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以前のコラムで、融資実行前日にドタキャンされ、仲介会社・同社専務取締役(売主)の手付金不返還、違約金・仲介手数料請求があったことなどをお伝えしました。
当方は仲介会社に手付金の返還要求、短期間転売の債務不履行による損害賠償など、金融機関に債務不履行・善管注意義務違反・不法行為による損害賠償などを求めて訴訟をしていました。
2年以上経ちましたが、この度、この判決が出ましたので公表いたします。
今回の地方裁判所の判決では、悪徳不動産会社・悪徳金融機関にとって、非常に有利なものであって、今後、悪用されうる判例となります。不動産業界・金融業界・法曹界においても、良くないことだと感じています。
同じような被害者が出ないように、注意喚起しておいた方がいいと思いますので、恥を忍んで、執筆させて頂きます。
これまでの経緯
悪徳不動産会社は、他人物売買・中間省略登記・三為業者で、双方代理・両手仲介取引を狙っており、更には、当該会社の専務取締役(宅地建物取引業不届出)を個人として間に入れてきて、売買差益・仲介手数料(両手)の全てを手に入れようとしてきました。
その場合、売主が宅地建物取引業者ではなくなるため、クーリングオフも適用できませんし、瑕疵担保責任も、特約で排除できます。ついでに、仲介(媒介)契約は未締結、重要事項説明・売買契約締結前に、手付金を分割受領しています。
悪徳金融機関は、融資承認と言い、金銭消費貸借契約を締結迄し、その後、売買契約における融資白紙解約期限が過ぎ、融資実行・決済の前日に、特段の理由も無く融資をドタキャンしました。更には、当方の知らないうちに、お抱えのコンサルティング会社と共謀し、「重要事項説明書」・「売買契約書」の原本をコピーして利用し、売買金額等を高額に偽造、そのことを、当方のせいにしてきました。
そして、この悪徳不動産会社は、このことに便乗して、手付金は不返還。それどころか、違約金・仲介手数料迄、請求してきました。こちらが、数日で、融資金額を下げて、別件共同担保も増やしてまで融資再承認を取ったものの、すぐに他に転売していました。
そして、出た判決は…
以下は、地方裁判官の言い分です。それに対する、私の反論も加えておきます。
【買主について】
●買主が、宅地建物取引士等の有資格者、不動産取引の経験者、不動産経営関連コラム・著書執筆者等の場合、宅地建物取引業の登録をしていなくても、一般人とは異なり、不動産経営にノウハウを持っていると見做され、宅地建物取引業者との取引においても、特段の保護に値しない。
⇒実際は、宅地建物取引業者ではなく、立場の弱い一消費者。
【宅地建物取引業者について】
●手付金を、重要事項説明・売買契約等の事前に、分割で受け取っても構わない。
⇒実際は、宅地建物取引業法違反。
●仲介(媒介)契約を締結せず、融資の斡旋もせず、売買契約さえ締結させられれば、その後、買主の責めもなく、融資が実行されず、売買契約が実行されなくても、仲介手数料を請求して構わない。
⇒実際は、宅地建物取引業法違反。
●売主・買主双方の仲介になり、双方代理になることは勿論、宅地建物取引業の登録をしていない役員・従業員等を、個人として売買契約の間に入れ(中間省略登記・三為業者)、売買差益を抜いても構わない。又、その場合、売主が宅地建物取引業者ではないことから、クーリングオフも適用されないし、売買契約において、特約で、瑕疵担保責任を排除しても構わない。
⇒実際は、宅地建物取引業法違反。
●融資承認、金銭消費貸借契約締結後、融資白紙解約期限が過ぎ、融資実行・決済日前日に融資ドタキャンだが、契約は無効とはならない。
⇒実際は、錯誤無効。又、白紙解約解除留保付きの売買契約であっても、当然解除と解することもできる。(判例)
