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地方での不動産投資は、高利回りを狙うことができる一方でリスクも大きい。生産年齢人口の減少が著しい中で、いまだ大手ビルダーによるアパート供給が続いている。供給過剰の状況下では、家賃の値下げや差別化のためのコストがかかり、利回りが低下。最終的に損切りしようにも売却できず、コストがかさむばかり、という状況になりかねない。

そんな中、空室リスク・家賃下落リスクを回避することができる「譲渡型賃貸」という新たな投資法が登場した。なんらかの事情で住宅ローンを組むのは難しいが、マイホームを手に入れたい人々を入居対象とし、一定期間の賃貸借契約の中で安定した賃料を受け取り、契約期間が終われば物件を入居者に譲渡するという仕組みだ。

果たして、「譲渡型賃貸」は投資として有益だといえるのだろうか? 譲渡型賃貸を考案したリネシス社の代表取締役・森裕嗣さんに、譲渡型賃貸の仕組み、実際の利回りなどについて聞いた。

「駅の周りに人がいなかった」

森さんが譲渡型賃貸を思いついたきっかけは、結婚を機に妻の地元である秋田県に引っ越したことだ。森さんは当時について「駅の周りに人がいなくて驚きました」と振り返る。

同県の人口は平成27年時点でおよそ102万人。47都道府県ではワースト10に入る。さらに人口減少も進んでおり、総務省が発表した2016年10月時点の人口推計の調査によると、秋田県の人口増減率は前年比マイナス1.30%で全国最下位。また、地価は坪単価8万円と全国で最も低いが、低所得や非正規雇用、債務整理、奨学金返済滞納などの事情で、住宅ローンに通らない人は持ち家を諦めるしかない。そんな状況を改善しようと生まれたのが譲渡型賃貸だ。

投資家も入居者もトクをする仕組み

「譲渡型賃貸」の仕組みを簡潔に説明する。家を持ちたいと思う人が専用サイトに登録し、希望するエリアと建物プランを選ぶ。投資家はメルマガやセミナーで情報を得ることができ、投資家と入居者がマッチングすれば、投資家が土地代と建築費用を負担し、地元の建築会社(加盟店)が物件の建築をスタートさせる。

投資家と入居者は、定期賃貸借契約と譲渡予約契約の二つの契約を交わす。賃貸借期間は最小10年〜最大28年の間から選べる。投資家は建築費用などのほかに、固定資産税や毎月2000円(全国一律固定)の管理費、建物表題登記などにかかる費用を負担する。投資家が建築費のための融資を受ける際は、入居者が選択した賃貸借期間以内の借入期間を設定する。

<図1 譲渡型賃貸関係図>          (出典:リネシス株式会社)

<図2投資家と入居者の契約図>           (出典:リネシス株式会社)

入居者からのクレームや家賃管理などはリネシス本部が行うため、投資家は一切手を煩わすことなく、安定した賃料収入を得られる。

譲渡型賃貸を所有することで、投資家にはどのようなメリットがあるのだろうか。繰り返しになるが、空室リスクは通常の賃貸と比較して低い。予め入居者を決めてから建築するため、物件を購入してから入居者を募集する一般的な新築投資と違い、完成時から安定した収入を得られる。また、5年以内の契約解除には、入居者に違約金が発生する仕組みになっている。

譲渡を前提とした投資のため、出口戦略とセットになっているのも利点だ。経年で資産価値が下がり、売却できないという心配がない。

また、賃貸借契約中に賃料の減額がない。一般的に投資物件は年月が経つにつれて資産価値が落ち、状況によっては予想外の賃料減額に陥る場合がある。しかし、譲渡型賃貸では借地借家法第38条7項により、定期賃貸借契約においては例外的に賃料の減額をしないというルールが採用される。

利回りは全国一律だ。たとえば賃貸借期間が20年の場合の表面利回りは7.5%、実質利回りは6.0%〜6.5%となっている。利回りが高いとは一概にはいえないが、入居者の定住を想定しているため空室がなく、最終的には譲渡という出口を設けているためローリスクで、リターンが安定しているのが魅力だ。

