学生時代、そして就職後も、株やFX、フランチャイズ(FC)のたこ焼き店経営など、お金を稼ぐためにさまざまなことを経験してきた。しかし、サラリーマンも含めて、自分には向いていないと思っていた。それは「自分で全部自由にやりたかった」からだ。

そんな木下たかゆきさんは現在、「ギガ大家」とも称され、34歳にして年間家賃収入は7億円以上。一体どのように不動産投資と出会い、どうやって成功を掴んだのだろうか。そのメソッドに迫った。

「あかん、サラリーマンとか無理や」

現在所有する物件数を尋ねると、「60棟1200室以上だと思いますが、しっかり数えていないんです」という答えが返ってきた。

総投資額は売却も含めて50億円以上。ほとんどの物件をフルローンやオーバーローンで購入している。税引き後キャッシュフローは約2億円で、ここ1年の物件の売却益だけで約5億円というから、スケールの大きさに圧倒される。物件を買うペースも「今年1月から8月だけで18棟460室くらい購入していますよ」と尋常ではない。

学生時代には、インターネットでアクセサリーを転売することなどで儲けを得ていた。求人広告会社に就職してからも、株やFXといった投資を行ったり、時間を作ってFCのたこ焼き店を経営したりしていた。儲かりそうだと考えたからだ。しかし、株やFXでは1000万円以上の損失を出し、たこ焼き屋も1年で撤退することに。

「向いていなかったですね。自分ですべてをコントロールできる仕事がいいと思いました。そういう意味では、サラリーマンも合わなかったです。時間も、稼げる給料も制約される。それが嫌でした。就職活動の時に自己分析ってやらされるでしょう。あれをやればやるほど『あかん、向いてない。サラリーマンとか無理や』って気持ちになりました(笑)」

そういう意味で、不動産投資は自分向きだった。「全部、自分で自由にできます。自らいろいろと動いて利益を出したほうが気持ちいいし、楽しい。付き合う人も、取引先も、友達も全部選べますから、嫌な人に頭下げるようなこともないですし。選べないのは、銀行の担当者くらいです」

ボロ文化住宅を埋めるため、ひたすら営業

不動産投資を始めたのは、今から10年ほど前。当初は区分マンションなどから小さく開始した。本格化したのはそれから3年ほどたった27歳のころで、祖母が所有していた文化住宅(大阪を中心にみられる、木造2階建ての棟割りアパート)を相続したのがきっかけだ。これを機に、会社も辞めて専業大家になった。

「全部で80室程度あっても、半分が空室。亡くなった人が部屋の中でそのまま放置されているような、ボロボロの文化住宅でした」

この物件を再生するために、修繕費用を借り入れ、業者に依頼してリフォーム。満室になるまでの3カ月間は、ゴキブリが動き回るこの物件の一室に泊まり込んだ。ようやく脱出できた時には、この物件だけで毎月300万円の家賃収入を生み出すまでになっていた。

どうやって、そんな物件を満室にすることができたのだろうか。尋ねると、「気合」の2文字が返ってきた。

「満室にするために、その物件がある路線の前後のターミナル駅を訪れ、不動産仲介の店舗をすべてまわりました。全部で30店くらいを週に1回訪ねるんです。全営業マンの名前と、顔と、携帯電話の連絡先を把握するようにしていました」

とにかく行動し、ひたすら営業した。「行動することが大事だと思います。あとは、初期費用や家賃を他の物件と差別化できるようにしてあれば、満室にできます」。この考えで行動した結果、ボロボロだった文化住宅の再生に成功したのだ。

60棟1200室以上。これだけの物件を所有していても、稼働率は「基本100%」。加えて「満室にできない物件はほぼありません」と自信たっぷりに言い切る。

稼働率100%を実現するための手法は、非常にシンプルだ。安く物件を購入し、適切にリフォームし、家賃設定や広告料の調整などによって満室を実現する。その後、希望の値段で売却できるようであれば売却し、その利益をもとに銀行から融資を引き、また別の物件を購入するというサイクルだ。

