滞税は、納付期限から2カ月以内であれば原則年7.3%ですが、このパーセンテージは、特例基準割合というものに連動して毎年変わります。

また、納付期限から2カ月を超えた期間については、原則年14.6%ですが、こちらも、特例基準割合というものに連動して毎年変わります。現在の銀行の金利を考えると、かなり高いですよね。

ゴルフ代の事例で、400万円追加の税金に対して、7年間14.6%で単純計算すると、58万4000円の延滞税となります。

延滞税:400万円×14.6%=58万4000円

(※実際は申告のタイミングに応じて、また金利に応じて細かい計算となるので数値は異なります)

結局、ゴルフ代の事例では、脱税が発覚したことにより、追加の税金が650万円以上も増えていたことになります。

追加で支払う税金=未納分の税金400万円+過少申告加算税57万5000円+重加算税140万円+延滞税58万4000円=655万9000円

このように、税金上で「ズル」が発覚すると、非常に重いペナルティが課せられ、キャッシュフローを大きく圧迫することになります。さらに、今後税務署からも目を付けられ、短い間隔で税務調査に入られることにもなり、無駄な時間も発生することになります。

したがって、このコラムをお読みの皆さまは、脱税なんて考えずに、しっかりと利益を出して税金を払い、確実にお金を残すようにしてくださいね。