通常戸建物件と譲渡型賃貸 20年運用後の収益に大きな差

ここで通常の戸建賃貸と譲渡型賃貸で、家賃7.5万円とした場合の20年間の収支をシミュレーションしてみる。

通常の戸建賃貸では空室リスクと原状回復費用の発生、また経年による賃料の下落が避けられない。一方で譲渡型賃貸ではそれらの発生リスクが低いため、20年の運用後には大きな差が出る。

4棟分の合計値を以下の条件で比較してみよう。

土地・建築費・諸経費

4800万円

表面利回り

7.5%

家賃(通常戸建)

7.5万円(共益費3000円、駐車場費2000円)

家賃(譲渡型賃貸)

7.5万円

家賃下落(通常戸建)

5年で3%下落

出口(通常戸建)

20年後売却(売却時利回り15%)

年間利回り6%

20年後譲渡

20年間の総収入は通常の戸建賃貸で約6870万円、譲渡型賃貸で約7200万円となり、譲渡型賃貸の収益性が高いことがうかがえる。

また、同社が長野県で実際に建築予定の譲渡型賃貸物件では、土地代や建築費を合わせた投資額が約1320万円。入居者と20年の定期賃貸借契約と予約譲渡契約を結び、月額約8万2500円の家賃収入を得られる予定である。

ただし、メリットばかりではない。空室は原則ゼロといっても、賃貸契約中に入居者が退去する可能性はある。その際にはどうすればよいのか。

森さんは「中古物件として売却することを勧めます」と話す。入居者に途中退去されても、投資家の損失を最小限に抑える仕組みになっている。大きくは「権利承継」と「リネシスに登録している投資家に紹介する」といったふたつのサポート体制がある。

ひとつめの権利承継のサポートでは、売却に関して権利を承継するサポートを、リネシスのネットワーク本部から受ける必要があるという。というのも、譲渡型賃貸では「借主が賃貸期間満了後に土地建物譲渡を貸主から受けられる」権利が、土地と建物双方に仮登記されるためだ。

ふたつめの投資家への紹介のサポートでは、仮登記の土地、建物は一般の不動産市場での売却が難しいため、リネシスのネットワーク本部に登録している200人を超える投資家に対して、譲渡型賃貸住宅の売買市場での売却の斡旋をする形になっているという。

売却に至った場合でも、本当に元本割れしないのだろうか? たとえば契約解除違約金の発生がなくなる5年後以降に入居者が退去した場合、その間の賃料収入と中古住宅売却益を足した金額が、現時点では購入価格以上になるように設定されている。ただし市況の変化によって、将来的には売れたとしても購入価格に届かないケースも出てくる恐れはある。

滞納リスクが低い理由

譲渡型賃貸入居者のターゲットは、非正規雇用などで年収が低かったり、携帯電話料金の滞納などで信用情報に履歴があったりして、住宅ローンが通らない人たちだ。投資家からすれば家賃を滞納される不安が拭えないが、森さんは「運用開始から18カ月経ち、最も長く入居する方も18カ月となりますが、これまでに滞納は一度もありません」と話す。

滞納に備えて保証人をつけたり、リネシスが投資家に対して家賃保証を提供したりと、リスクを抑えているのはもちろんだが、入居者の心構えも要因だとみている。

「自分の家になるという希望があるからか、入居者の家賃の支払いの優先度は高いです。入居者の中にはシングルマザーや、夫婦揃って自己破産を経験した人など、ようやく念願の戸建に住めた人たちがいます。そうした思いが、滞納の大きな抑止力になっていると思います」(森さん)

出口として、買主・借主が条件に納得すれば通常の賃貸物件と同様にオーナーチェンジ物件として売却することも可能だ。また、抵当権等に優先する形で譲渡予約契約の仮登記が設定されており、有事の際にも入居者が住み続けるための対策は施されている。

入居者が払える家賃帯、投資家にとって魅力の利回り、建設会社が建てられる価格が揃っており、また、人口減少が進む地方の未来に貢献するローリスク・ミドルリターンで安全性が高い不動産投資だと森さんは言う。

特に、資産デフレが進む地方での不動産投資においては、空室リスクの低さは大きな武器になるだろう。

○取材協力/リネシス株式会社
https://www.renesys.co.jp

○参考
秋田県
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/index.htm
http://tochi-value.com/akita/