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既婚の不動産投資家であれば、配偶者の協力が得られるかどうかは投資成功の大きなカギの一つになる。では、その配偶者と離婚の危機に陥った場合、共に賃貸経営をしてきた物件は一体どうなってしまうのか? 実際に離婚トラブルの渦中にいる2人の投資家の実例を基に、弁護士の福岡寛樹氏がポイントを解説する。

マンション投資で連帯保証人になってくれた妻と離婚したい

離婚したら投資用の区分マンション・共担に入れた自宅はどうなる?

K・Tさん (40代男性、東京都在住、会社員)

食品メーカーに勤めるK・Tさんは40代のサラリーマン。同年代の妻がいて、東京都内で共働きをしている。

「子供はいないので2人暮らしです。10年前にN区に自宅マンションを買って、自分名義でローンを組んでいます。生活費は、住居にかかわるローンや光熱費などの引き落としは私、食費や雑費は妻。それぞれのケータイ代や保険などは各自で支払うという緩い形の折半をしています。妻の方が支払い額が少ない分、家事をメインでやってもらいました」

そんなK・Tさんが不動産投資に目覚めたのは4年前のこと。書店でたまたま手に取った書籍で不動産投資を知り、勉強をスタートさせた。

「10冊ほど本を読んで、最初は地方高利回りアパートに惹かれたのですが、実際に見に行ってみると、高利回り物件はボロボロだったり、傾いていたり、とても素人の自分の手に負えるとは思えませんでした。また、いきなり数千万円も借りるのが怖くて、都内の中古区分マンションを購入することにしたのです」

そうして探し出したのは、K区にある2000万円弱の2DKの区分マンション。オリンピックの再開発エリアということもあり、これから発展していく将来性の高い地域だった。

「購入したのは2013年夏で、その秋に東京オリンピック開催が発表されたので、物件価格が高騰する前に買えたのはすごくラッキーでした。ただし、自分自身の年収が400万円そこそこということに加え、物件が旧耐震基準ということで、融資はノンバンクからしか受けられないという話でした」

そのノンバンクに共同担保を求められ、自宅マンションを共同担保に入れて、さらに妻に保証人になってもらったという。

「こうして、4%近い金利ですが30年のフルローンで融資を受けることができました。念願の投資が始められることになり、すごく嬉しかったです。家賃は11万円程度で、ローンや管理費・修繕積立金を差し引くとほんの少ししかプラスにはなりませんが、その後、そのエリア一帯のマンション相場が上昇したので含み益もあるし、賃貸ニーズも強い場所で満足していました」

しかし、それから月日が流れ、夫婦仲が悪化。現在、離婚を検討しているという。

「区分マンション購入後、私の仕事の環境が悪くなり、転職することにしたんです。しかし、これまで以上に良い条件の勤務先が見つからず、求職期間が長引いて、妻に依存することになってしまった。結局、私が甘え過ぎて愛想をつかされてしまったんです。妻からは、すでに離婚をしたいと宣言されています。

その場合、投資用の区分マンション、マイホームはどのようにすればいいのか、わかりません。妻には申し訳なかったと思う一方で、正直、私も将来には不安あるので、そんなにお金は払いたくないというのが本音です……」

もともとK・Tさんの妻は、不動産投資に対して興味はなく、保証人などの協力はあったものの、積極的に関わってはいなかったという。また、投資用の区分マンションについてはK・Tさんがすべて費用を支払っていた。

夫婦の共有財産とみなされるため財産分与の対象となる

K・Tさんが離婚する場合、「財産分与」が問題となります。ここでは、「マイホーム」と「投資用の中古区分所有マンション」の2つを検討します。

(1)財産分与の対象となるかについて

婚姻中に取得した「マイホーム」については、名義がK・Tさんでローン支払いもK・Tさんが行っていたとのことですが、共働きの奥様が生活費の一部を負担し、かつ、家事労働も行なっていたとのことですから、いわゆる「実質的共有財産(名義は一方に属するが夫婦が協力したからこそ得られたと評価される財産)」として、財産分与の対象となります。

「投資用の中古区分所有マンション」についても、名義がK・Tさんでローン支払いもK・Tさんが行っていたとのことですが、結局のところ、「投資用の中古区分所有マンション」の購入資金は、婚姻生活中に奥様の協力(生活費の一部負担、家事労働負担等)によって捻出されたものと評価できます。そのため、いわゆる「実質的共有財産(名義は一方に属するが夫婦が協力したからこそ得られたと評価される財産)」として、財産分与の対象となる可能性が高いと考えられます。

仮に、この区分所有マンションがK・Tさんが相続で取得したものであるとか、奥様の協力とは無関係にK・Tさん本人のみの特別な才覚によって取得されたものであるという場合には、いわゆる「特有財産(名実ともに一方の所有に属する財産)」として、財産分与の対象とはならないことが考えられます。

(2)不動産価額の評価方法・分与方法について

K・Tさんの場合、「マイホーム」及び「投資用の中古区分所有マンション」のいずれにも残債務(住宅ローン)が残っているとのことです。財産分与時点で残債務がある場合の不動産価額の評価方法は、分与時点での不動産時価額から残債務額を控除するのが一般的です(抵当権付不動産については別の評価方法を採用する裁判例もあります)。

不動産時価額については、簡易な評価方法として固定資産税評価額や路線価を参照して算定することがありますが、必ずしも市場価値と一致しないケースも多いため、不動産鑑定士による鑑定結果や不動産業者による見積額、銀行評価額などを基準にすることもあります

分与方法については、どちらか一方が不動産を取得して残債務を支払い続ける方法、第三者の援助や借入金によって不動産評価額の2分の1を支払う方法などがあります。資金的に余裕がない場合には、不動産そのものを売却してその代金を財産分与することが考えられます。

なお、「投資用の中古区分所有マンション」については奥様が保証人となっているとのことですが、奥様が離婚に際して「保証人から外してほしい」と希望しても、金融機関の同意が得られない以上は保証債務を免れることはできないため、事実上実現困難であることがほとんどです。

また、「マイホーム」及び「投資用の中古区分所有マンション」について、オーバーローン(不動産時価額よりも住宅ローン残債務額が大きいケース)の場合、原則として、負債が上回っているので不動産価値はゼロであるとして、財産分与の対象とはならないと判断されることになります。