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2017年も残すところあと約1カ月。不動産投資市場に目を向けると、今年は全国的に物件価格の上昇傾向が続き、利回りの低下から規模拡大を控える投資家も増加。一方、地銀を中心に金融機関の融資姿勢に変化が現れてきているものの、低金利で資金調達がしやすい状況は続いており、購入意欲が旺盛な投資家も依然として多い。

果たして今は「売り時」なのか、それとも「買い時」なのか? そして、これから「狙い目のエリア」はどこか? 楽待新聞の読者を対象にアンケートを実施し、不動産投資家が「いま」の市況をどのようにみているかを探った。(調査期間:2017年11月8~19日、有効回答数:294件)

いま、投資用不動産は売り時だと思いますか? 買い時だと思いますか?

■「今を逃したくない」

現在の市況については、やはり物件価格の高騰が続く中で「高値で売れるチャンス」と、「売り時」とみている投資家が多い。新規参入者が増加し、融資が引きやすく購買意欲も高いことから、「売り手市場の今を逃したくない」と考える投資家が目立つ。これから融資が厳しさを増すことを見越し、「売りたくても売れなくなる」という危機感を持っているケースも多いようだ。

購入する視点では、利回りの低下から「買い時ではない」と判断する投資家が多数。首都圏を中心にミニバブルの様相を呈しており、過熱する市場に警戒感を示す声も目立ち、買うには割高すぎて「待ち」の時期と考えているようだ。

「売り時」の意見

「低金利・銀行融資が潤沢で需要が供給を上回っているので、物件価格は高止まり。もうそろそろ限界点かと」(千葉・65歳男性)

「利回りが低くても買い手が現れる。買い手に融資が付きやすく、強気の価格で利益が得られるから」(大阪・31歳男性)

「都心は10年前の相場を考えると異常な低利回りで取引されていて、これ以上の上昇は考えにくい。海外勢もそろそろ売りに走る」(神奈川・36歳男性)

「昨年8000万と言われていた父親のマンションが今年1億3000万で売れたから」(愛知・59歳男性)

■優良物件は眠っている

一方で、「買い時」と答えた読者からは「まだ融資が引きやすいから」という声が最も多かった。日銀・金融庁の監視強化が報道されるなど、多くの投資家が融資の厳しさを指摘しているが、それでもまだ金融機関の姿勢は積極的という意見が目立つ。逆に融資が厳しくなっていることから、物件を買える人が少ないため今こそチャンスと考える投資家もいる。

東京五輪に向け、しばらくは値上がりが続くと見ている投資家も少なくない。首都圏の読者を中心に「価格が高騰している現在もまだ優良物件がある」「中には掘り出し物もあり、交渉次第でいい物件が買える」といった声も多く聞かれた。

「買い時」の意見

「全体的には融資が付きづらくなっているが、それでも融資してくれる金融機関はまだあるので」(宮崎・45歳男性)

「いい物件があれば、いつでも買い時。最近いい物件の情報が多く入ってくるから」(岡山・33歳男性)

「価格が高く利回りは低いが、融資も付きづらく買える人は多くない時期。ピンチではなくチャンスだと思う」(愛知・58歳男性)

「融資が厳しくなっている今こそ、自己資金を蓄積してきたものが物件を買う好機である」(東京・75歳男性)

■結局は投資戦略次第

最も多かったのは「どちらともいえない」という意見。銀行融資が絞られていることから、「買いたくても融資が受けられず、売りたくても買主に融資が下りない」という声が上がった。また、「今が転換期」とみる読者も多く、「ピークから下降局面に向かうのを待つタイミング」「融資引き締めでもうすぐ価格が下がるはず」という見方も多かった。

目立ったのは「結局は本人の投資戦略や物件、エリア次第」という回答。「自己資金に余裕があれば待ち、借入必須なら今が買いのタイミング」「物件を持っていない人は融資が厳しくなる前に買うべき」といった意見もあった。節税やキャッシュフロー狙い、転売目的など、投資スタイルによって判断は分かれている。

「どちらともいえない」の意見

「区分マンションを売りに出しても希望価格で売り手が見つからず、新たに築古戸建てを探しても指値が通らず安くならない」(栃木・39歳男性)

「高いから売り時ではある。が、都市部のいい物件も売りに出ているので、交渉次第でいいものが買える買い時である事も確か」(愛知・40歳男性)

「物件選びを間違えず、長期保有前提なら利益確保は可能。ただ融資が厳しくなってブームが冷めてからの方が追加購入は有利」(東京・55歳男性)

