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不動産投資を行う際の手法はさまざまだが、そのうちの一つに「競売」での物件購入がある。

競売物件は市場価格より安くなる傾向にあり、中には「相場が900万円の戸建てを約360万円で落札した」ケースや、「土地値だけで1200万円の戸建てを、540万円で落札した」事例もある。安く手に入れられるため、利回りも20%を超えるケースが多い。

一方、競売というその特殊性から、物件を手放すように脅迫電話を受けたオーナーがいるなどのトラブルも。競売という投資手法について、6人のオーナーにメリット・デメリットを取材した。

相場より安く…利回り20%超

兵庫県に競売で落札した2つの物件を所有するIさんは、競売のメリットを「安く購入できることです」と語る。1つは1Rの区分マンションで、落札価格は約330万円。相場は約500万円のため、相場の7割程度の価格で購入できた。現在は5万3000円で貸しており、利回りは約20%となる計算だ。

もう1つは築20年の戸建てで、こちらは相場が約900万円のところを約360万円で落札できた。ただ、この戸建ての購入には少し勇気がいったと話すIさん。

「延床面積が約90平米あり、『仮に中の状態がダメだったら、リフォーム費はいくらかかるのかな…』ということに悩みました。競売で入札を入れる際には、リフォーム費まで込みで考えて、それを織り込んでも失敗しない額を入札しないといけません」

案の定、「中が結構傷んでました」というIさん。クロスや床のクッションフロアを全て貼り替え。畳も交換し、お風呂の浴槽、キッチンなども入れ替えた。リフォームには150万円程度かかったという。

その上、庭には人の高さほどの雑草が生えていたため、自分で1週間ほどかけて引抜き、砂利を敷き詰めた。

それでも、現在この物件は9万円で貸しているため、リフォーム代込みでも利回りは約21%と好調だ。落札したのは4~5年前で、今年の12月には回収が終わるという。

Iさんは今後も競売で物件を買い進めたいと考えているというが、「ここ最近は価格がかなり高騰しています。1Rで500~750万円の物件もあり、普通に買った方がいいんじゃないかという物件も多いです」と話す。

転売目的の業者のほか、個人投資家が増加したことで入札の本数自体も増えているといい、「かなり買いづらいですね」というのが実感のようだ。

「競売はギャンブル」

九州地方で不動産投資を行うAさんは、昨年4LDK築6年という戸建てを競売で手に入れた。落札価格は900万円。Aさんはこの価格について、「面積の違いもあるので一概には言えませんが、同時期に売りに出ていた隣の戸建ての価格は1500~1600万円でした」と話す。家賃8万円で入居者を入れ、利回りは約10%だ。

この物件の購入には満足しているAさんだが、一方で「競売はギャンブルの要素もあると思います」と語る。

Aさんには、以前競売で狙っていた築30年ほどの物件があった。外観は綺麗で、そこまでリフォームの必要性も感じなかったという。

この物件は、結局、不動産業者が500万円で落札。Aさんは残念に思っていたが、「縁があって、その物件の中を見させてもらう機会があったんですが、実は中に傾きがあったことがその時判明しました。修繕にいくらかかるのかわかりませんが、結果買えなくてよかったな、と思っています」

また、前入居者とのトラブルのリスクを極力避けたいと考えているAさんが競売で狙うエリアは、基本的には「自分がよく知る土地」に限定している。その上で周囲の家に聞き込みをしたり、物件を調査したりということを何度も行っている。

900万円で落札した戸建てについても、「何度も現地を訪れて、電気がついていないことや、メーターが回っておらず、空き家状態になっているのを確認しました。これならトラブルのリスクは低そうだ、と判断して入札したんです」という。

自宅に脅迫電話…「お前が余計な事をした」

しかし、いくら調査を重ねても起こってしまうトラブルもある。中国地方のある都市で競売物件を落札したKさんが体験を明かしてくれた。

「10年ほど前になりますが、築35年くらいの戸建て物件を落札したんです。最低落札価格に少し上乗せした程度の、約300万円で購入できました。相場はおそらく600万円ほどだったんじゃないかと思います」

それまでの1年間ほど、15件ほど入札してもまったく落札することができなかったというKさんだったが、ようやく相場の半値で戸建てを手に入れることができた。

しかし、数日後Kさんのもとに1本の電話がかかってきたという。

「『お前が落札した物件を手放せ』という脅迫の電話でした。『市内の不動産業者には、この物件は入札をしない様プレッシャーをかけていたのに、素人のお前が入札した。余計なことするからこんな事になった」と言われました」

電話をかけてきた人物の正体はKさんが落札した物件の所有者の親戚。暴力団関係者と思われた。1年かけてもなかなか落札できなかったKさんが安価に物件を落札できたのは、こんなウラがあったからだったのだ。

次の週末、この人物と会ったKさんは、その場で売却を決めたという。

「怖かったからです。自分1人だけならいいですが、家族がいますので…」
ただ、売却価格は購入価格に2割程度上乗せできたという。Kさんは「いい勉強にはなりました」と語った。

Kさんもまた、最近では競売物件の価格が1.5~2倍程度高騰していると感じている。最近は競売ではなく、相続されたが手付かずのままになっている物件などを狙っているといい、「相続した人が早く手放したいから、という理由でかなり安い価格で買える気がしています」という。先日も、使われていなかった600坪の土地と農地を10万円で入手したばかりだと述べる。

土地値の半値で2棟手に入れた

Dさんは、関東地方に競売で落札した3つの物件を所有している。

「1つは2棟つながったテラスハウスの、片方だけというちょっと特殊な物件でした。土地値は600万円ほどで、結局430万円ほどで落札しました。もう1つも2棟つながった物件でしたが、こちらは2棟丸ごと。1棟270万円ほどでしたので、計約540万円で手に入れました。土地値は1200万円くらいのようなので、いい買い物をしたと思います」

