前述の米生さんは、札幌への投資について「すでに不動産を所有していて、経費を落としたいような、資金に余裕のある方には買ってくださいと思いますが、もしこれに勝負をかけたいというような人、初めて札幌で買うというような人が、中古や築古のRC物件を購入してしまうと、悲惨なことになると思います」と警鐘を鳴らす。

なぜRC物件を勧めないのか。「RCだからと言って、木造物件より倍の家賃が稼げるわけではないですよね。でも修繕するにしても、リノベーションをするにしても、木造よりずっとやりにくいし、お金がかかります。それに、こちらでは3、4万円といった家賃はざらにあります。東京の感覚ほど家賃が取れないんです。今は部屋余りと言われる時で、どうしたって築浅物件から埋まっていきますから、本州の古い物件よりずっと綺麗な物件だって家賃を下げざるを得ないこともあります」

さらには、こうした低い家賃のため、広告料は「10万円にのるかどうかが基準」だという。「単純に2カ月分などと考えていると、例えば単身者向けの部屋で3万円の家賃なら2カ月分でも6万円にしかなりませんから、繁忙期と閑散期で調整するにしても、3カ月、4カ月分となる場合もあります」。こうした観点から、米生さんは「こちらの物件を買うなら、長く住んでもらえるもの、出入りが激しくないものを選んで欲しいです」とアドバイスする。

また、リスク管理大家さんが指摘していたように、ロードヒーティングをはじめとした除雪に関連した支出もあり、「表面利回りがそこそこ良いなと感じても、目先の数字ではなく、そこからの引き算、特に冬の期間、どれだけコストがかかるのかということをきちんと計算しないといけません」(米生さん)。

冬場の光熱費と「都市ガス伝説」

札幌での不動産投資は、雪を基準に考えないといけないということがよくわかる。米生さんは「四季と言われますが、こちらは1年の3分の1が冬、雪ですからね。除雪をしっかりしないと退去にもつながります。もし遠隔地から札幌の物件に投資するのであれば、管理会社に写真付きで除雪の報告をしてもらうなど、きっちりと管理すべきだと思いますよ。除雪の費用分は管理費に含まれないので、もちろんその分きっちりお支払いする必要もありますが」と語る。

ロードヒーティングがあったとしても、設備があるところとないところでは段差がついてしまうので、定期的に部分除雪が必要になってくるという。「業者に除雪を依頼する場合には、10センチ以上積もったら通路を除雪し、雪山が大きくなったらダンプカーで排雪というような契約が多いですね」(米生さん)

また、その物件にどの程度除雪の体制が整っているのかということも、物件を見る際の注目ポイントだ。「例えば、駐車場などに除雪するためのスペースや、雪山を一時的に置くためのスペースを確保できるかどうか? といったこともそうです。道幅も広いほうがいいですから、前面道路は気にしたほうがいいでしょう。自主管理であるとか、雪山スペースがないのであれば、融雪溝(道路の下を通る温水などの熱で雪を解かす施設)などの設備があるといいかもしれません」

米生さんの物件のそばには、大雪に対応するための設備がある

さらに、米生さんは入居者の暖房設備についても言及する。「水道光熱費問題は大きいです。特に冬季は、暖房費が高額になりますから、入居者さんは少しでもガス代が安いところに住みたいんです」

米生さんが所有する物件は築36年のRCマンションで、都市ガスを利用している。「入居者さんが賃貸物件を探すときには、だいたい築年数が浅い、10年くらいでチェックを入れることが多いと思います。それでも、なぜうちの物件に問い合わせが来るのかという理由の1つには、『都市ガス』という条件で候補に挙がっているんです」。米生さんはこれを「都市ガス伝説」と称する。

これについては、天内さんやリスク管理大家さんも同様の指摘をしている。天内さんは「プロパンガスだとさまざまな設備がついていて、オーナーとしては旨味がある場合も多いですが、反面入居者へしわ寄せがいってしまいます。実際に、プロパンガスの物件で冬になって『こんなにガス代がかかるなら無理です』と退去になってしまうこともあります」と明かす。

