「不動産投資なら失敗しても次の物件に生かせますが、コインランドリーは失敗を次に生かせません。何も残らないのが怖いです。少なくとも、一番初めの投資として手を出すのはお勧めしたくありません」

こう話すのは、首都圏で不動産投資を行う佐藤亮さん(仮名)だ。佐藤さんは3年前から、FCを利用したコインランドリー経営を実践している。

佐藤さんのコインランドリーは神奈川県にある10坪程度の店舗で、洗濯機3台と乾燥機6台が設置してある。

開業にあたっての初期費用として、機器の買い取りで約1000万円、内装工事に約300万円、その他机や掃除用具などの購入費に100万円弱かかったという。フルローンでの融資が通り、政府系金融機関から約1400万円借り入れた。

現在の売り上げは月70万円ほど。銀行への返済、店舗の家賃、清掃に来ている人へのパート代、水道・光熱費、そしてFC本部への支払いなどを含めると、経費は約42万円だと話す。毎月30万円程度が手元に入る計算だ。

そのため、佐藤さんは「まだ借金の方が多いので最終的には回収し終わってからですが、開業してよかったと思っています。純粋に自分の店を持ち、ある程度手を入れて経営するということは面白いです」と語る。

FCでの開業も「現段階では儲けも出ていますし、FCを使わないで自分でコインランドリー経営のノウハウを調べるところからやるとしたら、おそらく面倒で始めていなかったと思います。FCの良さの一つは始めやすさですね」という。

ただ、中古の機器を買いそろえて独自で開業した知人の初期投資は700万円程度だったと聞き、「いかにFCのコストが高いかわかりました」との思いも。

コインランドリー開業にあたっては、自分にどのような開業方法が合っているのかを見極める必要もありそうだ。

立地の選び方、開業する時期の注意点は…

佐藤さんもまた、立地の重要性を訴える。

「まず競合店がないかどうかはきっちり調査したほうがいいでしょう。競合店があったら、その場所で開業してはいけません」

ただし、競合店があっても逆にチャンスになる場合もあるという。

「すでにある店舗が昔ながらの汚い、いわゆる古いタイプのコインランドリーだったらこれはチャンスです。そこの利用客はコインランドリーを使う文化があるので、引っぺがしてしまえばいいんです」

さらにチェックするポイントは、視認性の高さだ。人通りが多いかどうかの確認が重要で、さらには縦長の店舗よりも横長の間口の広い物件の方が視認性が高まるため、より望ましいという。また、横長の物件の方が防犯カメラの死角が出来づらいという利点もある。

佐藤さんの店舗の利用客層は、若者から年配まで幅広いという。

「夜には若い人が多く、昼には主婦やお年寄りが来ますね。意外と多いのがお年寄りで、洗濯物を干す、腕を上にあげるという作業ができないそうで、洗濯から乾燥までやって、持って帰る人が多いんです。そういう意味では、その土地に住んでいる年齢層もばらばらの方がいいと思います」

佐藤さんは商圏を500メートル程度に設定している。500メートルほどだと、なかなか競合店が出来にくいためだ。小さく商圏を設定したほうが、失敗の確率は減ると感じているという。

また、都市型店舗のため駐車場はないが、自転車やバイクを止めるスペースはきちんと設けている。「歩道が狭いなどの理由で店の前にスペースがない店舗は、お客さんが入りにくいんです」という。

開業するべき時期

開業時期も大事だと佐藤さんは話す。佐藤さん自身がそれで失敗したためだ。

「私の店は開業が需要の薄い5月ごろになってしまいました。天気がいい日が続き、乾燥機を使う必要もないので、コインランドリーを利用するお客さんが少ないんです。6月には梅雨の時期がありますが、今年みたいに雨が降らないとハズレですね(笑)。人は来やしません。そこから夏過ぎまではお客さんの伸びが少ないので、赤字の期間が長くなるだけです」

佐藤さんのオススメの開業時期は9月ごろ。長雨が続き、さらにすぐ11月、12月と冬が来て天候が悪いため、その時期に初期セールなどを打つと開業後の立ち上がりが早いという。

開業時期の失敗もあり、固定客がつくまで、佐藤さんも開業後の半年間ほどは月10数万円の赤字だったと振り返る。

佐藤さんの場合もほかにその赤字を補てんできるアパートなどがあった上、サラリーマンでの本業もあった。

「サラリーと家賃収入があったので、『まあなんとかなるだろう』とゆったり構えられましたけど、いきなりコインランドリーを経営して、自分の貯金を崩して月10万円以上飛んでいくっていうのは…怖くなっちゃいますよね」

競合をつぶすための方法

佐藤さんも、懸念は競合店が開店することだという。

「最近、すごい勢いでコインランドリーの店舗数が増えていると感じています。実際あった話ですが、先日、オーナー同士で物件を見て回っていた時に空き店舗を発見したんです。『ここにはコインランドリー出来ないよね』と冗談で話すくらい立地は悪かったんですが、後日通りがかるとそこにコインランドリーが出来ていたんです。そんな場所にまで出来るくらいですし、セミナーなどでも他の投資家さんからコインランドリーの話ばかり聞かれますし、急激に熱が上がってきていると感じています」

佐藤さんの知人の店は、開業当時は1店舗もなかったにもかかわらず、3年間で近隣に4店舗も出来てしまったという。しかも「珍しい話ではありません」と佐藤さんは語る。

そうした中で、廃業に追い込まれる店も少なくない。中古の店舗を丸ごと買わないか、という話も出回るという。

現在のところ、佐藤さんの店舗の近くにコインランドリーは出来ていない。しかし、もちろん今後開業される可能性はゼロではない。そうした時、佐藤さんならどうするか聞いてみた。

「機器などで差別化できないですから、そうなるともう値段勝負ですよね。開業時期を調査して、わかったらそれに向けてチラシをバンバンまいて、100円セールなどを実施することで、新規店の出鼻をくじきます。既存客がいるので、値段を下げても売り上げも極端に減ることはないですが、新規店はつらいはずです。3年分の既存客のありなしは結構大きいです」

今後の新規参入のコインランドリー投資は、こうした中での開業になることを覚悟しておく必要がある。

佐藤さんによると、近年ではコインランドリー投資の人気を受けて、FC側に支払う費用が高値になっているという話もあるようだ。また、FC内で新規店の開業に一定の距離を設ける規定もあるが、その距離が縮まるのではないか、という噂もあるという。

「コインランドリーは運の要素も強いですよね。競合店が開業するかどうかも運ですし、成功するかどうかもわかりません。不動産投資なら、最悪、物件を相場より安く購入しておけば、売ればトントンくらいまでには持っていけますが、コインランドリーはそうはいきません。イチかバチかみたいなところは、本当に怖いな、と思っています」

得る収益に見合った労力か?

確かにコインランドリー経営では、開業当初を乗り切ればある程度の収益を得ることが可能だ。しかし、大儲けできている人は多くなく、さらに常に競合店開業の恐怖にさらされることになる。

今から参入して成功することは、立地のリサーチや経営に多大な労力をかけない限り非常に難しい。果たしてそれは、得る収益に見合った努力だろうか。

最適な立地を確保した上で、自分で店づくりをできる「コインランドリー経営」自体に魅力を感じていない限り、今時点では多くの人の熱が冷めるのを待つほうが得策だ。

(楽待編集部 浜中砂穂里)