区分を買い進めた後、アパートにシフトしていったことは前回のコラムでお話しました。今回はその次に購入した物件をテーマにお話します。

従前の投資基準には沿わないこの物件。そのような物件を購入するに至る経緯と、その後味わうこととなる苦い経験、果ては自分自身でビジネスを興すまでの紆余曲折を紹介しましょう。果たして、災い転じて福となすことができるのでしょうか。

初の1億円超物件

私の投資スタイルは利回りを最重要視するものでした。投資経験が少ないうちは、リスクを減らすために現金または比較的少額の借り入れで購入できる2000万円程度の物件を投資対象とし、20%の利回りを目指すというものでした。

しかし、人間というものは煩悩の塊のようなもの。私もその例外ではありませんでした。実績を積み重ね、成功体験に対する興奮を覚えるにつれて、より大きなリターンを狙いたいという思いが次第に強くなっていきました。

そこで私は、東京近郊で比較的資産価値の高い利回り10%超の物件の購入を検討するようになりました。資産価値が高い、いわゆる高積算物件であれば、高額な物件であっても融資を引くことはそれほど難しくありません。

仮に1億円の物件を購入したとしましょう。10%の利回りでも、この物件からは年間1000万円もの家賃収入が得られることになります。1億円を期間25年・金利3.5%(元利均等)という条件で借りた場合の返済額は月50万円、年換算で600万円となり、年400万円ものキャッシュフローが得られることになります(便宜上、固都税や経費などは考慮していません)。

それまでの私の投資スタイルの典型である、日本政策金融公庫から期間10年・金利1.8%(元利均等)で2000万円の融資を受けて利回り20%・2000万円のアパートを購入した場合を考えてみましょう。年間400万円の家賃収入が得られる一方で、返済額は220万円にも上り、年間のキャッシュフローは180万円ということになります。

また、巷には空前の超低金利時代が到来しています。金融機関は金利0.5%・3000万円の住宅ローンでチマチマ利子を稼ぐよりも、より多くの利子を稼ぐことができる大型の案件への融資に積極的に取り組むようになっていたことも、大型物件購入へと考えが傾いた理由のひとつだったと思います。

そう考えるようになってしばらくして、希望の条件に近い次の物件が目に留まりました。

所在地

埼玉県草加市

価格

1億5800万円

利回り

10.25%(表面)

築年月

1984年10月

1階が店舗(6区画)、2階と3階に住居が6室ずつという構成の鉄骨造のマンションです。2階部分は貸事務所でしたが、売却を機に住居へコンバージョン(用途転換)している最中でした。そのため、2階部分の内装と設備は新築同様ですが入居者はゼロです。空室は他に店舗2区画と3階住居1室、その時点での空室率は50%と、入居率の面では決して優秀とはいえませんでした。

とはいえ、入居率が低い物件には慣れています。そのため、購入時の空室の多さには抵抗がありませんでした。むしろ、購入時に空室が多いとリフォーム・リノベーションしやすく、従前よりも高い家賃で貸せる可能性も生まれますし、古い設備を交換したり事前に修繕をしたりしておけば、後の不具合の予防にもつながります。私にとっては、購入時の空室はむしろ大歓迎です。

ただひとつ心配なことは、店舗付き物件を手がけるのはこれが初めてだということ。空き店舗をいかに埋めるかが投資の成否を握りそうだと感じました。しかし東京からほど近い場所で利回りもまずまず、購入に向けて話を進めることにしました。

手続きが進み、融資は仲介会社が斡旋する某金融機関から受けることになりました。その金融機関とは、不動産投資業界に名を馳せる「S銀行」。金利が高いことで知られていますが、その一方で高額の融資を比較的容易に引くことができることでも有名な銀行です。不勉強だった私はその手軽さというメリットを享受した代わりに、異常に高い金利の支払いを強いられる代償を負ってしまったのです。これは大きな失敗でした。その後数年に渡って、この銀行との金利引下げを巡る攻防が繰り広げられることになります。

引渡し後間もなく、3階で水の供給に問題が生じる可能性が発覚しました。2階は以前事務所だったため、水を使う必要がありませんでした。その事務所を住居へコンバージョンしたため、3階の給水能力が不足する恐れが出てきたのです。

当マンションの各戸への給水は、屋上の高架水槽に貯められた水を下の階に落とすことで行われます。このような仕組みを利用した給水システムでは、下階に比べて上階の水圧は弱くなってしまいます。1階や2階で多くの水が使用されると、3階に水を供給するのに十分な水圧が掛からなくなってしまい、最悪の場合、水が出なくなってしまうというのです。検討した結果、2階のみに水の供給を行う専用の管を水道管本管から直結する工事を行うことに

