写真© chachamal-Fotolia

はじめまして。元土地家屋調査士、現在は行政書士の片岡美穂です。よろしくお願いいたします。バブル期に不動産会社での営業を経験し、その後、土地家屋調査士へと転身しました。補助者見習い時代と本職時代とを併せて約15年実務に就いておりました。今は行政書士として業務を執る傍ら、戸建ての投資もしています。

土地家屋調査士って何者?

不動産投資をされている皆さんの中には、既に「土地家屋調査士」が何者なのかご承知の方もいらっしゃるかもしれません。でも、時折「シロアリ駆除専門家?」「探偵事務所ですか?」などと聞かれることもあり、まだまだ知られていない士業なのだな…と感じることも少なくありません。

また、最近注目されている住宅診断士と間違われることも増えました。彼らは中古物件のインスペクションを行う専門家です。建物の強度や問題のある箇所をチェックするお仕事のようです。

土地家屋調査士とはその業務内容が全く違います。名称に「調査」とありますが、建物の強度やその状態については調べません。登記に記載されることのみを調査します。所在地、種類、床面積、構造、建築年月日等です。

これからコラムを通じて、不動産についての境界、登記、測量などについてお伝えできればと思っています。不動産投資を行う場面でどのように土地家屋調査士を活用していただくと有効的なのか、事例なども交えながら、ちょっぴりと裏話もお届けしたいですね。

第1回目は土地家屋調査士が行う主な業務についてご説明します。

不動産の表題部の登記申請を行う

「不動産の登記といえば司法書士なのでは?」とよく言われます。司法書士は不動産登記の権利関係についての登記申請を行います。売買・相続・贈与などで所有権が移転した、融資を受けて不動産を担保にしたので抵当権の設定をする、といった場合です。

土地家屋調査士は、その不動産の表題部に関する登記を行います。権利は目に見えないですが、表題部に登記する内容は現地に行けば目に見える事項です。現地と登記を常に整合させることは、不動産所有者に義務として課せられています。その申請手続きのお手伝いを土地家屋調査士が行います。

例えば物件を建てたら、その実態について表示登記します。土地を兄弟で2筆に分けるなら、そのために測量をして登記申請をします。増築をしたら、その部分について変更があったことを申請します。

それでは、具体的にどのようなことを行っているのか、ひとつずつご紹介します。

○表題部の登記申請のための測量や各種申請

表題部には、不動産の物理的な状況を反映しなくてはいけません。そのためには測量を行い、図面にします。土地の現況が変更になる際には、その前提として様々な許可や確認申請が必要になる場合もあります。

許可等については土地家屋調査士が登記業務の前提として行えるものと、他の資格業に委ねなければならないものとがあります。例えば農地を宅地に転用するための農地法の許可は、行政書士の独占業務です。開発許可については登記前提で土地家屋調査士が行うことのできる自治体が多くなっています。

○境界線を確認する業務

お隣との境界線をきっちりとしたい場面とはどんな時でしょう。物件を建てるとき、相続して皆で分け合うとき、売却するときなどですね。登記を前提とする確定測量が殆どですが、ブロック塀を積むため、お隣との紛争解決の手段としてご依頼される場合もあります。

まず法務局で対象地に関連する土地の沿革(その土地の経歴)、各種図面、役所では官民地との接面状態などを調べ、現地を測量し、それらの結果を用いて近隣の方との立ち合いを行います。すんなりと決まることのほうが少なくて、いろいろと揉めてしまうケースが多いです。

その主な理由としては、土地家屋調査士が見出すのは「筆界」といって土地のそもそもの境界線であることです。話し合いで決めるものではなく、本来の筆界を確認することを仕事としています。複雑な話になりますので、また別の機会でじっくりと説明させてください。

○地図訂正、地積更正登記

現地と登記の表示に間違いがあるとわかった場合、現地が正しい場合には地図訂正、地籍更正といった登記も行います。正確には地図を訂正するのは法務局の登記官の職務なので「地図の間違いを見つけたので訂正してください」という意味合いで地図訂正申し出を行います。

法務局に備わっている地図、公図の殆どは、とても古い時代に作成されたものが少しずつ整備されてきたものです。最も古いところでは、太閤検地の際に縄張りして測量した時のものが残っている場合もあります。和紙に筆で描かれた公図を見たことのある方も多いのではないでしょうか。このような地図や登記簿の記載に間違いを見つけた場合にも、関連する土地所有者との立ち合いを重ねて訂正や更正の手続きを行います。

○公共用地の払い下げや物納のための確定測量

公共用地の払い下げで最もわかりやすい事例は、水路や里道の払い下げです。現地では既に存在していない里道や水路が、法務局の公図上にまだ記載されて残っている場合があります。投資対象物件でこのような物件に遭遇し、購入をあきらめた方もいらっしゃるかもしれません。

里道や水路はかつて農耕のために設けられた国有地です。しかし急速な住宅地の開発で道路や河川となって付け替えられ、手続きが曖昧になっているまま、使用しなくなった里道や水路の上に物件が建っている場合も少なくありません。

口約束で道の付け替えなどが頻繁に行われていた時代もあります。でも国有地ですから、登記所の資料上はれっきとした不法占拠となってしまいます。付け替えたのであれば、ちゃんとその部分を国から払い下げてもらう手続きをしなくては、取引の際の弊害になりますし、銀行の融資も下りません。

土地家屋調査士は古い資料等を徹底的に調べ、見えなくなってしまった公共用地の場所を確認し、払い下げを受ける手続きを行います。

また相続が発生した際に現金で相続税が払えない場合、現物不動産で納付することがあります。物納と呼ばれているのですが、このための確定測量も土地家屋調査士が行うことがあります。税金が絡むととっても厳しい規定で、精度の高い測量が求められる業務です。

表示登記一筋の士業

このように業務の内容をご紹介していると、案外いろんな業務だな、と思われたかもしれません。でも土地家屋調査士は、表示登記に関する業務しか殆ど行っていません。

司法書士は不動産の登記もあれば法人の登記、裁判所事務、成年後見業務、と多分野の業務をこなします。行政書士では数え切れないほどの許認可申請を取り扱います。土地家屋調査士は「表示登記」に関連することのみといっていいくらい、そこだけに特化した業務を行っています。

マンションの登記を専門にやっている、公共の嘱託登記を多く取り扱っているなど、得意としている分野はそれぞれあるかもしれません。でも、どれもみな最終的には不動産の表示登記に関する業務に関連しています

初回から業務に関する複雑な説明が多くなってしまいました。土地家屋調査士が取り扱う表題部分の登記については、収益物件の取引を行う上でしっかりチェックしておかなくてはいけないことがいくつもあります。次回からは、事例や裏話などを交えながらわかりやすく、登記や境界について説明させていただきます。