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本業が忙しいサラリーマンでも簡単に始めることができ、かつ毎月安定的な収入を得ることができる―。

そのようなうたい文句の「コインランドリー投資」がここ数年、注目を集めている。フランチャイズ(FC)を利用すればトラブル対応や修理なども任せることができるなど、その手軽さから参入する不動産投資家や、これまで投資経験のないサラリーマンも見受けられる。

あるオーナーは、「数年前までFCの説明会に集まる数はごくわずかでしたが、現在は100人も200人も集まっていると聞きます」と話す。また開業当時に周囲に1軒もなかったコインランドリーが、数年間で近隣に4軒も出来たという話もある。

こうした中でコインランドリー投資は本当に儲かるのだろうか? 「月に20万円の赤字になった…」と激白するオーナーもいたが、コインランドリー経営の怖さとはなにか。それぞれ違うスタイルでコインランドリーに投資を行う投資家2人に、実情を取材した。

右肩上がりに拡大

「コインランドリー」と聞くと、「古い」「汚い」イメージもある。しかし、近年はカフェやキッズスペースを併設したコインランドリーなども登場し、テレビのワイドショーで何度も特集が組まれていることも相まって、主婦らを中心として利用客側の人気も高まっている。

厚生労働省の「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」によると、コインランドリーの店舗数は、1996年度に1万228店舗だったものが、2013年度には1万6693店舗に増加している。現在も店舗数は増加していると見られ、コインランドリー事業が拡大していることは明らかだ。

一方で、この数値は今からコインランドリー投資に参入しようと思っても、競合が多いということの裏返しでもある。

「思ったより儲からない」

関東にアパートや区分の物件を持つ内田陽一さんは、2014年12月、埼玉県に所有する空室のテナント物件を利用、約440万円の造作工事を行ってコインランドリーを開業した。

「私のテナント物件は住居に比べ家賃を多く取っているんですが、いったん退去してしまうとそのインパクトが大きいですし、空室が長くなる傾向にありました。私のその物件も入居が決まらなさそうだと思い、それなら自分で何か始めようと、コインランドリーに着目しました」

内田さんのコインランドリーは約17坪ほどの規模で、リース会社と契約した洗濯機4台と乾燥機8台がある。リース料金は総額で月々約13万円。7年間の契約だ。このほかに、内田さんは靴用の洗濯乾燥機を32万円で購入し、設置している。

昨年の売り上げは「平均で月に約35万円くらいです」という。内田さんによるとコインランドリーは開業後5年程度は徐々に売り上げが伸びる傾向があり、内田さんの店舗でも今年はさらに伸びる見込みとなっている。

ただ、実情について内田さんは次のように語る。

「コインランドリーを始めてみて、思ったほど儲からないという印象です…。水漏れがあるとか、ガスのにおいがするといったトラブルもありますし、機械が動かないと言われて返金の対応をすることもあり、意外と手がかかります。自分で現場を確認しないといけない性格もあるでしょうが、全然不労所得ではないですよ」

開業後、月に20万円飛んでいく恐怖

現在、月々の経費はどのくらいなのだろうか。内田さんは詳細を教えてくれた。

「まずリース料金の13万円がかかります。それと政府系金融機関から融資を引いて開業していますので、その返済が約8万円。それと水道・光熱費は稼働率によっても変わりますが、12万円~15万円くらいかかりますし、清掃に来てもらっているパートさんの給料に3万円支払います」

このほか雑費などを合わせて、「収支はトントンならいい方」だという。

内田さんは自身の物件で開業しているため、月々の家賃はかからない。もし開業する際に店舗を借りるとするとさらに家賃が支出に上乗せになり、出ていく金額の方が大きくなる可能性があるため注意が必要だ。

コインランドリー経営のリスクのひとつとして、開業後すぐに儲かる事業ではないことがよく挙げられる。コインランドリー店舗の認知や、利用客の獲得までに時間がかかるためだ。内田さんも実際、開業直後は赤字が続いたと話す。

