ずいぶん涼しい季節になりました。朝晩は寒いくらいの日もあります。雨が降るたび徐々に冬へ向かっていると肌で感じます。つい最近までセミの鳴き声が聞こえていたのが噓のようです。間もなく北国では雪の対策も必要になってきますね。
さて、今回は建築物の取り壊しについてです。この世では「形あるものはいつか壊れる」と言われています。建築物においてもこの言葉は当てはまります。木造であってもRC造であっても、いつかは必ず取り壊すことになるでしょう。
そしてこの「壊す」という行為には費用がかかります。特に最近では、産業廃棄物の処理は法律でも規定されており、様々な制限も課せられます。こういった情勢からも、建築物の取り壊しは昔のように簡単ではなくなりました。それでは、建築物の解体について触れていきましょう。
築古物件はどのように出口を考えるべきか
築古物件を購入した場合、出口戦略として「取り壊し撤去」を視野に入れておかなければなりません。まだまだ建物の状態が良い場合でも、築年数が増えるにつれて加速度的に修繕箇所が増え、それに伴って費用も膨らんでいきます。利益の大半が修繕費で消えてしまうような事態になる前に、売却するのか、取り壊して再建築するのか、という決断が必要です。
売主側の心理としては、土地値+α程度の売値としたいところです。ただ、取り壊しが視野に入っているような物件では、良くて土地値でしか売却できず、場合によっては取り壊し撤去後の土地だけでないと買い手が現れないかもしれません。その場合、建物状態を理由に大幅な指値が入ることは必至です。
建て替えが必要な築古物件であれば、入居者に退去していただいた上で解体し、解体後の廃材は産業廃棄物として適正に処分する必要があります。今回はその手順を詳しくお伝えします。
Step1 入居者への退去願い
入居者がいる場合、まずは退去してもらいます。大家側からの退居願いである以上は、なるべく入居者に負担がないようにしなければなりません。入居者がへそを曲げて居座るようなことになれば、話は進みません。次の転居先を見つける、引越費程度は大家側で負担する等の工夫が必要でしょう。入居者の無理な要望も、ある程度飲まなければならないかもしれません。
Step2 建物解体
建物解体はその物件の条件によって費用が変わります。まずは場所ですが、敷地が広く空きスペースの多い建物の場合、多少安く解体できます。一方、街中の商業地域の物件等の場合、逆に費用が増大します。理由は、近隣へ迷惑がかからないための対策、廃材置き場が確保できない、敷地内で分別ができない、多くの車両を待機できない等です。
建物の構造によっても費用が変わります。木造<鉄骨(S)造<RC造<SRC造と、右に行くほど解体費は大きくなります。以前は鉄の価格が高かったために鉄骨造は比較的安く解体できました。鉄骨だけ取り出して売ることができたからです。現在は鉄の値段が下がっているので、手間を考えると特にメリットはありません。
解体方法ですが、木造であればパワーショベル(解体重機)を使ってバリバリと引き剥がすように解体していきます。単純に周りから壊していくという感じでしょうか。壊れるスピードも速いです。S造やRC造であっても重機を据えることができる敷地があり低層建築物であれば、木造と同じように外側から解体できます。
問題は重機を据える場所が無い場合や高層建築物の場合です。こういった場合は外側から解体することができません。この場合、上階から徐々に内側へ解体する「階上工法」を採用することが一般的です。
工事の流れは、まずクレーンで解体重機を屋上へ引上げます。引上げた解体重機は、まず屋上スラブ(鉄筋コンクリートの床版)から解体していき、屋上に大きな穴を開けます。穴が開けば、そこから解体した屋上スラブのコンクリートガラ(がれき)でスロープを造り、下階へ降りていくのです。下階に降りた解体重機は残りの屋上スラブを解体し、壁も解体していきます。この繰り返しで、解体重機は下へ下へと解体を進めていくことにより、地上まで作業を進めるのです。
解体作業は地上の建築物のみで済む訳ではありません。地盤の柔らかい場所の大規模建築物は、地下に杭が埋まっている場合があります。更地として土地を売却する場合は、杭などの地中埋蔵物も同時に撤去しなければなりません。更地になった場所へ新たに建築物を建てる場合には、地中埋設物は邪魔になるからです。
杭の撤去は引き抜くことになるのですが、この作業は非常に困難です。むしろ杭を施工するときよりも抜くときの方が大変かもしれません。杭の種類、長さや傷み具合にもよりますが、地中で腐食していれば途中で折れてしまうことがあるからです。かなり厄介な作業となるようです。
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