●買主の責めが無く、融資が実行されない場合、買主は融資金額を下げてでも再承認を取る旨売主と調整したにも関わらず、何の相談も無く、ゴールデンウィーク中といえども、1週間(2営業日)以内に支払えと言い、契約解除し、勝手に他に転売しても構わない。
⇒実際は、信義誠実義務違反、業務上横領。
●売主は、仲介不動産会社専務取締役で、売主の側の立場にのみ立ち、買主の立場には立たなくても構わない。
⇒実際は、利益相反・双方代理。
●買主に責めがなくても、手付金は返却しなくても構わない。違約金を請求しても、構わない。仲介手数料を請求しても、構わない。
⇒実際は、善管注意義務違反、信義誠実義務違反、権利の濫用、不当利得。
【金融機関について】
●電子メールで「重要事項説明書」・「売買契約」を送付されしても、見なくてもよい。
⇒実際は、善管注意義務違反。
●金融機関の担当者が融資承認と言っても、それは、金融機関の責任者ではないから、効力はない。
⇒実際は、使用者責任、表見代理。
●「重要事項説明書」・「売買契約書」等は原本・コピーも確認せず、売買金額も確認せず、融資承認と言い、金銭消費貸借契約を締結してもいい。
⇒実際は、善管注意義務違反。
●金銭消費貸借契約用にと収入印紙14万円を受け取っても、受け取っていないと言って、横領しても構わない。
⇒実際は、業務上横領罪。
●借主・買主の知らないままに、「重要事項説明書」・「売買契約書」原本のコピーを利用し、お抱えコンサルティング不動産会社等を利用し、金額等を改竄し、行内融資を通し易くしても構わない。又、そのことを、借主・買主のせいにし、融資ドタキャンしても構わない。
⇒実際は、私文書偽造罪、債務不履行、不法行為、名誉棄損罪。
●金銭消費貸借契約を締結しても、それは、借主の申込に過ぎず、諾成的金銭消費貸借契約は成立していない。融資が実行されて初めて、金銭消費貸借契約は成立する。融資承認、金銭消費貸借契約締結後、融資実行前日に、融資ドタキャンしても構わない。
⇒実際は、諾成的金銭消費貸借契約成立(判例)。又、金融庁ガイドライン違反、債務不履行、不法行為。
●自己資金を1割入れず、フルローンや、諸経費迄含めたオーバーローンは違法であり、融資ドタキャンしても構わない。
⇒実際は、金融庁ガイドライン違反、債務不履行、不法行為。個人の属性、リフォームを買主がする場合、売り急ぎ等優良物件を割安価格で購入する場合、別件共同担保を付ける場合等においては、フルローン・オーバーローンは、あり。
地方裁判所裁判官は、1名のみの主観で決められます。不動産業界・金融業界への理解もないものと思われます。
うがった見方をすれば、私への妬みもあるのかも知れません。金融機関・不動産会社等、長いものに巻かれる強い者の味方・グルという感じすら受けます。0対100で、私が悪い、悪徳金融機関・悪徳不動産会社には、全く落ち度は無いと言っています。私は、納得がいきません。
【買主】
●買主が、宅地建物取引士等の有資格者、不動産取引の経験者、不動産経営関連コラム・著書執筆者等の場合、不動産会社・金融機関等から評価されるというメリットがある反面、トラブルとなった場合、一般人とは異なり、不動産経営にノウハウを持っていると見做され、宅地建物取引業者との取引においても、特段の保護に値しないと見做される場合があるので、注意する。
自分は一般人ということで、敢えて有資格者とか、かなりの不動産経営経験者だとか、コラム・著書執筆者だとか、講師だとかは言わない。
【宅地建物取引業者】
●信頼のできる不動産会社と取引する。口コミ・インターネット・書籍等で悪評のある不動産会社とは取引しない。
●手付金は、その物件が欲しく、又、売主の責めで取引が中止となり、手付倍返しとなる際は、高額の方が有利だが、トラブルとなった際には返ってこない可能性があるので、払い過ぎに注意する。
●仲介(媒介)契約においては、融資の斡旋条項も入れ、買主の責めもなく、融資が実行されない等、売買契約が実行されない場合には、仲介手数料は発生しないようにしておく。