「10万円台後半くらいの売り上げしかなくて、20万円くらいは持ち出しでした。安定したお客さんがつくまでは1年間くらいかかったでしょうか…。」

万が一この持ち出しが1年間続けば、年間で赤字が240万円にもなる計算だ。「リース会社は売上が50万円くらいという見積を出していました。まあそんな上手くはいかないだろうと、自分では低めに30万円くらいの売り上げを予測していたんです」という。ふたを開けてみれば、当初はその半額程度の売り上げしかなかったのだから、その衝撃は計り知れない。

ポスティングをするなど顧客開拓の努力はしたものの、「それではあまり効果はなくて、むしろ通りがかったお客さんがたまたま利用してくれて、リピーターとして来てくれたことの方が多かったかもしれません」という。 

コインランドリー経営は「立地がすべて」

内田さんが経営するコインランドリー店は、半径1~2キロメートル程度からの利用客を見込んでいる。店舗は幹線道路沿いにあり、建物の裏手には駐車場も設けている。近くには大学もある場所で、車での来店も多いが、自転車で来る人もかなりいると話す。

「最近のコインランドリーの利用客は共働きの主婦が多いと言われていて、私の店舗もそこをターゲットにしていたんですが、実際には男性や学生も思った以上に来ますね」

コインランドリー経営では立地が重要と言われるが、内田さんも「場所がすべてだと思いますよ」と語る。

「コインランドリーを検討している人に聞くと大きい道路沿いがいいと思う人も多いみたいですが、あんまり大きすぎると中央分離帯があるので、右折で店に入れずに機会損失が増えてしまいます。片側1車線くらいの、県道レベルの道路沿いがいいかもしれません」

内田さんの店舗にも駐車場はあるが、建物の裏手にあるために「車で入りづらい」と自身では分析している。「車でそばを通って私の店舗を見かけた人が『駐車場がないからここはやめよう』と思うことも、もしかしたらあるかもしれません」

時間限定値下げで差別化

コインランドリー経営をする上での不安を聞くと、「近くに競合店が建つことが怖い」と話す内田さん。コインランドリーでは導入する機種などでの差別化が図りにくいため、自分の店の利用客のより近くに新たな店舗が出来れば、その利用客が流れることも想定できるからだ。

内田さんは顧客の獲得や他店舗との差別化の工夫として、平日の午後などに、洗濯機について時間限定の値下げサービスを行っている。300~400円程度安くなるため好評だという。

内田さんのコインランドリーの近所には、実は内田さんより先に開業していたコインランドリーがある。高速道路を挟んで競合店が反対側に位置していたことから、高速道路の手前側を商圏とすることで持続的に事業継続が可能と判断した。
「でも、ラッキーなのかもしれません。うちが半額セールとかをやっても向こうはなにもしてこないので、何とかなっています」。

内田さんは、「コインランドリーは投資というより、経営の要素が強いと感じています。ただ機械を買って、いい立地に置いて、来てくれる人を待つ、というだけでは上手くいきません」と指摘した。

開業時の立地の重要性はもちろんだが、その後のトラブル対応や清掃の頻度、競合店の調査、セールの開催など、固定客をつなぎとめるためにやることは多いようだ。

「お客さんに喜んでもらえる工夫はとにかくやっていきたいですね。そこは賃貸経営と一緒かもしれません」(内田さん)

参入は「勧められない」?

「コインランドリー経営は、『辛抱』ですね」

内田さんはこう語る。コインランドリーは開業しても2~3年は黒字になることは少ない。機器をリースしていればその料金もかかる上、万が一故障などがあれば修理費は自腹だ。業務用の洗濯機は修理費も高額で、20万円程度かかる場合も多い。

そうした事態に備えて、数年間は自己資金からの持ち出しがあることを考慮し、それでも続けていける体力がないと維持できない。

機器の償却期間終了後は1万円程度の金額で再リースすることができるため、そうなるとそれまで支払っていたリース代はそのまま利益にまわることになる。内田さんの場合は7年だ。「7年は長いですが、7年間の貯金のつもりで待ちます」という。また、業務用の洗濯機などは故障しにくく、「うまくいけば20年くらい持つと見込んでいます」と語る。内田さんの洗濯機や乾燥機も、現在のところ大きな修理を伴う故障はない。