続いても水にまつわるトラブルです。ナント! 汚水桝から汚水があふれていると1階の歯医者さんから連絡を受けました。下水に排水しきれない汚水が汚水桝からあふれ出しているようです。想像したくない状況ですが、大家としては一刻も早く対処しなければなりません。その時は、とりあえずあふれた汚水を洗い流してその場をしのいだのですが、根本的な原因を取り除かない限り、再発のリスクも残ります。

案の定、数日後汚水が再び噴出してしまいました。業者によると原因は特定できないとのこと。ただ、地震でズレてしまった配管のつなぎ目に固形物が引っ掛かって、そこが詰まっているのではないかとの見立てでした。

原因を断定するためには、内部にカメラを挿入して確認するしかありません。そこで、売主に相談してみることにしました。宅建業者が売主だったため、瑕疵担保責任を問うことができたのです。その結果、売主が加入している保険で対応してもらえることになり、調査の結果、油が固まったものが詰まりの原因であることが判明しました。テナントに飲食店が入居している物件ではこのような問題が起こると、ひとつ勉強になりました。

埋まらないテナント

さて、最大の問題は空き店舗の入居が決まらないことです。引渡し後1区画が退去、せっかく決まったテナントも借主の事情により短期間で退去となってしまい、空き店舗の数は購入時よりも多い3区画に。

前章のような問題は最悪お金で解決することができますが、空き店舗問題はそうはいきません。不動産会社に頼るばかりではなく、自分でも店舗候補物件を募集しているお店や会社を探し、条件を満たすものには手当たり次第連絡したりもしてみました。しかし、借り手はなかなか見つかりません。

そのうち、空き店舗を活用して自分自身で何か事業を始められないか? 店舗リーシングの経験がない私は次第にそう考えるようになりました。しかし「何をやるか?」――。それが大きな問題でした。

「うちもロードサイドだし、人を雇う必要もない。コインランドリーならできるのでは?」

運転中、道路沿いにたたずむコインランドリーを見て、とっさにそう思いました。善は急げということで、帰宅後に早速コインランドリーの開業について調査を開始しました。

リースで機材を揃えれば少ない初期投資で始められ、50~80万円ほどの売上が期待できるようです。悪くないと思った私は、コインランドリーの機材製造・販売を手掛ける会社に立地調査と売上高のシミュレーションを依頼してみることにしました。その結果、次に挙げる3点が評価され、ロケーションはまずまずとの結果をいただきました。

1.コインランドリーの商圏といわれる半径2km以内の人口密度が高いこと

2.片側1車線ずつの中央分離帯のない幹線道路に面していること

3.複数台止められる駐車場を有していること

そして、査定結果は一定の説得力が感じられるものでした。次に検討すべきは売上のシミュレーションです。業者が提出したシミュレーション結果は月商56万円というもの。1日2万円近い売上を見込む内容のものでした。

1回数百円で利用できるコインランドリーで2万円を売り上げるのは大変だと思いませんか? 私は直感的にそう感じました。冷静になって考えれば考えるほど、そう思えて仕方ありません。

そこで、独自のシミュレーションをしてみることにしました。客単価を500円とすると、1日1万円を売り上げるのに必要な来店人数は20人ということになります。これなら達成可能だと考えました。リースした機材は7年後に再契約することになり、再契約後のリース料は従前の1割に減額されます。それならば投資する価値はあるのではないか? という結論に至りました。

店舗の造作に必要な600万円は日本政策金融公庫で調達。物件購入から半年後、空き店舗を利用した自主運営のコインランドリーを開店する運びとなりました。

その数カ月後、残り2区画の空き店舗のうちひとつは、300万円余りを投じて大型バイク10台を収納できる屋内型バイクガレージを整備。セキュリティーの高さはもちろんのこと、トイレや専用ロッカー、洗車用のコンプレッサーなどの設備が好評で、おかげさまで現在は満車で稼動しています。

草加市マンションの現状

コインランドリーの月平均売上高は36万円ほど(昨年実績)。この売上高では店舗の家賃に相当する利益はまだ上げることができていません。しかし、開店して5年間はコインランドリーの売上は増え続けると言われており、当店も年々売上が伸びてきています。また、リースの再契約を結んだ後の8年目以降は、利益が大きく増えることになります。

満車となったバイクガレージでは、月10万円の売上が期待できます。解約の頻度も低く、もし解約があったとしても複数台が同時解約となることは極めてまれで、安定した収益を見込むことができる魅力的なビジネスです。バイクガレージの運営を開始して間もなく、残りの空き店舗1区画は知人へ賃貸することとなり、これでめでたく満室を達成です。

残念ながら、今夏の退去で現在2室が空室となっています。常に満室経営というのは難しいものです。ここは気持ちを切り換えて、秋の繁忙期に入居していただくべく室内装飾や共用部分の清掃など、大家としてできる限りの努力を重ねていくしかありませんね。