平日は、本人いわく「普通のOL」。だが、実はアパートとシェアハウス計5棟41室を所有するオーナーで、さらに太陽光発電や海外のコンドミニアムなどにも手を広げ、年間家賃収入3000万円、税引き後キャッシュフローは不動産だけで900万円、総資産は6億円に上るという仮面OL☆0117☆さん(35)。自宅の購入をきっかけに不動産投資に興味を持ち、短期間で規模を拡大していった背景には、将来を見据えた「ある想い」があった。

自宅マンション購入を決断した理由

高校を卒業後、「親に頼りたくない」という思いから奨学金を受けてアメリカの大学に進み、経営学と会計学を学んだ。現地の税務コンサルティング会社で節税のスキーム立案やM&Aのサポートなどに携わった後、27歳のときに帰国。外資系の税務コンサル会社に5年ほど勤務し、現在はメーカーで働いている。

帰国して2年ほど経った2013年、28歳の時、赤坂で4000万円の自宅マンションを購入した。「当時は同じ赤坂の賃貸マンションに2年住んでいて、更新時期で『もう少し広いところに住みたいな』と考えていたところに、ちょうどマンションの営業マンが来たんです」。築8年の1LDK。金利0.75%の35年のフルローンで、初期費用は売主負担、100万円キャッシュバックという条件だった。「シミュレーションでは月の返済が11万7000円だったので、家賃とほとんど変わらない。これで今より新しくて広いところに住めるなら、と考えました」

それでも、4000万円という大きな金額には当然ためらいもあった。営業マンに「ずっと日本にいるかどうか分からないし、結婚したとして家族で住めるほどの大きさでもない」と相談した。すると、「ここは立地が良いし、同じような間取りの家賃相場は18万円前後。将来的に賃貸に回せばローン返済分などを除いて4、5万円ほどのお小遣いになるし、赤坂なら価値が下がりにくいので売却もできます」と言われ、購入を決断した。

リタイアの道筋が見えて

その年の秋。ふと、「マンション1室で5万円の家賃収入が得られるなら、4室ぐらいあればリタイアできるかも」と思った。「自宅を買ったことで家賃保証や家賃相場について理解が深まり、『経験値』が上がったという感覚もあったんです」。すぐに「マンション 投資」で検索して一番上に出てきた不動産販売会社の区分マンションのセミナーに参加。同時期、一棟アパート投資に関する書籍と出合い、「やっぱり区分より新築一棟物件だ」と方針転換し、今度は同じ会社の一棟ものセミナーに参加した。

セミナーを主催していたのは、土地付き木造アパートの販売で急速に業績を拡大していた会社だった。「4000万円の住宅ローンを考えると、1億を超すような首都圏の新築はハードルが高い」と判断し、担当者に「5000万円程度で探したい」と相談した。すると、「それなら名古屋か福岡ですね」という返答。家族の仕事などで縁があり、「経済規模も福岡より大きく東京にも近い」と、名古屋に絞って物件の紹介を受けた。

選んだのは1K6部屋の新築木造アパートで、価格は5100万円。栄生駅から2分、名古屋駅まで1駅で歩いても20分という立地だった。「人口減少で将来的に家賃が下落する可能性を考え、名古屋について徹底的に調べました。2027年のリニア中央新幹線開業を見据え、10年は大丈夫だろう、と。物件の近くには専門学校や企業もあって、入居ニーズは堅いと判断しました」

当時、貯金はほとんどなかったが、株式投資でアベノミクス相場の追い風を受けて1000万円程度の自己資金があった。信託銀行で自己資金1割を入れ、金利2.03%、30年の融資を受けることができた。

利回りは8%後半。「2部屋空室でも持ち出しにならないというシミュレーションで、いけると思いました」。予想通り、駅近で学生の需要があり、完成前に満室になった。購入から4年が経過した今も満室をキープし、月の手残りは12万円ほどとなっている。

当時はそこまで規模を拡大するつもりはなかった。「『月12万円入れば家計の足しになる』と思うぐらいだったんですが、引き渡しが終わって、初めての家賃が入って、ローンを支払って…。手残り額を実際に確認した時に、『2棟あれば会社員辞められる』と思って。そろそろ不動産の値段が上がり始めていた時期で、少し焦る気持ちもありました」

その後、加速度的に物件を買い進めていく。

同じ年に横浜の築6年のアパート(4400万円)、赤羽の築20年の鉄骨店舗兼マンション(1億2300万円)、北千住の築20年の木造アパート(9400万円)を購入した。いずれも利回りは10%を超え、購入時はほぼ満室状態。「当時は『ポータルサイトで探せば利回りのいい物件がそこそこある』という時代の終わりごろ。そろそろ急がないと、と考えていました」。9.5%以上の物件に絞って探し、指値で10%まで引き上げる方法で購入を進めた。

3棟目となった赤羽の物件

2棟目は1棟目と同じ担当者に連絡して1.95%の融資を受けることができたが、住宅ローンを含めた借入額が年収の10倍を超えたこともあり、3棟目以降の融資は苦戦を強いられた。3棟目は某地銀から4.5%で9割を借り入れ、1年後に金利交渉をして2.8%まで下げた。4棟目は別の金融機関を飛び込みで開拓し、3.07%で9割融資を受けた。

「融資は支店や担当者によって全く対応が違うということを学びました。4棟目はある支店で『積算評価が出ないので5割程度しか融資できない』と言われたんですが、別の支店では25万円ほどの鑑定費用を自己負担することで収益還元評価で見てくれて、9割融資を受けられました」