内田さんの空きテナントは約12万円程度の家賃だが、自身のコインランドリーでも「欲を言えば家賃分は稼ぎたい」と思っているそうだ。

内田さんのコインランドリー

これからコインランドリー投資への参入を考えている人に、内田さんはこう話す。

「本業をしている間にコインランドリーが稼いでくれるので、そういう部分はいいと思っています。いい場所があって、チャンスがあればやってみてもいいとは思いますが、これだけコインランドリーが増えてしまった今、他の人にはそう簡単には勧められませんね」

内田さん自身も、2店舗目を出店する考えは現段階では持っていない。「家賃を支払って、どこかに店舗を借りてやるには割に合わないです」

手残りは30万円

「不動産投資なら失敗しても次の物件に生かせますが、コインランドリーは失敗を次に生かせません。何も残らないのが怖いです。少なくとも、一番初めの投資として手を出すのはお勧めしたくありません」

こう話すのは、首都圏で不動産投資を行う佐藤亮さん(仮名)だ。佐藤さんは3年前から、FCを利用したコインランドリー経営を実践している。

佐藤さんのコインランドリーは神奈川県にある10坪程度の店舗で、洗濯機3台と乾燥機6台が設置してある。

開業にあたっての初期費用として、機器の買い取りで約1000万円、内装工事に約300万円、その他机や掃除用具などの購入費に100万円弱かかったという。フルローンでの融資が通り、政府系金融機関から約1400万円借り入れた。

現在の売り上げは月70万円ほど。銀行への返済、店舗の家賃、清掃に来ている人へのパート代、水道・光熱費、そしてFC本部への支払いなどを含めると、経費は約42万円だと話す。毎月30万円程度が手元に入る計算だ。

そのため、佐藤さんは「まだ借金の方が多いので最終的には回収し終わってからですが、開業してよかったと思っています。純粋に自分の店を持ち、ある程度手を入れて経営するということは面白いです」と語る。

FCでの開業も「現段階では儲けも出ていますし、FCを使わないで自分でコインランドリー経営のノウハウを調べるところからやるとしたら、おそらく面倒で始めていなかったと思います。FCの良さの一つは始めやすさですね」という。

ただ、中古の機器を買いそろえて独自で開業した知人の初期投資は700万円程度だったと聞き、「いかにFCのコストが高いかわかりました」との思いも。

コインランドリー開業にあたっては、自分にどのような開業方法が合っているのかを見極める必要もありそうだ。

立地の選び方、開業する時期の注意点は…

佐藤さんもまた、立地の重要性を訴える。

「まず競合店がないかどうかはきっちり調査したほうがいいでしょう。競合店があったら、その場所で開業してはいけません」

ただし、競合店があっても逆にチャンスになる場合もあるという。

「すでにある店舗が昔ながらの汚い、いわゆる古いタイプのコインランドリーだったらこれはチャンスです。そこの利用客はコインランドリーを使う文化があるので、引っぺがしてしまえばいいんです」

さらにチェックするポイントは、視認性の高さだ。人通りが多いかどうかの確認が重要で、さらには縦長の店舗よりも横長の間口の広い物件の方が視認性が高まるため、より望ましいという。また、横長の物件の方が防犯カメラの死角が出来づらいという利点もある。

佐藤さんの店舗の利用客層は、若者から年配まで幅広いという。

「夜には若い人が多く、昼には主婦やお年寄りが来ますね。意外と多いのがお年寄りで、洗濯物を干す、腕を上にあげるという作業ができないそうで、洗濯から乾燥までやって、持って帰る人が多いんです。そういう意味では、その土地に住んでいる年齢層もばらばらの方がいいと思います」

佐藤さんは商圏を500メートル程度に設定している。500メートルほどだと、なかなか競合店が出来にくいためだ。小さく商圏を設定したほうが、失敗の確率は減ると感じているという。

また、都市型店舗のため駐車場はないが、自転車やバイクを止めるスペースはきちんと設けている。「歩道が狭いなどの理由で店の前にスペースがない店舗は、お客さんが入りにくいんです」という。

