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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。お金を残す不動産投資コラム。今回は、不動産を売却した時に掛かる諸費用や税金について、事例を見ながらわかりやすく解説したいと思います。
不動産を売却する時には、どんな費用が必要か?
ここ最近、不動産価格が高くなっていて、一昔前に不動産を購入した方が、その不動産を売却するケースも出てきていますね。
では、不動産を売却する時には、どんな費用が必要になるのでしょう? 1億円で不動産を売却した事例をもとに、考えてみましょう。
○仲介手数料
不動産を売却する時、その売却依頼した不動産会社に払う手数料です。
手数料率は3%+6万円なので、1億円だと、消費税まで含めて330万4800円必要となります。
(売却価格1億円×3%+6万円)×消費税1.08=330万4800円
○印紙税
不動産を売却する時には買主と不動産売買契約書を交わしますが、その契約書に印紙を貼って、消印する必要があります。印紙税額は次の表のように、金額によって異なります(平成30年3月31日まで)。
契約金額 |
本則税率 |
軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの |
400円 |
200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの |
1000円 |
500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの |
2000円 |
1000円 |
500万円を超え 1000万円以下のもの |
1万円 |
5000円 |
1000万円を超え 5000万円以下のもの |
2万円 |
2万円 |
5000万円を超え 1億円以下のもの |
6万円 |
3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの |
10万円 |
6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの |
20万円 |
16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの |
40万円 |
32万円 |
50億円を超えるもの |
60万円 |
48万円 |
印紙税は通常、売主・買主1通ずつ作成しますが、どちらか一方を原本、もう一方を写しとすると、印紙税は原本のみが対象となるので、これを売主・買主双方で分ければ、印紙税を節税することが可能です。
○抵当権の抹消費用
売却する不動産を担保に借入をして抵当権を設定している場合、その抵当権を抹消するための費用が必要となります。
抵当権抹消に必要な登録免許税は、不動産1つにつき1000円で、司法書士に依頼する場合は、司法書士費用が別途掛かります。
○銀行への違約金
銀行からの借入金を固定金利等で借りている場合は、契約の内容によって違約金が発生する場合があります。
不動産の売却時に掛かる費用の一つとして、忘れてはならないのが税金です。税金は不動産売却時の売却益に対して掛かるもので、個人で売った時の売却益のことを譲渡所得と言います。
でも、この不動産売却時の税金で、よく勘違いされていることがあります。
例えば、残債が7000万円ある物件を1億円で売却し、諸経費が300万円だったとすると、売却時の数字は次のようになります。
売却価格1億円-残債7000万円-諸経費300万円=2700万円
そして、よくある勘違いは、この2700万円に対して税金が掛かると思われていることです。
もちろん、残債と簿価が同じ数字であれば、税金上の利益も2700万円になりますが、簿価が違えば、もちろん税金が掛かる利益も変わります。
ここで簿価とは何なのかといいますと、簡単に言うと、物件を購入した金額から、売却までの減価償却費を引いたものです。
仮に、売却時の簿価が6000万円であれば、
売却価格1億円-簿価6000万円-諸経費300万円=3700万円
となって、勘違いしていた金額2700万円よりも、1000万円も多く利益が出てしまうことになるわけです。不動産の売却益=譲渡所得とは、売却価格から残債を引くのではなく、簿価を引くということを覚えておいてください。
短期と長期で違う税金
では、不動産を売却した時の売却益=譲渡所得にはどれぐらいの税金が掛かるのでしょう?
まず、個人で不動産を売却して利益が出る場合、短期と長期で税率が変わります。短期とは、不動産を購入してから5年以下(1月1日を5回を経ずに売却)、長期とは不動産を購入してから5年を超えて(1月1日を5回以上経て)売却した状態です。
・短期譲渡所得(5年以下):売却益に対して39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)の税金。
・長期譲渡所得(5年超):売却益に対して20.315% (所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金。
したがって、先ほどの事例のように売却益が3700万円発生している場合は、次の金額の税金が掛かります。
・短期:3700万円×39.63%=1466万3100円
・長期:3700万円×20.315%=751万6550円
短期か長期かによって、およそ2倍ほど税金が変わるんですね。
一方、法人は所得によって多少変動しますが、短期でも長期でも、1000万円ぐらいの所得であれば売却益に対して33%ぐらいの税率です。
そうすると、購入したい物件を、短期で売却予定の場合は、法人で買う方が節税となり、長期で売却予定の場合は、個人で買う方が節税となるわけです。
もちろん物件所有時の所得税・住民税率と、法人税率のことも考えなければいけませんが、いつ売却するのかによって、戦略が変わることも知っておいてくださいね。
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