「満室経営の基本は、商品力と値段のバランスです。家賃、初期費用、広告料を、入居が決まるように設定してあげれば決まりますよ」。購入した物件の多くは、家賃を地域最安値に設定した上で、地域最高値の広告料を出して入居付けを依頼している。「だから、勝てないはずがないんです」

それが可能になるのは、物件を安く購入しているからだ。他の人が見向きもしないようなガラガラ・ボロボロの物件や、立地、間取りなどに問題のある物件、競売などで安い物件を入手し、リフォームして貸し出す。ボロボロの物件に抵抗はない。「どうせ修繕するので、今がガラガラ・ボロボロでも直せばきれいになりますから、今の状態は関係ありません」

物件の特性上、生活保護受給者など低属性をターゲットにすることが多い。「今の時代は貧困層も増えてきていますから、常に満室です。もちろん、最初から狙ってやっていたわけではないですよ。僕だってピカピカの物件は欲しいですが、安く買えないので。安く買えば、そういう属性をターゲットにしないと決まらないので、否応なしに始めてみたら、これが最高(の手法)だったというだけです」

生活保護受給者を入れることに抵抗感を覚えるオーナーも少なからずいるが、「トラブルも全然ないです」という。「部屋で亡くなっていることはありますけど、逆に言えば僕の物件に死ぬまで住んでくれたということですから、『ありがとう』とすら思いますよね」

一方で、すべての物件で相場より安い家賃を設定しているわけではない。初期費用を安くする分、家賃を少し高めに取る場合もあるという。「場所によって響き方も違います。いろいろテストしながら、どうするのがベストなのかを考えています」

リフォーム会社との付き合い方

木下さんの賃貸経営に欠かせないリフォームだが、リフォーム会社の選び方については「こればっかりは、使ってみないとわかりません」と語る。しかし、「リフォーム会社も、単発の仕事ではそれに利益を乗せないと割に合わないと思ってしまうので、他の物件の工事をお願いするとか、先々のリフォームもお付き合いしてもらうことで安くしてもらうことはできます。投資規模が小さいのであれば、自分1人だけではなく何人か集めてチームで発注をかけるとか、工夫はできると思います」とアドバイスも。

こうした工夫によって安くリフォームすることができれば、コストカットにつながり、利益を上げることができる。さらにリフォームして売却すれば、大きなキャピタルゲインも見込める。

売却を組み合わせることで大幅な資産拡大を実現してきたが、積極的に売却を進めてきたというわけではなく、売却するのは年に1~2棟程度という。「売りに出している値段で買い手がつくなら売ってもいいというスタンスです。希望の値段で売却に出して、その値段で買いたいという人がいれば、お譲りする。何が何でも今売らないといけないから値段を下げる、というようなことはしません」

所有する物件の1つ

所有する物件の1つ。いずれも競売や、間取りに問題があるなどの理由で安く購入しているため、利回りは20%以上

「銀行ありきですから、銀行がついてこないと買えません」

木下さんは自分の投資スタンスについてこう語る。融資を引くために様々な努力を重ねてきた。例えば、売却して得た利益を使うことはせず金融機関に示し、次の融資を引くといったことだ。あるいは、半年に一度程度、付き合いのある銀行や今後付き合う可能性のある金融機関をローラー作戦でまわったり、もし融資交渉にNGが出ても、決算書がダメなのか、物件がダメなのか、細かい点まできちんと確認をして次に生かしたりといったこともする。こうした戦略について「これしかないですよね。地道な感じはしますけど」と話す。

融資を引くことができないという悩みもオーナーにはありがちだが、そういう時にはどうしたらいいのだろうか。

「まずはお金を貯めるしかないですよね。それか、金融機関が融資を出すエリアで勝負するということです」。

大阪エリアでは融資を出す金融機関が多く、仲間内では、大阪に住民票を移し、腰を据えて不動産投資に取り組む人も1人、2人ではないのだという。

投資規模を拡大していく時の注意点についても、やはり銀行を意識すべきだと語る。「何度も言いますが、銀行ありきです。自己資本比率、債務償還年数、現金をどれだけもっているかということをきちんと管理しておく必要があります」