開業するべき時期

開業時期も大事だと佐藤さんは話す。佐藤さん自身がそれで失敗したためだ。

「私の店は開業が需要の薄い5月ごろになってしまいました。天気がいい日が続き、乾燥機を使う必要もないので、コインランドリーを利用するお客さんが少ないんです。6月には梅雨の時期がありますが、今年みたいに雨が降らないとハズレですね(笑)。人は来やしません。そこから夏過ぎまではお客さんの伸びが少ないので、赤字の期間が長くなるだけです」

佐藤さんのオススメの開業時期は9月ごろ。長雨が続き、さらにすぐ11月、12月と冬が来て天候が悪いため、その時期に初期セールなどを打つと開業後の立ち上がりが早いという。

開業時期の失敗もあり、固定客がつくまで、佐藤さんも開業後の半年間ほどは月10数万円の赤字だったと振り返る。

佐藤さんの場合もほかにその赤字を補てんできるアパートなどがあった上、サラリーマンでの本業もあった。

「サラリーと家賃収入があったので、『まあなんとかなるだろう』とゆったり構えられましたけど、いきなりコインランドリーを経営して、自分の貯金を崩して月10万円以上飛んでいくっていうのは…怖くなっちゃいますよね」

競合をつぶすための方法

佐藤さんも、懸念は競合店が開店することだという。

「最近、すごい勢いでコインランドリーの店舗数が増えていると感じています。実際あった話ですが、先日、オーナー同士で物件を見て回っていた時に空き店舗を発見したんです。『ここにはコインランドリー出来ないよね』と冗談で話すくらい立地は悪かったんですが、後日通りがかるとそこにコインランドリーが出来ていたんです。そんな場所にまで出来るくらいですし、セミナーなどでも他の投資家さんからコインランドリーの話ばかり聞かれますし、急激に熱が上がってきていると感じています」

佐藤さんの知人の店は、開業当時は1店舗もなかったにもかかわらず、3年間で近隣に4店舗も出来てしまったという。しかも「珍しい話ではありません」と佐藤さんは語る。

そうした中で、廃業に追い込まれる店も少なくない。中古の店舗を丸ごと買わないか、という話も出回るという。

現在のところ、佐藤さんの店舗の近くにコインランドリーは出来ていない。しかし、もちろん今後開業される可能性はゼロではない。そうした時、佐藤さんならどうするか聞いてみた。

「機器などで差別化できないですから、そうなるともう値段勝負ですよね。開業時期を調査して、わかったらそれに向けてチラシをバンバンまいて、100円セールなどを実施することで、新規店の出鼻をくじきます。既存客がいるので、値段を下げても売り上げも極端に減ることはないですが、新規店はつらいはずです。3年分の既存客のありなしは結構大きいです」

今後の新規参入のコインランドリー投資は、こうした中での開業になることを覚悟しておく必要がある。

佐藤さんによると、近年ではコインランドリー投資の人気を受けて、FC側に支払う費用が高値になっているという話もあるようだ。また、FC内で新規店の開業に一定の距離を設ける規定もあるが、その距離が縮まるのではないか、という噂もあるという。

「コインランドリーは運の要素も強いですよね。競合店が開業するかどうかも運ですし、成功するかどうかもわかりません。不動産投資なら、最悪、物件を相場より安く購入しておけば、売ればトントンくらいまでには持っていけますが、コインランドリーはそうはいきません。イチかバチかみたいなところは、本当に怖いな、と思っています」

得る収益に見合った労力か?

確かにコインランドリー経営では、開業当初を乗り切ればある程度の収益を得ることが可能だ。しかし、大儲けできている人は多くなく、さらに常に競合店開業の恐怖にさらされることになる。

今から参入して成功することは、立地のリサーチや経営に多大な労力をかけない限り非常に難しい。果たしてそれは、得る収益に見合った努力だろうか。

最適な立地を確保した上で、自分で店づくりをできる「コインランドリー経営」自体に魅力を感じていない限り、今時点では多くの人の熱が冷めるのを待つほうが得策だ。

(楽待編集部 浜中砂穂里)