問題はどこで融資を受けるか。当時の年収は390万円だった。「ファイナンスの知識もなく、どこで、どうやってお金を借りればいいのか全然分からなかったんです」。そんな時、知り合いの投資家から、日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」の存在を聞いた。

女性、若者/シニア起業家支援資金

事業開始後おおむね7年以内の女性や35歳未満の若者、55歳以上のシニアを対象に、日本政策金融公庫が起業時の設備資金や運転資金を低利で融資する制度。融資限度額は7000万円(うち運転資金4800万円)。

 

「最初は公庫の存在自体知りませんでした。審査のために『創業計画書』というものを作らないといけないと聞いて、『何それ?』ってネットで調べて…」

創業計画書とは、いわば事業を開始するために必要なことを記したビジネスプラン。創業の動機や本人の経歴、必要な資金と調達方法、事業の見通しなどをまとめた書類で、融資を受けられるかどうかの大きなポイントになる。

「とにかく相手の『不安要素』を取り除くことを意識して書きました。あらかじめ質問を想定して、一つ一つ、相手が自分に感じるであろう懸念について、なるべく具体的な数字を用いて払拭するようにしました」。文面を細かく修正しては不動産会社の担当者に確認してもらうことを繰り返し、二人三脚で完成させた。「1人では絶対に無理だったと思います」

実際に提出した創業計画書

実際のプレゼンでは、修繕リスクについて「リフォーム会社に勤めていたので、知識もあるし業者も手配できます」と力を込めた。当時はすでに結婚していたが、「子どもができても仕事を続けるし、もっと物件を増やして不労所得だけで生活が回るようにしていくから大丈夫です」と必死に訴えた。「この部分だけは未確定要素が多くて難しかったんですが、『これから見ててよ』という気持ちで熱意を伝えました」

担当者の反応はドライだった。「何を言っても無反応で、こちらを見ずにパソコンをカチカチ打つだけ」。それでも心は折れなかった。豊富な営業経験が背中を押し、「自分は試されているんだから、おどおどしたら負けだ、と気合いを入れ直しました」。

営業の仕事で培った論理的な説明と、賃貸経営に対する熱い思いが実り、金利1.2%、返済期間15年で3000万円の融資を受けることができた。自己資金1000万円と合わせて、念願だったアパートが自分のものになった。

購入時は1室空室があったがすぐに埋まり、その後も入居状況は好調。空室が出ても1カ月たたずに埋まっていたが、今年は珍しく4月末に退去が発生した。「3カ月ほど空いたのでさすがに焦りました。管理会社に『外国人でも』と伝えたら、8月になって20代前半のイタリア人男性が入居してくれた。お洒落に敏感なイタリア人に選ばれたのはうれしかったです」。現在も満室が続いている。

今年1月には、幡ヶ谷駅から徒歩10分、築25年の店舗付きアパートも購入した。6750万円で、ノンバンクから金利2.5%で6000万円の融資を受けた。この2棟目も知人の投資家から紹介された未公開物件で、利回りは7%。「修繕履歴がしっかりしていて、外壁を塗り直したのも最近だったので、古くても大丈夫だと思いました」。退去が出た後のクロス張り替えや塗装の変更は、管理会社や工事業者任せにすることなく、自らの仕事の経験からデザインについて指示を出している。

別の区分1室を含めた月間家賃収入は70万円で、手残りは25万円。当面は現在の10倍、計100室まで規模を拡大することが目標だ。

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