特に、ポートフォリオ全体の平均残存耐用年数を気にかけ、所有物件のエリアや構造、残債などに偏りがないように注意を払っている。

「人の真似」で大成

現在、月の実働時間は「2~3時間」。それは、投資活動のほとんどを雇った従業員に任せているためだ。「僕の仕事は、情報収集をして、資金調達をして、物事をやるかやらないか判断すること。そして、何をするかを考えることです」

従業員は現在8人。投資規模を拡大するごとに採用していったという。競売の入札や物件の買い付けなど、自分自身以外にもできる仕事はすべて従業員に任せている。「僕の不動産投資の実行部隊です。僕は、楽をして、遊べば遊ぶほどいいアイディアを思いついたり、いい情報が入ってきたりすると思いますし、次にどんな物件を買おう、どんなことをしようということを考える時間が作れると思います。作業に忙殺されていたら、次に何を仕掛けようというアイディアは浮かびません」

成功するためには、人の真似をすることも大事だと話す。「これはいい」と思うような手法を先輩の投資家から聞いた時には、すぐに「パクって」きたという。例えば、従業員を雇って不動産投資を行うスタイルも仲間の投資家からやり方を聞いて始めた。「別に教わったわけではないです。遊んでいる中で少し仕事の話になって、その中でヒントをもらって『これはいいな』と思いました」。現在も、いいアイディアを仕入れた時には従業員にLINEで指示を出している。

その一方で、「いつも『欲しい欲しい、くれくれ』だけでもそこにコミュニケーションは成立しないので、ギブ&テイク…その人に対して何ができるか、何をあげられるかといったことも重要だと思っています」とクギを刺す。不動産投資のノウハウを学ぶために、書籍などにきちんとお金を払って情報を得る。こうした投資すらできないのであれば、不動産投資の世界に参入する資格がないというのが持論だ。

仲良くなる人は、「面白い人」。投資規模の大小は関係ない。「特徴的で、ギブ&テイクができる人とは仲良くなります。それは、仕事の上でも遊びの面でも、どの分野でも同じです。勉強になるな、と思う人と一緒に過ごした方が自分も成長できますから」

大家業は「ある意味孤独」だという。友人や頼れる先輩はいても、違う側面ではライバルでもあるからだ。「応援してくれる人って誰もいないんですよね。自分で自分を応援するしかありません。だからこそ、上を向いて頑張っている人を見て、そういう人と関わっていれば、自分も頑張ろうと思えます」

もちろん、これまでには苦難もあった。自身では「失敗の連続ですよ」と笑う。購入後のリフォームで、想定以上に修繕費用がかかることは「しょっちゅうある」そうだし、売り時を見極め損ねて「3~4年前に売った物件は、今ならもっと高く売れたのに」と考えることもある。

物件を買うために、年に1000件以上も買い付けや競売への入札をするが、そのほとんどで買い付けが通らず、落札もできない。「(インタビュー実施日の)今日も開札でした。落札できませんでしたけど(笑)」

一番損をしたと思うのは、競売で買った物件をシェアハウスにしようと計画していた時のことだ。もともとは文化住宅が建っていたが、火事が起こって人が亡くなったという「いわくつき」の物件。「ここに新築木造のシェアハウスを建てて、利回り20%いくようにしようと考えていました。すでに設計もお願いしていて、建築許可も申請していたんですが、周辺住民に『何が建つねん』と猛反対されたんです。あんまりに抗議が多かったため、撤退しました」。購入した時と同額程度で売却したが、すでに依頼していた設計料を含めて100万円ほどが無駄になったという。

だが、失敗を重ねても落ち込むことはない。そのための工夫がある。「築古でも新築でも、どの物件もそれぞれいろいろ大変ですよ。退去も出るし、何が壊れたとか、管理会社からの連絡なんて基本的にいい連絡はありませんから。ネガティブなことばかりで、それを全部自分で受けているとネガティブ思考になる。だから僕は人を雇っているんです」。従業員を雇うことは、自身の精神衛生的にもいい影響があるのだという。

