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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、不動産賃貸業のお金の流れでよく勘違いされる、所得とキャッシュフローの違いについて、数字を用いながらわかりやすく解説したいと思います。

所得と実際のお金の流れは違う?

物件を購入して不動産賃貸業をスタートすると、翌年に確定申告をすることになりますが、その結果、出てきた利益よりも、実際に残るお金=キャッシュフローの方が少ないというケースがあります。

それは、所得とキャッシュフローを混同して勘違いしているからで、この2つは似ているようで、違うものです。

まず、「所得」とはいわゆる「利益」のことで、税金を計算するために使われます。表にすると、次のような流れになり、これを「損益計算書」といいます。

損益計算書

一方、同じ物件で実際のお金の流れを表す「キャッシュフロー表」は次のようになります。

キャッシュフロー表

項目も数字もほぼ同じですが、2つの表の相違点は、損益計算書が経費として「減価償却費」200万円が入っている一方、「キャッシュフロー表」には、「減価償却費」と代わって「元金返済」250万円が入っています。

その結果、所得が450万円に対して、キャッシュフロー(CF)は400万円と、少なくなっています。

では、なぜ「減価償却費」は、お金が出ていかないのに、経費になるのでしょう?

それは、減価償却費は、もともと建物を購入した金額を、税法上、購入時に一括で経費にすることができず、その金額を建物の耐用年数に渡って、経費化しているものだからです。

なぜ元金の返済は経費にできないのか?

では逆に、元金返済はなぜ借入金を返済してお金が出ているのに経費にできないのでしょう? 多くの人の感覚では、お金が出ていくと、経費になると思っていて、これが勘違いの原因になっています。

では、その違いをわかりやすく解説しましょう。物件そのものだとわかりにくくなるので、一括で経費にできる修繕費で考えてみます。

例えば、屋上防水や外壁の修繕で1000万円掛かるとします。手持ちのお金が少ないので、1000万円銀行から借りてきました。そしてその1000万円を使って、修繕しました。

税金上では、この1000万円を使ったときに経費にしますよね。と、いうことはこの時点で経費にしているわけです。

その後、銀行に対して毎月の返済が始まります。すでに使った1000万円は経費にしてしまっているので、この返済分を経費にすると、経費の二重計上になってしまいますよね。だから毎月の返済は借りたお金を返しているだけで、経費にはならないんです。

デッドクロスとは?

ではここで、「デッドクロス」という言葉について解説しておきましょう。「デッドクロス」とは、日本語訳にすると「死の交差点」という意味となり、不動産投資ではよく使われる言葉です。

ただ、人によってデッドクロスの解釈が違います。

まず1つ目は、デッドクロスを「借入金の元金返済の金額が、減価償却費の金額より多くなる時」と定義しているケースです。

借入金の元金返済は、お金は出ていくのに経費になりませんが、減価償却費は、お金は出ていかないのに経費になりましたよね。

したがって、借入金の元金返済が減価償却費より多くなれば、キャッシュフローよりも利益の方が大きくなって税金がキャッシュフローをさらに圧迫し、酷い場合は黒字倒産になってしまいます。

先ほどの表で見ると、すでに元金返済が減価償却費を超えていますので、デッドクロスが発生している状態です。

一方、2つ目のデッドクロスは「税引後キャッシュフローがマイナスになる時」と定義しているケースです。

先ほどのキャッシュフロー表は、実際には、損益計算書から計算された税金がさらに差し引かれます。

仮に税金が100万円発生したとすると、次のようになります。

税金を考慮したキャッシュフロー表

現在300万円出ている税引き後キャッシュフローがマイナスになる時点が、デッドクロスといわれます。

このようにデッドクロスは、人によって違う意味で使われているケースがありますが、どちらも、不動産投資をする上では把握しておかなければならない、重要なポイントですので、どちらが正しいというわけではありません。

前者のデッドクロスについては、建物の一部を設備と認識した場合に、設備の減価償却費がなくなる時点で発生することが多いです。

一方、後者のデッドクロスは、資金が持ち出しになる、非常に危険な状態になるポイントなので、どのようにして回避するかが重要になってきます。

このように、所得とキャッシュフローは違うものなので、不動産投資を成功させる上では、どちらも両輪で見ていく必要があります。どちらもしっかりと把握して、お金をコントロールできるようにして下さいね。