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前回のコラムでは、サブリース業者に委託する事は、決して手放しで儲かるシステムではないという事をお伝えしました。今回はサブリース業者の実態「その2」として、さらに掘り下げたいと思います。
テーマは2つ。サブリース業者の収入源と、サブリースの本来の価値についてです。
サブリース業者の収入源
サブリース業者の収益源は「サブリース手数料」「修繕費」「入居手数料」の3つです。
・サブリース手数料=入居者家賃-オーナーに支払う家賃
・修繕費=原状回復費、大規模修繕費、設備トラブル対応費
・入居手数料=更新手数料、敷金(償却)礼金 等
サブリース業者は賃貸業務をほとんど外部に委託し収益を得ています。その費用が一般的な相場に準ずるものなら納得がいくのですが、強い立場を利用し高い利益まで乗せている。本来なら借り上げているのだから、実際にかかった分だけの請求にしてほしいですよね。
さらに更新手数料、敷金(償却)礼金、共益費の余剰金なども収益とし、決して損をしないシステムになっています。
サブリース手数料に関しての注意点は、手数料の基準になるのが新築時の査定ベースになるのか、周辺相場の査定ベースになるのか、実際の成約ベースになるのかを知っておく必要があります。この基準の違いで大きく収益が変わってくるからです。
業者の立場からすると、この収益が入ってこないと一番ダメージが大きい。なので、なるべく有利な条件へと導こうとします。
また、入居促進に関しても恐ろしいのは、審査が通り、家賃が払えれば人物像に関係なく入居を許可してしまうリスクがあるという事。
これが仲介会社系で自社支店網で管理するサブリース業者であれば、店頭で人物像を見極める事ができますし、質の悪い入居者を入れれば自身に跳ね返ってきますから、入居させる可能性はまずないでしょう。
それ以外のサブリース業者だと、ロスをなくすために仲介会社から申し込みがあればとにかく入れてしまいます。
これは、私が国内大手の有名どころSハウスやDハウス等のサブリース案件の、現地調査をした際のお話です。該当物件の駐車場に異様な雰囲気を持つ黒塗りの型落ちの高級車が並んでいて、○社会勢力風の方が出入りしていました。明らかに一般人ではない風貌に私も即時その物件を見送り(笑)。まだ築10年も経っていない綺麗な案件だったのに…。また、暴走族のたまり場のようになっていた事、風俗店の待機場になっていた事もありました。
そして、修繕費に対しても油断大敵です。入退去の際に必ずついて回る修繕。一般的に、発注した施工業者から上がってくる請求に15%~25%、高いと30%乗せてオーナーに請求がきます。これも、サブリース業者の収入源になります。
サブリース業者の中では、原状回復費なども含まれているパッケージプランなるものもあります。定額で安心そうに見えますが、これがまた曲者。本来は物件の価値の維持、もしくはアップさせる為の費用なのです。なのに、少しでも費用を削る為に修繕を最小限にとどめたり、行わなかったりする事も多々あります。
本来、その物件に対して使うべきお金を払っているのに使われず、業者の懐に入ってしまうなんておかしい…。その為に払ったお金なら、きちんと収支表が欲しいものですが、そんなものが出される事はまずありません(苦笑)。
例をあげますと、以前、私がお付き合いしていた管理会社は原状回復費を負担するサブリースも行っていました。担当者曰く、本来交換が必要な個所でも会社が費用を認めてくれず、業者ではなく素人である自分たちで、クロスやクッションフロアの張り替え、清掃や補修の施工を行っているとのことでした。
結果、内装のクオリティーは×、クロスもつぎはぎだらけ。当然ながら物件の競争力が落ちてしまい、家賃も下落。そして下落したお部屋のクオリティで決まる家賃査定をもとに、更新時にサブリース料を決定する事になり、オーナーに跳ね返っていく事になります。
一方、社員がきっちり技能訓練されており、プロと遜色ない技術を持っているスタッフで運営しているサブリース業者もあります。この場合、施工業者に発注するコストが抑えられ次回の入居案内までの時間が短縮されるのでメリットがあります。この場合は企業努力として評価すべきでしょう。スタッフの技能、施工体制はサブリースを検討する際に確認しておくポイントになります。
レオパレスが訴訟問題になっていますが、これがいい例でしょう。私がハウスメーカーに勤務していた時のお話です。