迷うことは無意味

成功者の共通点は「ビジネスマンとして当たり前のことができる人」だと考えている。「ちゃんと人の話やアドバイスを聞いて、すぐにそれを実践に移せる人。情報がすべての不動産投資において、常に情報収集を怠らない人。そういう当たり前のことができる人じゃないでしょうか」

好きな言葉は「即断・即決・即行動」。まさに自らの不動産投資の手法を表したような一言だ。「迷っていることに何の意味もありませんし、時間がもったいないだけです。迷っていても何も生まれません」

不動産投資に参入したいと考える初心者に向けてのアドバイスを聞くと、「『しょうもない』物件を高値で買うくらいだったら、お金を貯めておいたほうがいいですよ」と言い切る。現在は銀行の融資もまだ出ていて、物件価格も高い。「こうした市場が歪んでいる時は、寝ていたほうがマシです」。時流を読むことも、不動産投資家には必要なスキルだ。

「どうしても今買いたいのであれば、そういう銀行と関係のない物件、例えばボロ戸建てやボロアパートを買って始めるのがいいんではないでしょうか。物件価格も安いですし、売主がOKと言えばそれで成立しますから。競合も多くはありません」

「仕事は遊びの延長」

「行動してみないと何も始まらないですよね」と、とにかく自ら動くことの重要性も説く。それは、十分成功者と呼べる現状に甘んじていないところからもうかがえる。今後の目標は「100億円借り入れて、20億円の現金をストックし、家賃売り上げを15億円にすること」だと話すが、この大きな目標すら「そのうち達成すると思います」。

趣味を聞くと、「旅行、食べること、飲むこと、遊ぶこと…」と挙げた後に、「でも、一番嬉しい、楽しい瞬間はやっぱり物件を買った時と、満室になった時と、物件が売れた時ですかね」と続いた。不動産投資が趣味の1つなのだという。「仕事は遊びの延長ですね」。こうした考えこそが、成功者の証なのかもしれない。

プロフィール

1982年、大阪生まれ。現在34歳。祖母の文化住宅を相続したことをきっかけに本格的に不動産投資を開始し、現在の総投資額・総融資額は50億円以上、年間家賃収入は7億円にも上る。税引後キャッシュフローは約2億円。全国に約60棟1200室を所有している。著書に 「最速で億を稼ぐ! 不動産投資[成功の原理原則]」(https://www.rakumachi.jp/r/ego6vc69)

ぶっちゃけ本音トーク

不動産投資に失敗している人の共通点ですか? 失敗している人とは付き合わないので、わかりません(笑)。同じレベルで遊べる人は常に上昇している、余裕のある人なので、(失敗している人は)知ったこっちゃないって感じです!

遊ぶ時には、「忙しい、忙しい」ってあまりに言っている人は誘いません。忙しいって言っている人に限って成果を出してなかったりするんですよね。一生忙しくしてれば? って思います。

不動産はやれば儲かります。ただ、こんなに皆さんに頑張られたら困りますけどね!(笑)以前、「競売サイコー」と言っていたら、友達がこぞって参入して来ちゃって、入札の上位5人中3人が知り合いだったことがありました。

こんなこと聞いてみました

Q.朝は何時に起きますか?

A.9時か10時くらいですね。起きた後に布団の上で仕事の連絡をします。所要時間は5分程度、あとはその都度来る連絡に答えるくらいで仕事は終了。あとはYouTubeを見たり、ジムに行ったりして過ごし、夜は会食です。時には朝方までかかります(笑)

Q.よく利用するインターネットサイトはありますか?

A.競売情報や公売情報のインターネットサイトはよく使います。ニュースはYahoo!ニュースくらいかな。旅行に行くことも好きなのですが、飛行機の中ではNetflixやAmazon Primeの動画を観たり、雑誌読み放題サービスを使っていろんな雑誌を読んだりしています。普段はYouTubeで車や音楽ライブの動画も観ますね。

Q.無人島に3つ持っていくとしたら?

A.実はこの間、友達20人くらいで無人島を貸し切ってキャンプをしたんです。貸し切りは15万円くらいでできるんですよ。なので、持っていくものは友達と、携帯電話。あとはお酒と食材ですね(笑)