家賃滞納や賃料増額…賃貸経営を行うオーナーにとって、こうした問題をめぐって入居者とやり取りする可能性は高い。なんのわだかまりもなく解決すれば問題はないが、揉めた結果、訴訟に至らざるを得ない場合もある。

それぞれの事情から、提訴に踏み切った経験のある2人のオーナーに、その体験を取材した。利益を取るためには、どのような対応をすることが重要なのだろうか。

2万円の賃料増額を請求

現役銀行員であり、不動産投資家でもある藤哲明さんが、これまでに経験した訴訟の詳細を明かしてくれた。1件目は2014年、東京23区内に所有する区分マンションで賃料増額を求めた訴訟だ。この物件ではサブリース契約をしており、入居者の賃料は7万2000円、保証賃料は6万7000円だったという。

「しかし、山手線の駅から近く、築年数も10年ほどの物件です。周辺の相場は9万円から9万5000円ほど。マーケットに比べてだいぶ安い賃料だったんです」

もともとサブリース契約のため、相場と同程度の賃料が得られるわけではない。しかし、それでも賃料が安すぎると藤さんは賃料増額を請求することを決意。最終的に減額されることを想定して、入居者の賃料の9万5000円(保証賃料9万円)への増額を求めた。万が一入居者が増額に応じない場合には、立ち退き要請も念頭に入れたという。

まず藤さんが行ったことは、賃料増額について入居者に通知したこと。ここで入居者が要求をそのまま飲めば何の問題もなかったが、そうはいかなかった。入居者が増額に応じなかったため、裁判所に調停の申し立てを行うこととなった。賃料増額については、原則として訴訟の前に調停を行わなければならないと法律で定められている。この調停においても解決に至らず、とうとう簡易裁判所に訴訟を提起することに。

藤さんが提出した実際の訴状

しかし、実際訴訟に入った段階で、入居者に変化が訪れた。

「私も入居者の方も弁護士を立てていなかったので、調停も訴訟も平日昼間に裁判所に行かなくてはなりません。それが月1回くらいのペースなので、特にサラリーマンなどには本当に負担なんです。こうした事情から、入居者も早々に決着をつけたいと思ったんでしょう。判決を得る前に、和解できました」

最終的には、入居者が立ち退くことで合意できたという。そのためには立ち退き費用の支払いや、1カ月分の家賃免除など10万円以上の一時的な支出はあったというが、新賃料で新たな入居者を入れることができれば、すぐに回収できる範囲だった。藤さんは「現在は、保証賃料8万3000円で入居者を入れることができています。1万6000円のアップですね。十分だと思います」と話す。実際、7カ月ほどで回収できたという。

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