某サブリース業者と契約を結んで10年を迎える物件をお持ちのオーナーさんが、契約更新の際に言われたフレーズ。
オーナー
「安藤さん、業者から『サブリース契約を更新する条件として、外装を当社の基準クオリティにしていただく必要があるので検討してほしい』と言われたけど、この建物で修繕の必要あると思う? 金額についても高いよね?」
私
「ちょっと高い気もしますが、他社で相見積もりする事はできませんか? 確かに10年過ぎるくらいには大規模修繕の必要性が出てきますが、まだ数年はしなくてもよい状態だと思いますが…」
オーナー
「でも、この会社で工事しないと契約更新してもらえないし、困るから…」
その後、サブリース業者の言われるまま、泣く泣くそのサブリース業者に工事を発注したと険しい表情で語ってくれました。かけた費用は500万円。私が見る限りではまだ外部工事は必要なし。仮に行ったとしても、本来なら300万円~350万円程度の工事で、施工費用が高すぎると思いましたが、本人には私の口から言えませんでした…。内装も2DK、45㎡程度の間取りで、200万円程かけて順次改装しているそうです。
一棟6戸の案件です。1戸の家賃は6万円/月、72万円/年。6戸だと432万円/年。外装工事の費用を回収するには、約1年少々。内装工事の費用を回収するには、1戸につき3年程かかることになります。
これは満室想定の家賃で、銀行返済やその他の費用を含めていないので、キャッシュフローベースで考えたらいつになるやら…。ちょっと恐ろしいですよね。
これだけかける必要はあるのか、誰の為の賃貸経営なのか。
もちろん、必要な工事であればしなければなりません。物件の価値を必要以上に上げても、家賃がアップできるとは限りませんし、かけた費用を回収し、収支が維持できている状態でないといけません。
でも、このオーナーだけでなく、これが一般的な実態で、納得はしてなくても打ち切られるのが恐くて受け入れてしまっているオーナーが多い。
私は静観するしかなかった。冷たいようですが、当時の立場としてそれ以上、他人の契約条件に入り込む事ができなかったのです。今ならズバッとアドバイスしています(笑)。
敷金(償却)や共益費に関しても、使わなかった分に関しては余剰金としてプールしておいてほしい。本来なら物件の維持管理に使うものなので、オープンにすべきですよね。大抵は借上げ業者の利益になっています。
オーナーから大切な物件を借り上げて1日でも長く満室経営を行い、安定した借上げ賃料を提供する事。
そして、プロとして物件の適切な維持管理を行い、オーナーが末長く安定経営できるよう助言する「パートナー」になる事ではないでしょうか。そして共存共栄していく。
なのに昨今では、新築を建てたり、中古を買う際に融資が受けやすくなるからとか運営の手間が省けるからとか、表面的なメリットで判断されがちです。これが、売り手と買い手のニーズがマッチしてしまっているために、うまく利用されてしまい、陥る罠であったりします。
業者がオーナーの長期的な収支と財務、物件の維持管理を真剣に考えてくれているでしょうか? オーナーはサブリースのメリット・デメリットを理解しているでしょうか?
OKであれば安心です。これに少しでも不安を感じた方は、今一度立ち止まって冷静に判断して下さい。いかにも楽ができ、お得感がたっぷりな話しこそこそ要注意。どんな世界でもそうですが、無知な者が損をするのです。
サブリースで成功されている方は、システムをしっかり理解されたうえで、利用しています。例えばパンフレットに書いてある条件って交渉ができないように思えますよね。でも、交渉ができるケースが多いんです。借上げの手数料の料率や、物件維持管理の内容を条件を話し合いながら決めていく。あくまでも自分が主導であることが大切です。
この先数年で、この不動産投資ブームのしわ寄せが明るみに出てくるのは間違いないでしょう。というか、もうすでに出始めています。全てでなくてもよいので一般的な情報と事例を持っているだけで、相手の見方は変わり、事が有利に運びます。客観的な視点を持ち、助言を行ってくれる実績あるパートナーがいればさらに安心です。
昨今、不動産投資はネガティブな話題が多くなってきていますが、まだまだチャンスは沢山あると思っています。チャンスを物にするには、物事の本質は何かに気付く事が必要ですよね。
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