●仲介会社は、なるべく、売主・買主双方の仲介(両手)ではなく、買主のみの仲介(片手)になるようにする。自分の信頼できる馴染みの不動産会社をこちらの仲介会社にできるとよい。
又、他人物売買・中間省略登記・三為業者の場合は、避ける。宅地建物取引業を届け出ていない仲介会社の役員・従業員等を、個人として、売買契約の間に入れ(中間省略登記・三為業者)てくる場合は、避ける。
入れてくる場合、売主が宅地建物取引業者ではないことから、クーリングオフも適用されないし、売買契約において、特約で、瑕疵担保責任を排除してくる場合があるので、注意する。
●買主の責めも無く、融資が実行されない場合、売主・金融機関とも調整しつつ、最悪、融資金額を下げたり、別件共同担保を提供したりといったことをしてでも、再承認を取るよう努力する。
●売主が仲介不動産会社役員・従業員の場合には、仲介会社は別の不動産会社にするか、別のコンサルティング会社を介入させる。
●買主に責めがない場合、手付金は返却して貰う。違約金は請求されても、拒否する。仲介手数料を請求されても、拒否する。こちら側に故意・過失が無く、むしろ、不動産会社に故意・過失がある場合は、拒否すべき(今回の地方裁判所の判決はおかしいです)。
【金融機関】
●信頼のできる金融機関と取引する。口コミ・インターネット・書籍等で悪評のある金融機関とは取引しない。
●重要な事項(売買金額、融資比率、融資白紙解約期限等)については、口頭で話しても、電子メールで「重要事項説明書」・「売買契約」を送付しても、言っていない、見ていないと言われる可能性もあるので、場合によっては、録音しておく、電子メール開封記録を取っておく、確認の返信メールを貰っておく、電子メール記録をフォルダにコピー保存、写真撮影保存等、証拠を整備しておく。
●金融機関の担当者一人とのみやり取りするのではなく、時には、上司・責任者とも、電話・挨拶・面談しておく。
●「重要事項説明書」・「売買契約書」等は、案・雛形の段階、最終案の段階、原本を見せ、重要な事項(売買金額、融資白紙解約期限等)については、確認させる。
●金銭を手渡す際には、「領収証」を受領しておく。
●借主・買主の知らないままに、「重要事項説明書」・「売買契約書」原本のコピーを利用し、お抱えコンサルティング不動産会社等を利用し、金額等を改竄し、行内融資を通し易くする場合もあるので注意する。そういうことを持ちかけられても、関与しない。
●融資承認と言われたり、金銭消費貸借契約を締結したりしても、こちらに過失がなくても融資をドタキャンされる可能性もあるので、過信しない。融資白紙解約期限迄に、余裕を持って、融資実行・決済迄させる。逆に言えば、融資白紙解約期限は、融資実行・決済日以降にしておく。
●自己資金を1割入れず、フルローンや、諸経費迄含めたオーバーローンの場合は、融資をドタキャンされる可能性があるので注意する。個人属性が良い場合、優良物件を売り急ぎ・リフォーム買主実行等で割安で購入する場合、別件共同担保付保等でフルローン・オーバーローンの場合もしかり。
納得いかず、控訴
今回の裁判のための費用と、被害額を合わせると、5000万円以上にもなる見込みです。請求された手付金・違約金だけで3500万円以上ですし、弁護士費用が約250万円かかりました。裁判のための交通費や宿泊費は別途です。
こちらは高等裁判所に控訴しました。高等裁判所では、3人の裁判官ですので、1名のみの主観よりは、ましな判断がされることを期待します。
ただ、そうは言っても、同じ国の機関。地方裁判所の非を認めるか疑問無しとしません。過去の統計を見れば、高等裁判所で、逆転勝訴するのは、24%。和解になるのは、26%だそうです。
(※文中の意見は加藤隆さん個人の見解です)
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