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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、2017年5月に発表された、空き店舗への課税強化のお話について、不動産投資にどのような影響が出そうかを考察してみたいと思います。

地方で多くなっているシャッター通り

私の地元は兵庫県神戸市中央区。中央区と言っても、中心街の三宮からは駅1つ離れた地域です。大学生まで育った町の近くには大日商店街という市場があります。小学生時代には、この商店街でお米屋さん、八百屋さん、ふとん屋さん等の商売をしている同級生の家も多く、商店街はとっても賑わっていました。

でも30年以上経った今、小学校時代の同級生たちは商売を引き継がず、違う仕事をしています。親世代は、もう高齢になって商売を畳み、そこに住みながらも、シャッターは閉まったままのお店が増え、今や大日商店街はシャッター通りと化してしまいました。

実は、このような状況は地方ではとても多くなってきていて、地方の活性化を促す障害となっています。

では、なぜ高齢になった親世代がお店に住み続けているのでしょう? その理由は、店舗でも住んでいれば、税制上、住宅としての扱いになり、固定資産税が1/6に軽減されるからなんです。

空き店舗の固定資産税が高くなる!?

シャッター通り対策を含めて、地方を活性させるために、政府は経済政策の柱と位置づける「まち・ひと・しごと創生基本方針」を2017年5月に発表しました。この中では、地方の商店街を活性化させるための、空き店舗への課税強化案が盛り込まれています。

その内容は、空き店舗となった場合は、住宅の特例対象から外して、固定資産税1/6の軽減措置を外し増税するというもの。その目的は、意欲のある出店希望者への店舗の売却や貸し出しを促して、地方を活性化させるためです。

地方創生の政策はどちらかというと「アメ」が多いのですが、今回の案は課税強化という「ムチ」で、異例の施策と言われています。

2015年施行の空家特措法の影響は?

空き家については、2015年に「空家対策特別措置法」が施行されていますね。空家対策特別措置法では、自治体が「特定の状態である」と判断した特定空き家に対して、固定資産税の1/6軽減が適用されなくなり、状態が酷い場合には、自治体の家屋取り壊しまで認められています。

こちらも人口流出の激しい地方で、1人住まいの高齢者が亡くなってしまうことによって、危険な家屋となってしまうこと等の対策として施行されたものです。

下のグラフは総務省統計局の「空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について」に掲載されているグラフで、総住宅数を占める空き家の数が載っています。このグラフを見ると、空き家も空き家率も年々増えているのが見てとれますね。

では、空家対策特別措置法の適用を受けた事例はどれぐらいあるのでしょう? 実際の事例では、神奈川県横須賀市が2015年7月に、所有者不明の特定空き家について、施行後初の取り壊しをしています。

また、横須賀市内の2015年9月現在の特定空き家は61件で、これらの空き家について、所有者が見つからなかったり、指導・勧告・命令に従わない場合は、固定資産税の特例外しを経て、強制撤去も出てくることでしょう。

空き店舗、課税強化の影響は?

先に施行された空家対策特別措置法の不動産投資市場への影響は、まだまだ新しい法律ということもあり、そこまで目立った動きは感じません。ただ、特に人口減少と高齢化の影響で危険な空き家が増えてくれば、投げ売りする所有者も出てくると思われますので、そのような物件を安く購入できる可能性は高くなりそうです。

また、今回発表された空き店舗への課税強化の不動産投資市場への影響は、こちらもすぐには出ないと思われます。実際に施行されても、店舗の所有者に再活用を要請しても応じない場合などに限って適用する方針のため、どこまで法律の効果があるのか、わかりません。

しかし、固定資産税の軽減がなくなってしまうのであれば、空き店舗を貸し出す店主も出てきそうですし、いい値段で売れるのであれば、売却も検討するでしょう。

そうなれば、政府の目的通りとなりますが、ポイントは、実際にどれだけの空き店舗に課税強化が実施されるかでしょう。個人的には、そもそも空き店舗に課税強化すること自体を躊躇する自治体が多いのではないかと思います。

住宅も店舗も空き家への課税が強化されていく方向ですが、不動産投資家としては、アンテナを張って状況を見ながら動いていくことが重要ですね。