1200年以上の歴史を持ち、多くの世界遺産も存在する国内有数の観光地・京都。その確立されたブランド性に裏付けられ、この地に収益物件を持ちたいと考えるオーナーも少なくない。京都には大学や有名企業も多数あり、「底堅い需要がメリット」だという。さらに近年では観光客をターゲットにした民泊やゲストハウス、あるいは京町屋への投資手法も人気を集めている。

だが、現地取材を行うと、「京都の物件はなかなか買いづらいというのが実情」という声も。京都在住のオーナーらに現状を聞いた。

インバウンド需要の高さに注目 

京都の不動産コンサルタントで、株式会社タカエージェントの高下弘之社長は、「京都市内では、良くて6~7%の利回りです」と話す。全国的な物件価格の上昇も相まって、市中心部では4、5%といった物件も少なくないもようだ。

その一方で、京都では外国人観光客などインバウンド需要もある上、大学や企業が多いことから賃貸需要は堅調だといい、「現在は高値掴みをするような状況ですが、若干物件価格が高くとも入居率も高いので、利回りだけでは測れないメリットはあると思います」と解説する。

インバウンド需要に対応しようと、京都市内には多くの民泊やゲストハウスが設けられているといい、「現在新築や改修されている建物のほとんどが、ゲストハウスや簡易宿所といった旅館業のための建物です。既存の賃貸マンションでも、今はその多くを簡易宿所などに転用しています」(高下社長)。

JR京都駅前には、多くの外国人観光客の姿があった

だが、「個人の投資家が観光客だけをターゲットにすることは危険」と釘をさす。国内外の情勢によって、観光客が激減することもあり得るからだ。そのため、「例えばマンション1棟を持っているとすると、そのうち7~8割程度は通常の居住用として貸し出し、残りを民泊用などとして活用する、というように併用していくほうがリスクヘッジになると思います」と高下社長は話す。

なお、来年6月に施行される「住宅宿泊事業法(民泊新法)」では、年間の営業日数を180日までと制限しており、自治体によってはさらに条例で上限日数を定めることも考えられる。高下社長によると、夏は非常に暑く、冬は非常に寒いという京都の盆地気候も相まって、桜や紅葉の時期である春と秋に観光客がより増えるという。民泊事業を実践する上では、こうした季節を狙うのも1つの手だ。

手堅い需要を形成する大学・企業

京都市内を中心として数多く存在する大学も、京都の底堅い賃貸需要を形成する1つの要素となっている。総務省によると、2015年時点で京都府にある大学に通う学生は16万人超で、全国5位。さらに、京都大をはじめ同志社大や立命館大なども市内中心部にキャンパスを構えている。さらに京都市は市立芸術大(西京区)を2023年度に京都駅そばの下京区に移転する計画も発表しており、準備が進めば、学生向けの賃貸マンションや若者をターゲットにした商業施設の建設なども見込まれる。

全国主要都市と肩を並べる京都の学生数(出典:総務省「日本の統計2017」)

「今まで、京都の繁華街は四条や河原町といった、京都駅から離れた場所でした。しかし、今少しずつその重心が駅の方に向かって移動してきているのではないかと考えています。京都駅周辺は、今後発展していく可能性が高いと思います」(高下社長)

さらに、京都には任天堂や京セラ、日本電産といった有名企業の本社も多い。高下社長は「こうした学生や企業勤めのサラリーマンが全員京都の賃貸住宅に住むわけではないにせよ、手堅い需要があることは確かです」と話す。

京都の不動産投資市況の実態をさらに探るため、京都市や近郊に住むオーナーに集まってもらい、テーマに沿ってそれぞれの経験や知見を聞いた。

教えてくれたのは、京都や隣県の滋賀に物件を持つオーナーが集まる「京滋大家の会」の面々で、築古大家のコージーさん(以下コージー)、京都ママさん(以下京都ママ)、Hanakopapaさん(以下Hanakopapa)、shamojiさん(以下shamoji)、かまぼこ大家さん(以下かまぼこ大家)、大津市のサラリーマン大家さん(以下サラリーマン大家)の6人。

まず知りたいのは、京都の利回り状況はどうなっているのか、そして、京都物件が「買い」かどうかだ。

かまぼこ大家
直近で物件情報を見ても、築20~30年の物件でも利回りは5、6%といったところですね。

サラリーマン大家
京都市内中心部では、4、5%の物件もざらにあります。

コージー
そうなると必然的に、市内中心部ではなくて伏見区や山科区、近隣の宇治市、城陽市といった場所で、いい物件がないかどうかを探すイメージですね。

やはり利回りとしては厳しいという印象が多いようだ。一方で、京都における賃貸需要の高さは旨味でもあるという。

コージー
全国的な流れの中では、京都の賃貸需要はかなり強いです。物件を買って条件を調整して、入居付けに困るということはあまり経験がありません。人が普通に住んでいる地域で「相場より家賃を下げても入らない」ということはほぼあり得ませんね。

こうした需要の高さを背景に、京都では敷金や礼金を各1~2カ月分は設定できることが多いという。「京都は全国でも更新料や礼金をしっかりとれることで有名ですよね」と、前出の高下社長。特に更新料では、1年に1~2カ月分得る事例も多かったというが、「だんだん厳しくなってきて、現在はやはり通常通り2年に1~2カ月分が相場」とみている。

サラリーマン大家
物件にもよりますが、入居者の入れ替わりのタイミングで、条件を緩和しないと決まらないということは徐々に増えてきています。

コージー
礼金1カ月分はかなり高い可能性で得られています。更新料は正直物件次第ですね。更新料を払ってでも住みたい人気のエリアなどであれば、設定できています。利回り12%のアパートを所有しているのですが、全6室のうち3室では更新料をいただいていますし、そのうち2室の更新料は1年に1カ月分です。また私の場合は、入居者が生活保護受給者であれば1年で1カ月分の更新料をお支払いいただいています。

生活保護受給者のほか、学生向けマンションでは短期間入居の場合が多いため、敷金や礼金、更新料をより多く支払ってもらうことも可能だという指摘もあった。

コージー
京都は、見た目の利回りが低くとも工夫の余地が多いのではないかと思っています。敷金や礼金、更新料もそうですし、賃貸需要の高さもあるので、京都の魅力はそこだと思います。

shamoji
私は大阪をメインに投資しているのですが、京都の良さの1つが空室が出にくいことであるというのは間違いありません。将来的に見ても、京都というブランドが確立されているので、価値が毀損しにくい。これは以前からですが、大阪に比べれば物件価格が高く、利回りが低い傾向にあるので、利回りを重視すれば大阪の方が「買い」になるかもしれません。利回りなのか、資産価値なのか、どこに重きを置いた投資をするかというスタンス次第ですね。

コージー
京都という土地柄、伝統工芸もありますし、観光客の需要もありますし、不況がきてすぐに工場撤退、というような地域とは違いますから、賃貸需要の手堅さはありますね。万が一需要が減ることがあっても、極端に半分以下になるような場所ではありません。盆地なので台風にも強く、地震の揺れにも強いと言われている。下手なエリアにバンバン手を出すより、京都で投資すること自体がリスクヘッジになるとも思います。