米生さんは、プロパンガス会社の中にはリーズナブルに提供している会社もあるとする一方で、「入居者さんの中でなんとなくプロパンは高そう、都市ガスは安そうといったイメージがあります」と指摘する。冬の間、暖房が欠かせない寒冷地では、高額の暖房費が退去理由となることも気にかけておきたい。

米生さんも、やはり地下鉄沿線地域が鉄板のエリアだと話す。通勤のためにはバス路線もあるが、降雪時には30分以上遅れることもままあると話す。「多少土地代は高くなりますが、地下鉄駅から徒歩3分、5分圏内だと古くなっても家賃が値崩れしないで貸せるので、買うときには高いかもしれませんが長期的な目で見るとおススメです」。札幌市内の地下鉄は3線あるが、「古くからある南北線は、本数も多いので人気がありますね」という。

米生さんの物件の屋上から見た札幌中心方面

「市内で人気のエリアの1つは円山です。ステータス的には東京から来た支店長クラスが住むような、高級エリアです。私から見ると、山側で坂も多くて不便だと思ってしまいますが(笑)」。このエリアに投資するオーナーの多くも、市内の別のエリアに比べて高級感のある物件に仕上げ、家賃もそれなりに高く設定しているという。

「ただ、少し聞いてみると再開発で新しい分譲マンションも多く建設され、それが賃貸に出されてもいます。特にこのあたりの入居者さんは経済的な余裕がある人も多いので、飽きたら簡単に移れるため、意外と出入りが激しく、こんなはずでは、と焦っているオーナーさんもいるみたいですよ」

札幌への投資熱は、徐々に近隣自治体へも拡大していると米生さん。「札幌より土地代が安いエリアで、新築物件が増えていますが、人口が少ない分すぐに競合物件が増えてしまうので、需要と供給バランスに注意が必要です」

釧路、函館、苫小牧…北海道で雪の少ないエリア

米生さんが、札幌以外のエリアについても他のオーナーらから聞いたり、自分で見て回って感じたりした情報をいくつか教えてくれた。「例えば新千歳空港のある千歳市では、多少家賃が高くても築浅物件が何より人気だそうです。それから人口第二位の旭川市では、とにかく家賃が安いところが埋まりやすいと言っていました。車社会なので駐車場1台以上、できれば2台つければ、築20年、30年でも埋まります。旭川では、同じ場所でも駐車場が少ないと、家賃が安くてもガラガラ物件となるようです」

駐車場がなければ、生活保護者受給者などをターゲットにする考えもあるが、「コンビニが近くにあるなど、歩いて用事を済ませられる土地でないと厳しいでしょう」。

また、「釧路市では近年、夏の間だけIT企業などが『避暑地』として短期間の賃貸物件を借りるケースもあるようです」(米生さん)。アジア圏からの外国人観光客の多さも相まって、民泊や短期貸しといった不動産投資手法も検討する余地があると話す。釧路市や函館市、苫小牧市は道内では降雪が少ない地域のため、雪に慣れていない不動産投資家でも所有しやすいかもしれないと米生さんは指摘。だが、もちろん需要を見極めることが大前提だ。

自分の目で確認を

「今は物件価格が高いですし、東京オリンピック前で建築関係の業者さんも東京にとられてしまって修繕にも時間がかかり、『業者待ち空室損失』があるくらいです。あまり焦らず、少し待ってから投資するのもいいのではないでしょうか」
米生さんはそうアドバイスする。「北海道、札幌を好んでもらうのはとてもうれしいですが、それがダメになって撤収されて、北海道はダメだと思われたくないんです」

北海道の物件を投資の対象としてみる場合には、除雪対策やコストなど、冬場の降雪・積雪を軸に検討する必要がある。供給過多の状況の中で、エリア情報や入居者ニーズの分析は言わずもがな。自分の地元の感覚で判断するのではなく、投資先の地域を訪れるなど、自分の目と感覚で確認するほうがより賢明だ。

(楽待編集部 浜中砂穂里)