「一度きりの人生。自分の意思で動かせないマーケットの波に合わせたり、1、2%程度の利回りの差を気にしたりするより、人それぞれのライフサイクルでタイミングを逃さないことの方が大切だと思う」(大阪・48歳男性)

あのコラムニストはこう見ている

■どこでも「鉄板」はある

埼玉サラリーマン大家さん
投資歴:約15年
所有物件:東京都、埼玉県に6棟、57室
総投資額:3億円弱
年間家賃収入:3000万円

基本的には売り時だと思います。もうじき相場に変化が現れる気もしますが、高値水準が続いている今が売却したい方にとってはチャンスタイムでしょう。ただ、私の場合は売却は考えていません。どんな時期でも買うに値する物件を探して、買ったら売らずに持ち続けるのが基本戦略です。

今後の人口減少を考えると、関東圏では国道16号線の内側までを投資エリアとしておいたほうが安全度は高いかもしれません。1都3県以外に自宅がある方なら、自宅近くのエリアで今後20年くらいは賃貸需要が持ちそうな「鉄板」の地域が狙い目だと思います。そうすれば地銀や信用金庫のエリア内なので融資にも強くなり、経費率の低い筋肉質な経営が可能となります。すると、遠くの投資家では利益が出ない物件でも利益が出るのです。

都心では「駅前」という要素が重視されますが、地方になると駅前は暮らしにくい場合もあります。「新築戸建てが増えている」「有力なチェーン店が多く出店してきた」などが判断材料になるでしょう。どんな地域でも、10年、20年と長期的な視点で儲かる賃貸経営を目指していけば健全に資産を増やせると思います。逆に、厳しいエリアで安く仕入れて、高利回りで運営して数年で投下資金を回収する手法もあります。どっちが良いかは人それぞれですね。

1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の中で、今後の投資先として狙い目だと思う「駅」は?

1位(9票)…北千住
2位(8票)…大宮 品川 橋本
5位(7票)…横浜
6位(5票)…二俣川 
8位(4票)…蒲田 浅草

■「穴場の街」から「本命」に

リクルート住まいカンパニーの「穴場だと思う街ランキング」で3年連続1位を獲得している北千住がトップとなった。JR常磐線、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武伊勢崎線、そしてつくばエクスプレスの5路線が乗り入れるターミナル駅としてアクセスは抜群。近年は駅前の再開発が進み、5大学のキャンパスが集結する「学生の街」としてもにぎわいが増している。

読者からは、物価の安さや商業施設の充実ぶりなど、入居者視点での魅力が投資対象としての評価につながるという意見が多かった。「メディア露出で注目度が上がっているわりにはまだ安い」「城東エリアの中では価格帯も狙い目」など、人気に対して割安という点を指摘する声も目立った。

■リニアに期待の声

2位は3駅が同数で並んだ。品川はリニア中央新幹線の開通、田町~品川間の山手線新駅開業によるプラス効果を見込んだ声が主。新駅周辺では大規模な再開発プロジェクトが進んでおり、羽田空港へのアクセスの良さから国際的な都市としてのさらなる発展を期待する意見も目立った。

大宮は都心へのアクセスの良さが魅力で、「都内への通勤圏内としてファミリー層の需要が安定している」といった意見が多数。また、地盤が強固とされる「大宮台地」の上にあることから、震災の影響を受けにくいというメリットを挙げる声も多かった。

こちらもリニア中央新幹線駅の建設計画で注目度が高まる橋本。駅周辺の再開発が進んでいるが、まだ物件価格は上がりきっておらず、今が狙い目という声が。「都心へのアクセスが良い複数路線駅としてはまだ認知度が高くない」「新宿に出やすいがそこそこ田舎」など、マイナー感を魅力に上げる声も多かった。

5位は乗降客数世界5位の巨大ターミナルである横浜。生活環境の良さやブランド性に加え、西口の再開発による発展を期待する声が目立った。また、相鉄線はJR線、東急線との相互直通運転を計画しており、快速停車駅の二俣川などと合わせて利便性向上をプラス面としてみている投資家も多かった。

6位以下では、外国観光客の増加による民泊需要の高まりが期待される浅草、羽田空港のターミナルビル拡張や国際線増便の恩恵を受けそうな蒲田などがランクイン。子育て施策の充実で若いファミリー層が増えている南流山、再開発による新たなまちづくりで値上がりが期待される海老名などを推す声もあった。

<こんな意見も>

見沼代親水公園
「日暮里駅から20分程度でアクセスでき、駅から5分ほどで埼玉県川口市になるが、23区内に比べて物件価格が安くて利回りが期待できる。なおかつ価値が下落しにくいエリアだと思う」(長野・50歳男性)

