
写真? naoko-Fotolia
今回は、私の所有物件について紹介します。私はこれまで、取得した物件は一度も売却をしたことがありません。年数が経つにつれて、ローンの返済が進み、完済した物件もあります。
その中で、世田谷区に取得し、所有し続けている賃貸併用住宅についてお話しします。当時の私はカメラメーカーに勤めているサラリーマンで、開発職から市場をサポートする部署に移った後でした。転勤の多い部署であり、私自身も海外転勤を希望していました。自宅を取得してもいずれは日本の自宅が空き家になる可能性がありましたので、その空いている期間は貸し出すことを考えていました。
エリア探しでは「家賃の高さ」に注目
そこで、自宅をより効率よく貸し出すことができるエリアをインターネット上で探したところ、そのエリアが世田谷区でした。
理由は、同一面積の部屋の場合、東京の中でも高い家賃を得られるのが世田谷区だったからです。東京で同様の建物を新築した場合、建物施工費用はほとんど同じです。建物建築費用が同じにもかかわらず、家賃が高いということは収益性が高くなるということです。
また、世田谷区は土地価格が高いといわれますが、それは整形地の場合でして、世田谷区以外の土地の整形地と同様の価格またはそれ以下の低い価格になる場合もある路地状敷地(旗竿地)を選びました。この土地の広さは23坪ほどでしたので、土地価格は3500万円ほどでした。この土地に戸建て住宅を新築しようと思ったのです。
当時は、すでにアパート1棟とワンルームマンション2室を賃貸に出し、住宅ローンを組んで購入した多摩地区のファミリータイプのマンションに住んでいました。ちなみに、この自宅は繰り上げ返済を重ねていたため、借入額の残りは500万円ほどでした。
2つ目の住宅ローンが受けられない事態に
新築するためには、土地と建物を合わせて7500万円ほどかかります。このうち6500万円の融資を打診しました。
しかし、ここで問題が起きました。それは、この世田谷区の土地と取得し、戸建てを新築するために銀行に融資の相談をしたのですが、融資を受けられなかったことです。
理由は2つありました。1つ目は、すでに住宅ローンを利用しているため、2つ目の住宅ローンを受ける事ができないというものでした。しかし、これについては自己資金で500万円の残債を繰り上げ返済して完済することで解決できました。
2つ目は、すでにアパートローンを組んでいて、こちらは短期に完済できる見込みがないため、高額の債務を負った属性として銀行に評価されたことでした。住宅ローンの審査の場合は個人の所得から返済能力を見ることと、アパートローンはリスクを大きく見られることから、この世田谷の土地に戸建て住宅を取得するために必要な金額の銀行融資は得られませんでした。
しかし、この世田谷の路地状敷地の土地は最寄り駅から近く、比較的割安な価格であったため、私自身どうしても欲しいなと思える物件でした。そのため、設計士さんや施工業者さんの協力を得て、高額にもかかわらず、ローン返済の負担を軽減できる賃貸併用住宅を建築するプランを作成しました。
当時勤めていた会社は一部上場企業でしたが、その給与額では満額融資が認められませんでした。しかし、賃貸併用住宅にすることにより、新規に取得する建物からも家賃収入が得られることを評価してもらうことができました。
世田谷区の家賃相場の高さや賃貸物件の空室率の低さ、さらに世田谷区の中でも東急田園都市線の最寄り駅とのことで、銀行がこの建物から得られる家賃収入を高く評価してくれたことが幸いしました。
建物についても、住宅ローン控除が得られるように自宅の面積を50平米以上とし、さらに総床面積の50%を超える面積を自宅の面積としました。このように銀行が住宅ローンの審査を通しやすいように、建物を銀行の融資条件に合わせたことも効果があったと思います。こうして、無事に住宅ローンでの融資を得られて、土地と新築の賃貸併用住宅を取得することができました。
ちなみに、この賃貸併用住宅は自宅と1世帯の賃貸であるため、住宅ローンの満額を家賃で賄うことはできなかったのですが、建物が完成後すぐに入居者が見つかり、家賃収入を得られることで、住宅ローンの返済の負担が軽減しました。
この1世帯の家賃は15万円で、ローン返済額が約22万円ほどですので持ち出しは7万円ほどです。
最近は、自宅プラス2~4世帯の賃貸など、工夫を凝らしたオーナーさんが増えており、このような場合は、賃貸併用住宅取得のローンの返済額のすべてを家賃で賄うことができています。この点では、私は急がずにもう少し自己資金を貯めて、せめて自宅プラス2賃貸の賃貸併用住宅を取得することができれば、より良かったなと思います。
住まなくなった賃貸併用住宅はどうする?
その後、私はサラリーマンを辞め、会社を立ち上げて事業主となりました。この世田谷の賃貸併用住宅には住む必要がなくなり、貸し出すことにしました。しかし、自宅として住宅ローンを借り入れていたため、この住宅ローンでは自宅を人に貸し出すことは許されませんでした。
そのため、この住宅ローンの残金について、アパートローンとして融資をしてくれる銀行を探すことになったことが難点でした。この苦しい状況は、理解を示してくれる銀行が見つかったことと、比較的高額な繰り上げ返済をしたために、何とか切り抜けられたのですが、住宅ローンをアパートローンに変えることは容易なことではないため、お勧めしません。
私自身、銀行探しには1カ月ほどかかりました。このとき訪問した銀行は19行です。
この物件は取得から10年以上が経過し、さらに繰り上げ返済を行ったこともあり、今では無事にアパートとして安定経営が継続しています。世田谷区にて戸建住宅の住宅ローンが下りなかった私でも、賃貸併用住宅の計画を立てたことで住宅ローンを活用できたという経験から、一般のサラリーマンで、給与からローンを返済する戸建住宅の取得ができない優良な立地(エリアや条件)でも、賃貸併用住宅の計画を組むことで、優良な立地に住宅ローンを組むことができるということがわかりました。
そして、いままでに世田谷区や目黒区や杉並区などを中心に、一般のサラリーマンに賃貸併用住宅のサポートをして、40件ほどの事例を積み重ねています。これから、賃貸併用住宅は、広く人に知られることになる自宅の取得方法になると思います。
このコラムを読んだ人の中で、これから戸建住宅やファミリーマンションを取得しようとしている人や、いま戸建住宅などの住宅ローンの返済が負担で改善したいと思う人がいましたら、この事例を参考にしてもらえればと思います。
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