不動産投資にはさまざまなスタイルがあるが、DIYでコストを削減しつつ、自分の物件の魅力を高めているオーナーが少なからずいる。

ある女性オーナーは、プロに頼むと120万円もかかる工事を、家族でセルフリフォームした結果18万円で済ますことができ、さらに即入居も実現できたという。

しかし、いざDIYをしたいと思っても「難しそう」「どうしたらいいのかわからない」と悩む人も中にはいる。また、「コストばかりかかって、本当にDIYで魅力が上がるの?」と疑問に思う人もいるだろう。

こうした声に対して、女性ならではの視点でセルフリフォームを実践する女性オーナーや、女性DIYアドバイザーに取材した。

DIYの魅力とは何なのか。どのような工夫で賃料アップや成約率アップにつながったのか。2回にわたって考えてみたい。

オーナーのためのDIY学校

7月、都内で開催された「大家さんのDIYがっこう」を取材した。DIYアドバイザーとして活躍する石井麻紀子さんらが主催しており、オーナーや管理会社向けに原状回復や物件のイメージアップのためのDIYの方法を教えている。

この日は「収納」がテーマ。石井さんは「収納は物件を探すときの基準の一つ」と指摘する。収納のあるなしで、最初の部屋選びから外れてしまう場合もあるため、「もともとの収納がない物件はもちろん、収納がある物件でも、飾り棚や、『ここにあったら便利だな』という追加の棚を付けることで部屋の価値をアップさせ、他の物件と差別化を図ることができます」と説明する。

棚づくりの実践前に、壁にものを取り付けるために知っておくべきこととして「壁の種類」や「壁の構造の調べ方」「下地探しの方法」といったことのほか、ネジを止める際の下地として使用する「アンカー・プラグの使い方」などについて、石井さんやDIY専門商社のDIYアドバイザーらが講師となって講義を行った。

講師たちがアンカーの使い方を説明する

「物件の壁が石膏ボードの場合、中が空間になっています。ただ単に穴をあけるだけでは、ねじとまわりのボードごと抜けてしまって、落下の危険性があるので、下地をしっかり作ってあげる必要があります」

参加したオーナーらはメモをとったり、実際にアンカーや石膏ボードに触れたりと、熱心に受講していた。

参加者の1人は「グッズなどの使い方を調べる方法はいろいろありますが、実際にやってみると何が自分にはできないのかがわかりますね」と感想を語った。

10円玉で棚ができる!?

その後、実際に棚づくりを開始。

木材の塗装では、塗料を入れる容器にビニール袋を巻くことで「手持ちの容器を汚さずに、簡単に捨てられるので便利ですよ」といったちょっとした工夫も教えてもらう。

その後、棚の組み立てや壁に取り付けるタイプの棚も作成し、計5時間ほどですべて完成した。

手早く塗るため、いっぺんに多くの木材を塗装

完成した棚

壁に取り付けるキットの間に木材を渡すことで、手軽に棚が出来上がる

壁掛けタイプの棚は、パーツが1つ約1000円。下地がなくても壁に止められる仕様で、特別な道具もいらないという。石井さんは「10円玉でピンの部分をグッと押すだけで止められるので、すごく簡単ですよ」と説明する。

プロに頼むか、DIYするか見極めを

DIYを「物件をうまく運用するための武器です」と語る石井さん。

「物件のリフォームを職人さんにお願いするとき、『こうしてほしい』という要望がなかなか伝わりづらい場合もあると思います。そういう時にDIYの知識があれば、自分でできるところは自分でできるし、職人さんにお願いするにしても、共通言語があるので効率的に伝えることが可能だし、この価格が適正なのか?ということも見えてくるんじゃないでしょうか」

DIYにおいて大事なのは、どこまでを自分でやるかということの見極めだ。

「セルフでやる場合、時間がかかってしまうこともあり得ます。その分空室期間が延びてしまうということを考えれば、プロに頼んだ方が効率がよく、結果的にコストがかからないかもしれません」

オーナー自身のDIYスキルや、施工量によっても異なるが、DIYでやる場合の期間・費用と、プロに依頼した場合の期間・費用の見積もりを比べて、どちらが得かを判断する必要があるという。

家賃1万円アップもかなうDIYの魅力

オーナーがDIYの知識を学ぶことで得られる利益はたくさんある。その実例を石井さんが手がけた物件の中から教えてくれた。

「築27年の木造アパートでも、セルフリフォームで家賃1万円アップして貸し出せた例があります」

この物件では、作業期間は5日間で、約40万円のコストがかかったという。壁面のペイントなどのほか、押し入れのふすまを取り払い、中板を外してオープンスペース化。収納力は損なわずに空間を広く見せる努力をしたという。ロールスクリーンを取り付けてあるので、収納としてだけでなく、部屋の延長として使用することも可能だ。