残る1つは1棟アパートで、約2600万円で落札した。いずれも満室想定で利回りは20%以上となっている。こうした状況から、Dさんは競売のメリットを「相場よりも安く買えることです」と断言する。

一方で、入居者とのコミュニケーションには手間がかかったとDさんは述べる。

「アパートを競売で手に入れる場合、入居者の名前などある程度の情報はわかりますが、その人がどんな人なのかまでは資料ではわかりません。私のアパートにいる入居者の1人は家賃滞納グセがあったんですが、そういうことは知ることができませんでした。また、別の入居者はクレームが多い人で、駐車スペースの問題など本当に些細な事で怒鳴り込んできたり、他の入居者に迷惑をかけたりしたこともありました」

こうした入居者に対して、数カ月から半年ほど時間を費やして、コミュニケーションをとったDさん。家賃滞納に関しては管理会社の変更も行ってきめ細かく対応してもらうようにした。アパート経営において入居者とのトラブルもつきものだが、競売の場合、仲介会社や前のオーナーとのやり取りが発生しないため、問題のある入居者がいるリスクの可能性は高まってしまう。こうした点は、デメリットの1つに挙げられる。

だが、仲介会社が存在しないので「仲介手数料がかからないことはいいですね」と利点を話すDさん。

さらに、競売で物件を取得した際には、固定資産税は前の所有者が支払うケースがほとんど。Dさんは「2つ目の物件は1月に落札したので、その年はまるまる固定資産税が浮きました」と述べた。

こうした細かなコストが削減できる点も、競売のメリットの1つのようだ。

熟慮できる反面、手間がかかる

女性オーナーのYさんも、今年、群馬県の1棟アパートを競売で落札した。価格は約3500万円で、表面利回りとしては16%ほどだという。まだ手続き中だが、周辺相場の家賃と同程度の4万円ほどで貸し出そうと計画中だ。Yさんは、競売の良い点として、買い付け順など時間の競争にならないことを挙げる。

「私は現物を見ないで買い付けを入れるのは怖いと思ってしまうのですが、通常の売買では、現物を見ていたら、いい物件の1番手をとることはなかなか難しいです。その点、競売なら公告されてから入札するまでに数週間の期間があることが多いので、その間に現地調査にも行けますし、ふさわしいと思われる入札額や、起こり得るリスクについて検討する時間をとることができます」

だが、その分自分でやる手間が大きくなることはデメリットでもある。

「裁判所に資料を見に行ったり、登記簿を取り寄せたり、不動産取得税はいくらかかるのか計算したり…普段は仲介会社に頼っている部分を自分でやる必要があるので、時間の余裕がないと厳しいと思います。裁判所や役所は平日の昼間にしか開いていないですし、私の場合は物件が遠方だったので、その時間もとられました」

2002年からはインターネット上で競売情報や資料を手に入れることもできるようになったが、必要な手続きはそれだけでは完結しない。

また、競売には代行業者も存在するため、多忙なサラリーマン投資家は活用する人も多い。ただ、業者には代行手数料や成功報酬、場合によっては明け渡し成功報酬などを支払う必要があり、Yさんは「落札額の6~10%くらい持っていかれることもあるという話を聞きました」と話す。仮にYさんが落札した3500万円のアパートで代行業者を利用していたとしたら、10%なら更に350万円を支払う必要があるということだ。Yさんは「逆に損してしまうような気もしています」と述べる。

代行業者を活用すれば、時間的な制約を受けずに競売に参加することができる。

ただ、その金額を高いと見るか安いと見るかはその物件の価値にもより、仮に支払う額が大きくなれば、通常の売買で買ったほうが得する場合もある。その上、これだけの手間をかけて入札したとしても落札できない可能性もある点には、十分留意したい。

公売で土地を落札

官公庁が差し押さえた物件を換価する「公売」という方法を利用したHさんは、長野県の土地を落札した経験がある。

「別荘地の一角の、400平方メートルほどを約140万円で落札しました。このあたりは1平方メートル1万円くらいが相場なので、3分の1程度の値段で買えたことになります」

しかも、すでに官公庁が差し押さえているため前の所有者とのやりとりなどもなく、淡々と手続きを進めるだけでよかったというHさん。「上物があるとトラブルが起こることもあると聞くので、そういう意味では土地だけでよかったですね」

ただ、この土地の使い道は現在検討中。「まとまったお金ができれば上物を建てるのもありですが、周りには民宿とかも多いですし…もしかしたら転売する方が儲かるのかもしれないとも思っています」

公売では競売に比べて価格が低くなりにくいが、物件を選べば安く手に入れることも可能だ。

個人投資家の参入も増え…

取材をした結果、競売で安く物件を手に入れられた上、時間的な余裕を持てたというメリットを享受しているオーナーが多かった。

しかし、そのためには現地調査を重ねたり、役所を訪れたりといった手間も大きい。さらに、何度調査をしたとしても、前の所有者らとのトラブルが起こる可能性も決してゼロではない。

競売に参加する際には、こうしたトラブルが起こることを念頭に置いた上で、仮に最大限の修繕をしたとしても損をしない金額で入札する必要がある。

IさんやKさんが言うように、近年では不動産業者のほか個人投資家の参入も増え、落札価格は高騰傾向にあると見られている。

「競売=安い」という思い込みは捨て、本当にこの金額で落札した時に儲かるのか?ということについて、熟慮を重ねた上での参加が求められる。

(楽待編集部 浜中砂穂里)