マイナス金利の影響によるアパートローンの拡大など、さまざまな背景から全国的に不動産投資熱が高まる中、北海道、特に札幌市における投資も非常に活発だ。札幌市を中心として、高利回りを期待できる物件が多かったためだ。

札幌の物件が投資先として注目を浴びたのはその土地代の安さが大きな理由だったが、「もはや東京と変わらないくらい利回りは下がっている」と指摘するオーナーも。現在、札幌の投資市況はどのような状況なのか、そして雪国・北海道における賃貸経営の独特なノウハウとはどのようなものなのか、現地からリポートする。

人口減少著しく

まず、数字で現在の北海道の状況を確認してみたい。北海道によると、住民基本台帳に基づく2017年の人口は537万807人。10年前の2007年は560万705人となっており、人口減少が著しいことがわかる。

北海道が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数に関する調査」より作成 (※2012年以前は、人口総数に外国人が含まれていない)

北海道で人口の多い市町村は、上から順に札幌市、旭川市、函館市、釧路市、苫小牧市となっている。特に札幌市は2017年の人口は約190万人で、全道人口の約3分の1を占める。札幌市を除いては前年に比べ、すべて減少している(空室率は総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」より作成。二次的住宅を除いて算出)。

市町村

人口数(増減率)

空室率

札幌市

1,947,494人(0.3%) 

    13.8%

旭川市

342,848人(△0.7%)

 13%

函館市

265,503人(△1.1%)

15.2%

釧路市

174,518人(△1.1%)

 15.6%

苫小牧市

173,135人(△0.4%)

  14.7%

一方、札幌市が9月に発表した同市の地価調査概要によると、全用途の地価の平均価格は1平方メートルあたり13万2600円。住宅地、商業地ともに5年連続で上がっており、2012年(10万400円)に比べると約3万2000円の上昇だ。

人口減少の波は北海道においても激しく、厳しい状況がうかがえる。札幌では勝負の余地がありつつも、地価上昇などに伴う物件価格の高騰や、多くの不動産投資家の参入による競争激化という懸念点は見逃せない。

「札幌一強」でも、利回り10%以下

札幌の不動産コンサルタント会社「FAプロダクツ」の常務取締役で、自身も不動産投資家である天内和幸さんは、現在の札幌の不動産投資市況について「利回りが依然として出やすいという意味で、全国的に貴重な地域であることは間違いないと思いますが、その利回りは下がってきています。数年前なら10%以上でしたが、現在では8%前後。新築なら7%程度もざらにあります」と語る。

「土地の価格も高い水準で横ばいになっていますし、物件価格が高いですね。利回りが9%を超える物件というのも、たまたま土地の値段が安かったということであるにはありますが、地下鉄沿線などの人気エリアでは幻のような存在です」

札幌市内では物件価格が上がっているのと同時に、建設される物件数は減少してはいないと天内さん。必然的に、空室率は上昇傾向にあるという。だが、札幌市の状況を考慮して、別の道内市町村に目を向けることも危険だと指摘する。

「北海道は札幌一強。全国の中の東京のようなものです。旭川や函館も道内では人口が多いほうですが、現在、そして将来的な人口減少を考えれば、将来にわたっての安心感を得られるかという観点としてはリスキーな投資になると思います」

同じく札幌で、満室での賃貸経営を実践する米生啓子さんは、札幌への投資が過熱した理由について「数年前からとにかく物件を買えば生活が安泰、というような錯覚に陥って、猫も杓子も不動産投資という感じになっています。そこで土地代が安い札幌が魅力的になったのではないでしょうか」と話す。

だが、米生さんも天内さんと同様に、その収益性について「新築はもちろん、中古でも10%を切る利回り、つい数年前の東京と同程度の利回りは当たり前です」と指摘する。

札幌在住の楽待コラムニストでもあるリスク管理大家さんが、札幌市内で物件を購入する際、気を付けるべき点を教えてくれた。

「札幌は当然のことながら積雪寒冷地ですから、基本的に徒歩10分圏内を超えると空室率は格段に上がってしまいます。東京のように駅から徒歩10~15分といった立地では埋まらないんです。完全に駅から離れて、車移動を想定したファミリー層をターゲットにするか、もしくはできれば徒歩7分以内といった物件がいいと思います」

雪が降ってしまえば、15分歩いて通勤するのは困難だ。自転車も使用できなくなる。リスク管理大家さんは「中途半端な立地は一番避けたいですね。駅から15分ほどで駐車場もない…となると入居はつかないと思いますよ」と話す。さらに「東京ではJR沿線が人気でも、札幌では違います。断然地下鉄沿線が人気ですね」。

利便性の良さや、降雪時にも大幅に遅れる可能性が低いため、札幌では地下鉄沿線が人気なのだという。

「例えば、札幌市内では中央区、東区、西区、北区、それと白石区、豊平区は人気のあるエリアですね。厚別区や清田区は地下鉄から少し外れています。JR沿線の地域は、ファミリー層向けなら駐車場を確保すればまだなんとかなるかもしれませんが、単身者向けなら地下鉄沿線じゃないと厳しいと思います」

ただ、JR沿線でも注目エリアはあるという。リスク管理大家さんが目を付けているのは「苗穂駅」だ。「札幌市が駅周辺の再開発を発表している上、市電が同地域まで延伸する可能性もあります」として、この先人気が高まると見込んでいるという。

雪国ならでは、ロードヒーティング

リスク管理大家さんは、雪国ならではの支出についても解説してくれた。そのうちの1つがロードヒーティングだ。道路の下に埋設する施設で、雪を溶かしたり凍結を防止したりするのに活用される。

「ロードヒーティングを導入していないと、除雪は本当に大変です。札幌在住で、自主管理のオーナーさんだと自分でやっている人もいますが、降るときには毎日かなり降りますし、積もってそのままの状態だとクレームになります」

当然のことながらロードヒーティングを設置するにも費用がかかるほか、毎月のランニングコストも必要だ。「もし駐車場などにロードヒーティングがない物件を購入する時には、設置には300~400万円かかります。それとは別に電気代などが月5~6万円程度かかりますから、この費用は念頭に置いておかないといけません」

少なくとも12~3月の4ヵ月間は、こうした維持費がかかってくるという。もちろんロードヒーティングを設置せず、業者やシルバーセンターに除雪を依頼するケースもあるというが、それも「冬の間、毎月5万円くらいかかってしまいますね」。

ただ、ロードヒーティングの維持費については、駐車場代に上乗せすることも可能。「ロードヒーティングがない場合の駐車場代は、場所にもよりますが1台あたり8千円~1万2000円ほど。ロードヒーティング有だと1台あたり3000円ほどアップします」とリスク管理大家さんは語る。

一方、夏の間は都内より涼しく、過ごしやすいと言われる札幌では、「クーラーを設置していない部屋も結構多いですよ」(リスク管理大家さん)。これについて、前述の天内さんは「最近は北海道でも都内より暑くなる日も多いので、クーラーをつけてあげることで競争力は上がるかもしれません。特に、埋まりにくい1階はあらかじめつけておけば埋めやすくなると思います」とアドバイスしている。