また、玄関や廊下に時計を取り付けたり、トイレに鏡や小さな棚をつけたりといったさまざまな方法を実践。その結果、物件の魅力が向上し、家賃1万円もの値上げに成功できたようだ。

「もう1つ、築26年の物件は、3LDKで家賃16万円。古いせいもあるのか、半年間、空室が埋まらないとオーナーさんが悩んでいました。そこで、オーナーさんも参加してセルフリフォームしました」

空港が近いというこの物件には、収入の良い外国人が入ることを念頭に置いたリフォームを実践した。もともと和室だった部屋をフローリングにしていた部屋には、置き畳を設置。「和モダン」をテーマに、敬遠されがちな押し入れのふすまを生かして、ふすまにおしゃれな壁紙を貼った。こちらも作業期間は3日程度だったという。

その結果、空室が続いていた部屋でも家賃を下げることなく、すぐに外国人世帯の入居が決まったという。

「大家さんがわざわざ家賃下げて、『頼むから入ってくれ』って言っていたような物件の価値が、DIYによってすごく上がると思います」

簡易補修を自分でやるとどれだけお得?

また、大掛かりなセルフリフォームだけでなく、ちょっとしたことにもDIYを生かすことはできる。色褪せた部分の補修や、壁紙が破れたらその部分の補修といった簡易補修をオーナー自身がすることで、コストカットができるという。

「例えば壁紙が剥がれている部分が一部あったとすると、プロに頼めば『全部貼り替えなさい』と言われることが多いんです。そうすると、結局1万円くらいかかってきます。でも、自分で補修用の壁紙を貼るなどすれば、材料費1000円、2000円程度で直すことができます」

補修キットを使って簡易的に直した部分も、大規模リフォーム時などにしっかりと直せば問題はない。石井さんは、「大家さん自身で簡易補修などを行うことでコスト削減ができ、いざという時、例えば大掛かりなリフォーム工事の時のために、お金を取っておくことができます」とアドバイスする。

また、最近では入居者のDIYを許可する物件も少しずつ増えてきている。

「大家さんにDIYの知識があれば、『ここまでなら許可しますよ』とか話も早いですよね。DIY可物件は、築古のボロ物件でも、建築士や設計士といった人たちが入居したい、セルフリフォームしたいというニーズは結構多いんです。大家さんにしてみればコストをかけずに貸し出せる上に、入居者自身がきれいにしてくれるので、入居者と物件を選んで実践するべきだと思っています」と石井さんは話す。

電動工具は扱いに注意

オーナーがDIYをする上での注意点としては、まずは工具の扱いがあると石井さんは指摘する。

「電動工具を扱う場合には、慎重にしてください。特に電動ドリルで指を切ってしまうと、スパッと切れずに傷跡もギザギザになってしまうし、切れてしまった指も付きにくいです」

電動丸ノコでは、ケーブルも一緒に切断してしまう人なども少なくないと言い、そういった工具の扱い方はきちんと学んだり、最初は指導者と一緒に実践したりするほうがいいようだ。

また、電線をステープルで止めるなど、電気工事士の資格者しか行えない作業もあるため、「壁の中は基本的にはプロに任せるようにしてほしいです」と話す。さらに、「水も躯体をダメにしちゃうことがあるので、触らないことをお勧めしています」という。電気や水道などに関しては自分で行える作業もあるが、失敗した時のダメージが大きい。初心者や、自信がない場合は基本的に専門業者に依頼する方がかえってコスト削減になる場合もありそうだ。

女性目線で「棚を低く」

石井さんはDIYについて、「料理・洗濯・掃除・DIY」と語り、家事の一環だと話す。

そんな石井さんは女性目線で、「例えば洗濯機の上やトイレに棚をつける時には、高さを気にしてみるといいです。背の高い男性のオーナーさんが自分の使いやすい位置に棚を取り付けても、女性からすると、高すぎるということもあるかもしれません」とアドバイス。

DIYアドバイザーとして活躍する石井麻紀子さん

子供などを含めた生活動線も女性の方が把握しているケースが多いため、ファミリー物件では主婦など女性の意見を参考にしてみることも大事だという。

DIYの実践といえど、すべてを自分で行う必要はないし、むしろプロへの依頼と自分でできる範囲をうまく使い分けることが重要だ。その上でDIYを行えば、コスト削減ができる上に、物件の価値を高めることができる。

低コストで物件の価値を高めることに成功しているオーナーの中には、前の入居者が強制退去させられた「汚い」部屋を18万円でセルフリフォームし、募集後即入居を実現させたオーナーもいる。後編へ続く)

(楽待編集部 浜中砂穂里)