写真© smolaw11-Fotolia

「2年で100室まで規模を拡大した」――。

不動産投資家のIさんはある懇親会で、そんなオーナーと知り合う機会があった。「自身の投資規模についてしきりに自慢していたんですが、具体的な投資手法の話になると、とたんに言葉を濁す感じでした。おそらく『1法人1物件スキーム』を使っているので、後ろめたさのようなものがあったのではないでしょうか」

投資規模の拡大を志向する不動産投資家たちの間で、「1法人1物件スキーム」「複数法人スキーム」という言葉が広く知られるようになった。文字通り、法人A社を設立して物件Aを買い、物件Bを買うために新設の法人B社を設立するといったように、物件と法人を一対一で対応させる手法だ。

たとえ法人の連帯保証人となって借入をしたとしても、個人の信用情報には記載されない場合が多い。そのため、既存法人の借入額が銀行から見えにくく、新設法人で融資を受ければ、個人での借入と比較してはるかに多くの融資を獲得できる公算が高いとされている。

実際に、各銀行の融資の特性を熟知し、建物価格の8%を還付金として受け取る「消費税還付スキーム」を組み合わせるなどして、短期間に効率よく規模の拡大を図る投資家も存在する。一方で、債務を隠すような行為にリスクの高さを指摘する声も多い。「禁断の果実」とも言うべき「1法人1物件スキーム」の実態を探った。

会員限定記事です

この記事の続きを読むには、会員登録が必要です
会員登録(無料) ログインする