ロケーション重視

エリアは東京23区内を中心に、2路線以上が乗り入れるハブ駅から徒歩10分以内を目安にしている。「実際に駅を訪れて、人の多さを見れば入居が付くかどうかはなんとなく分かります」。現在も41室中空室は1室のみ。「ロケーションを重視して選んでいるので客付に苦労したことはほとんどなく、3室以上同時に空室になったことはないです」

4棟購入の翌年には清澄白河の築50年近い戸建てを800万円で現金購入し、シェアハウスにリノベーション。700万円で白を基調としたお洒落な建物に生まれ変わり、利回り20%という高収益を生み出している。

BEFORE

AFTER

新築、中古、シェアハウスと買い進めてきた。「どれがいいとは一概に言えません。ただ、1棟目はあの会社で良かったと思います。例えば4棟目は手残り20万円ですが、1棟目の倍ぐらい投資しているし、古いので修繕費はそれなりにかかる。管理手数料などは他と比べて高めですが、5000万円の投資で手残り12万円なら悪くない。銀行とのやり取りも代行してくれるし、初心者の1棟目としてはいいのではと感じます」

昨年秋には、投資や資産運用を学びながら経済的な自立を目指す女性グループ「富女子会」に入会。勉強会やセミナー、イベントなどに参加し、年齢の近い異業種の仲間たちと語り合っている。「周りに投資をしている女性は多くないし、こういう仲間を探していました」。今では講師側として、不動産投資のポイントなどを若い女性たちにレクチャーしている。

「不動産投資を遠い存在だと思っている人は多いと思いますが、やってみればそれほど大変なことはありません。1棟目の名古屋の物件は完成してから1回も見に行ったことがないですし、信頼できる管理会社に任せれば仕事をしながらでもできる。1棟買うと2棟、3棟と買い進めたくなるし、『リタイア』という選択肢が現実的になれば、心の余裕が生まれるんです」

太陽光18基

5棟購入後の3年間は物件を買っていない。「いい物件がないというのもあるんですが、既存借り入れ額も大きいので。また不動産の価格が下がってきたときに自己資金を多めに入れて買うための準備期間かなと思っています」

その間は太陽光発電投資に力を入れてきた。「2013年末、5棟目を買おうと思って地銀に融資の打診をしたら断られたんですが、その担当者と雑談中に『太陽光いいですよ』と言われたんです」。当時は太陽光発電投資の存在自体知らなかった。家に帰ってすぐネットで調べ、土地付きで販売している会社に連絡してその月に契約を済ませた。「国の制度だし、投資先として安心だと思ったんです」

1基2000万円程度で、現在は10基が稼働中。日本政策金融公庫や信販会社でローンを受けたほか、現金で購入したものもある。売電は1基20万円程度で、10基で220万円ほど。買取価格は36円/kWhが中心で、20年間はこの価格での買取が保障されており、利回りは約12%。さらに稼働前のものを含めると18基になる。

「不動産と太陽光を比べると、太陽光の方が収益性の面でも手間の面でも上だと感じました。ただ、太陽光は20年で一旦の区切りで、将来的な資産価値は残らない。逆に不動産は土地が残るという意味で『夢』があります」

実験的な投資も

2014年にはフィリピンのコンドミニアムを3戸、計2500万円ほどで現金購入した。「自分は本業の収入で十分生活できるので、投資から生まれるお金の一部は実験的に新しいものに投資したいんです。損するかもしれないし、それこそ詐欺に遭うかもしれませんけど、守るべきものがあるわけではないので」。新しい投資先を探す中、業者のセミナーに参加して興味を抱いた。

ただ、海外コンドミニアムについては「失敗とはいいませんが、やらなくても良かったし、今後もやろうとは思いません」と語る。「企業が自社買いの部屋をウィークリーやマンスリーで運用し、収益を投資家に均等分配する方式なんですが、思ったより稼働率が上がっていないようなんです」

利回りはもともと14%という説明だったが、実際は6%ほどにとどまっている。「投資は当然リスクを負うもので、株でも投信でも予定利回りを下回ったからといって文句を言えない。だから細かく追及するようなことはしていません。現金購入なので、6%でもプラスになっている限りはいいかなと思っています」

今ではホテル投資やバイオマス発電投資などにも参入している。

頑張る理由

ここまで規模を拡大する動機は何だろうか。「生きること、食べていくことを目的に働くのが嫌で、やりたいことをやって生きていくのが理想なんです」。40歳までに会社を辞めて独立し、行政書士と税理士、ファイナンシャルプランナーの資格を生かして女性の貧困問題解決のために起業するのが目標だ。「不動産投資を始めてから年収は倍になりましたが、住んでいる場所も生活レベルも変わっていない。結局、どれだけ手元にお金を持っていても、いつか死ぬから意味がない。それよりは社会に還元したいという気持ちが強いんです」

将来に不安を感じている友達の姿が、今の自分を後押ししている。「今までの自分の経験と資格を生かして、その人の人生を丸ごとプランニングする『ライフコンサルタント』のような仕事を考えています。不動産売買や投資後の税務、法人設立もそうですが、購入以前に属性を上げる必要がある人には転職サービス、転職が難しい人には留学の斡旋など…。投資を始める前段階から購入後までワンストップでサポートし、お金がなくて大学に行けない人のためにはファンドを作ったりすることも思い描いています」と夢は大きい。

「若い女性たちに伝えたいのは、属性が低い、お金がないからといってあきらめないでほしいということ。今からでも資格を取ったり、留学をしたり、できることは必ずあるはず。絶対に努力次第で道は拓けると思うんです」

(楽待新聞編集部 金澤徹)