写真© inoumasa-Fotolia

皆様は「生産緑地法の2022年問題」をご存知ですか? 実は不動産投資家の間で、2020年東京オリンピックに次ぐホットな話題なのです。

生産緑地というのはひと言でいうと、大都市圏に存する市街化区域内の農地のこと。国土交通省の「平成25年都市計画現況調査」によると、現在1万3859ヘクタールが存在しています。1991年の生産緑地法改正により、市街化区域内の農地で生産緑地地区に指定されると、所有者は農地として管理することが義務付けられました

また、生産緑地の指定から30年経過したとき、所有者は市町村に対して買い取りの申出を行うことができ、市町村は特別な事情がない限り、時価で買い取らなければならないと定めています。

1992年から30年が経過する2022年以降に、一斉に買い取りの申出が行われた場合、財務的理由により市町村が買い取るということは難しいと思われます。その結果、開発業者が購入することにより、宅地化が進むのではないかと予測されています。これが「生産緑地法の2022年問題」といわれるものです。

指定されると、どんなメリット・デメリットがある?

平成バブルのころ、三大都市圏を中心として地価が高騰する中、市街化区域内の農地に対しては宅地化の促進と税負担の公平性の確保が強く求められることとなりました。これに対応するため、三大都市圏の特定市では平成3年以降、保全する農地と宅地化する農地の区分が行われ、保全する農地については生産緑地地区の指定が行われたのです(H24年、農林水産省「都市農地に係る土地利用計画制度について」参考資料による)。

生産緑地に指定されることのメリットは、相続税、固定資産税などの税金が宅地に比べると非常に安くなることです。相続税での土地の評価額は、宅地の65%~90%も減価されます。固定資産税も農地扱いになるため、規模にもよりますが、数百円から数千円となります。

反対に、デメリットとしては「建築物の新築、宅地造成などを行う場合には、市町村長の許可を受けなければならない」とされ、「更にこの許可は、農産物の生産集荷施設や市民農園の施設などを設置する場合以外は原則として許可されない」となっています。ひと言でいうと、生産緑地に指定された土地に建物は建てられないということです。

 メリット

税金が安い

 デメリット

建物の建築が制限される(原則できない)

2022年に指定が解除されるとどうなる?

上にも述べましたが、生産緑地の指定から30年経過した2022年以降、生産緑地を開発業者が購入することにより、宅地化が進む可能性が高いと思われます。

ただし、国も農地の転用対策として「都市緑地法等の一部を改正する法律案」を平成29年2月10日に閣議決定しました。この中で、

[1] 生産緑地地区の一律500㎡の面積要件の緩和(一律500㎡から条例で引下げ可能に)

[2] 生産緑地地区内で直売所、農家レストラン等の設置を可能とすること

[3] 生産緑地の買取り申出が可能となる始期の延期(30年経過後は10年ごとに延長可)

について記しています。

・生産緑地の面積を引き下げて、適用範囲を増やすこと

・生産緑地で利益を得ることが可能になり、維持しやすくなること

・30年経った後も更新することにより、市場に出る生産緑地の減少を目指していること

などを目的としていると思われます。

現在、東京、名古屋、大阪の三大都市圏を中心に生産緑地の総面積は1万ヘクタール以上あります。その生産緑地の8割が2022年、指定期間である30年の期限を迎えるようです。東京都全体では3500ヘクタール近くあり、生産緑地面積の第1位は町田市となっています。

 順位

区・市名

生産緑地面積

1

町田市

292.52ha

2

八王子市

276.28ha

3

立川市

240.19ha

4

練馬区

228.06ha

5

小平市

215.59ha

東京都内市街化区域内農地面積(平成15年1月1日現在)

1ヘクタールは1万平米なので、例えばこの8割が30年の期限を迎えるということは、約2780万平米が期限を迎えるということです。

そのうちのどのくらいが宅地として放出されるのでしょうか?

 区分

生産緑地面積

特別区

466.1ha

市部

3012.4ha

東京都計

3478.5ha

東京都都市整備局資料(平成23年4月1日現在)

それを予測するのはなかなか難しいですが、私は意外と少ないのではないかと思います。なぜかというと、地主さんは「先祖伝来の土地を売却する」ことを非常に嫌がるからです。「親の代からの土地は子供たちに引き継いでいく。売却するか否かは子供たちに任せたい」と考えている所有者が多いのです。しかも、上記に述べたように、今後はレストラン等の設置も可能になり、収益を得やすくなっていくことが予想されます

従って、生産緑地の大部分は更新されると考えます。そもそも駅から遠かったり、都心から遠い不便な場所は、戸建としての実需もアパートなどの投資用としてもニーズがなく、そのまま生産緑地として利用せざるを得ないのです。更新しないで売却したり、生産緑地を解除してアパート等を建てたりすることを選択する農家の方は、全体の1割程度ではないでしょうか?

個人投資家への影響は? 

とはいっても、生産緑地のうちある程度は、投資用アパートやマンションとして市場に出てくると思われます。その地域が供給過剰になれば、個人投資家への影響も考えられます。

その対策は、投資不動産の選択の基本に戻って、一も二も「現地調査」を行うことです。現地調査をすることで、周辺のアパートの数、空室の状況、駐車場や生産緑地など将来アパートになりそうな土地の状況の把握ができます。生産緑地のある場所が都心に近いほど・駅から近いほど、アパートになる確率は高いといえます。

不動産投資にとって基本的な部分、

・現地調査を含む市場分析

・賃料分析

・空室率調査

・将来動向調査

をしっかりと行うこと。これが、将来にわたって安定した不動産賃貸経営を続けられる唯一の方法なのです。