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こんにちは! 不動産鑑定士、不動産投資コンサルタントの浅井佐知子です。

今年の夏は早々と暑さがやってきましたね。でも3年後の夏はもっと暑くなりそうですよ。東京オリンピックの開催の年だからです。まだまだと思っていたのに月日の経つのは本当に早いです。

私は不動産投資スクールを開催していますが、投資家さんから、「2020年の東京オリンピック後は、本当に不動産が下がるのでしょうか?」という質問をよくいただきます。

そこで今回は、「東京五輪後、不動産価格は本当に下がるのか?」というテーマで書いてみたいと思います。

東京都の中古マンションの価格推移

下の図はレインズが毎月発表している東京都の中古マンションの単価をグラフにしたものです。データは2010年5月から2017年7月発表までの数値を採用しました。

このグラフを見てわかるように、マンションの単価は2012年9月を底に、現在までほぼ右肩上がりで上昇しています。2011年の大震災の後、大きく値下がりした価格は、いわゆるアベノミクス効果を契機に値上がりし続けているのです。

また、東京五輪開催決定後は特に、湾岸エリアなど都内のマンション相場が値上がりしたのではないか? という指摘もあります。これは、「会場の約6割と選手村が湾岸エリアに整備されることをにらんだ動き」が原因であると、巷では言われています。でもそれだけではなく、タワーマンションブームが起きたことも一因だと思います。

港区、中央区、千代田区などのいわゆる都心3区には、マンションデベロッパーが開発できる大きな土地はそもそも残っていなかったのです。新たに建てるとなると、勝どきや虎ノ門のように大規模な再開発事業がらみになってしまいます。

それでは時間がかかりすぎということで開発業者が目に付けたのが、湾岸エリアです。倉庫用地など、まだ大規模な土地がたくさん残っていました。これが、湾岸エリアに立て続けにタワーマンションが建った理由の一つだと思います。

そして、軸足を合わせるかのように2012年以降、相続税値上がり対策としてのタワーマンション節税と外国人によるタワーマンション買いが始まりました。外国人がタワーマンションを購入したのは、「将来の値上がり益」を見込んだものです。

そこにはやはり、「2020年のオリンピックに向けてのマンションの値上がり」という思惑があったことになります。中古マンションの値上がりとともに、新築マンションの単価も上がりました。

以上から、都内のマンション価格が上昇したのは、

・アベノミクス効果

・タワーマンション節税

・外国人によるキャピタルゲイン狙いの買い

・そして、マイナス金利の導入による空前の低金利 ―の影響です。

「2020年のオリンピックに向けての上昇」だけが原因ではないのです。

では次に、過去、国内外ではオリンピック前後で不動産価格はどのように変動したのかを見ていきます。

○前回の東京オリンピック

まず前回の東京オリンピックが開催された1964年はどうだったのでしょう?

当時は、オリンピック開催のために新幹線や高速道路、国立競技場、日本武道館などの競技施設が整備され、建設需要が高まりました。また、オリンピックを見るためにテレビの需要も高まり、好景気になりました。

オリンピックが終了すると建設需要やテレビなどの需要も一段落し、いわゆる昭和40年不況がやってきましたが、次の年には底を打ち、1970年度まで二桁成長を続けました(いざなぎ景気)。

地価も上昇しましたが、一般財団法人日本不動産研究所によると、「東京 23区の地価上昇率が突出して高かった訳ではなく、オリンピック招致が東京の地価に及ぼした影響という意味では、影響は小さかった」ようです。

○ロンドンオリンピック

ロンドンオリンピックは、2012 年の夏季オリンピックでした。2012年といえば、リーマンショックが起き、世界的に金融不安から回復していない時期です。

ニッセイ基礎研究所の「基礎研レポート」によると、「オリンピック開催翌年となった 2013 年も不動産の取引量は前年比+39%で過去 3 年より高い増加率となった」ようです。世界的に不動産の価格が下がり、取引量が減った時期に、ロンドンはオリンピックが終わった後、価格、取引量ともに増加したことが指摘されていました。

ロンドンオリンピックが将来に向けた都市形成の通過点であり、世界的なイベント開催を経て将来に続く都市開発を行ったともいえる」としていました。

東京五輪後、不動産価格は本当に下がるのか?

以上見てきたように、過去の東京オリンピックでは不動産価格に特段の変動は見られず、ロンドンオリンピックでは、開催後に上昇しました。このふたつの事例を見る限り、オリンピックが原因で価格の上昇、下落はなかったものと思われます。

ただし、私は2020年以降は以下に述べることが要因となって、大きな下落ではないとしても、一旦不動産の価格は下落すると思っています。

○時間的な要因

2012年から上がり続けている不動産ですが、2020年までこの傾向が続くと、8年になります。「日本の不動産市況は7年サイクル」という説もあるようですが、それは別にしても時間的なことを考えると、そろそろ下落に転じる時期でもあります。

○外人を中心とした、利益確定

中国をはじめとした外国人が日本の不動産を購入しているのは、インカムゲイン目的というよりはキャピタルゲイン狙いです。「東京オリンピックまでは不動産は上がるだろう」という思惑の元に購入しているため、オリンピック前後でいったん利益確定をしてくるはずです。そのため、売り物件が増えて価格が下がることが考えられます。

○2022年問題

オリンピックとは全く関係ないのですが、忘れてはならないのが、「2022年問題」です。これは、「生産緑地」に係わることです。生産緑地法が1991年に改正されてから30年が経つ2022年に、生産緑地の指定が解除されて宅地化が進む可能性が非常に高い、と言われています。

市場に大量に土地が供給されることにより、「需給バランスが崩れ地価は下落する」というものです。都内には「こんなところに?」と驚くような駅前立地が生産緑地のケースも多々あります。マンションやビルなどが多数建てられ、価格下落、賃料下落に結びつく可能性もあります。

最後に

景気も株も為替もそして不動産も、循環サイクルがあります。ずっと上がり続ける景気や相場はないのです。そのきっかけとなるのが2020年の東京オリンピックかもしれません。

購入を検討されている方はチャンス到来といったところでしょうか? ただし、融資が引き締まる可能性もあるので、ある程度の現金を貯めておくのも戦略として良いと思います。来たるべきチャンスに向けて、用意をすることは重要だと思います。