戸塚
「JR各線と横浜市営地下鉄が乗り入れ、東京方面へのアクセスが便利。駅前の再開発が完了し、ファミリー向け新築マンションが増えている」(神奈川・46歳男性)

鹿島田
「かつての工場地帯の跡地にタワーマンションが多く建ち、新川崎駅前とともに駅周辺の開発が進んでいる」(東京・50歳男性)

赤羽
「先日、シェアハウスをドミトリー化したところ、すぐに満室になり、実質利回り20%を超えた。赤羽は物件も高くないのに最近人気が出てきていて面白いと感じている」(東京・48歳男性)

八潮
「某書籍で『住みたくない街ランキング』1位に。裏を返せば都心部へのアクセスが良いのに、土地値がそんなに高くないのでは?」(埼玉・43歳男性)

 

あのコラムニストはこう見ている

■下町が狙い目

根本伸之さん
投資歴:約5年
所有物件:東京、鎌倉、名古屋に4棟51室
総投資額:約6億円
年間家賃収入:約4500万円

三ノ輪、押上、東向島、曳舟、八広、大島、四ツ木あたりは、昔ながらの下町で工場や古い青果店などが多いエリア。高齢化が進み、相続のために土地を手放す人も増え、物件も出てくると予想します。スカイツリーや浅草のような観光地に近く、再開発も盛ん。日本橋や新橋、秋葉原にも15分から20分程度で到着可能で、世田谷や品川区のような高級感が無く庶民的です。古き良き日本の魅力が残り、外国人からも魅力的に思えるはずです。

関内、桜木町、馬車道は、横浜市役所の移転とカジノ誘致をきっかけに大化けする可能性があります。すでに桜木町の野毛は大変な賑わいになって、数年前までのさびれた雰囲気からは完全に復活。ベイスターズの活躍もあり、関内付近も元気を取り戻しています。ただ、昔から価格が高いのが難点ですね。

全体的には、不動産価格は若干の下落の後、高値安定と考えています。買いたい人にとっては高い利回りは望めませんが、今後の暴落も考えられにくい上に低金利なので買い時ではあると思います。不要な不動産を持っている人にとっては、ここ数年で一番の高値である今が売り時ではありますが、今後もあまり下がらないと予想するので、急ぎすぎても良いことはないかもしれません。

1都3県以外で、今後の投資先として狙い目だと思う「市区町村」は?

1位(33票)…愛知県名古屋市
2位(24票)…福岡県福岡市
3位(22票)…京都府京都市
4位(15票)…大阪府大阪市
5位(9票)  …北海道札幌市
6位(7票)  …茨城県つくば市
7位(6票)  …宮城県仙台市 沖縄県那覇市
9位(4票)  …兵庫県神戸市

■経済も好調

駅周辺の再開発ラッシュで続々と高層ビルが誕生している名古屋市が1位となった。2027年には東京・品川~名古屋間を約40分で結ぶリニア中央新幹線が開通予定。リニア名古屋駅の地上部分は広場として整備される見通しで、利便性とにぎわいがさらに高まることが予想される。

読者からは「車産業も好調で、今後も安定的に人口が流入するはず」「駅前の再開発がひと段落し、次の再開発に向けて堀田や東郷などの土地取引が活発化しつつある」「将来的には日本で唯一の産業集積地域になると思う」などの意見が。投資対象としては「まだまだ先行者利益を取れる余地がある」「都市圏の中ではまだキャップレートが高い」といった見方もあった。

■大都市が上位に

2015年の国勢調査で、政令市の中で人口増加数・増加率ともにダントツトップとなった福岡市が2位。国家戦略特区としての規制緩和や起業支援制度の充実で、若者によるベンチャー企業の開業数も全国トップクラス。「博多は若年層流入の勢いがすごく、地価も上がっている」「以前のような供給過多が解消され、首都圏と比べると高利回りが狙える」などの見方もあった。

3位の京都市は、やはりインバウンド需要の底堅さ、安定した大学生の賃貸ニーズを見込む声が多く、「特に中京区は需給バランスが崩れ気味」という意見もあった。4位の大阪市は今後の人口増や旧貨物駅周辺の再開発への期待のほか、「同じ物件のランクであれば首都圏より家賃が高く取れるエリアもある」という声も。5位の札幌市は「災害が少ない」「建築費が安く銀行の担保評価が出やすい」「築浅で状態のよい物件が多い」などの点で人気を集めた。

6位以下では、つくばエクスプレスの開通で人口増加が続くつくば市、まだ開発の余地が残る東北の中心都市・仙台市などがランクイン。経済的な伸びしろに期待の声が多かった那覇市、賃貸需要が底堅いという意見が目立った神戸市なども上位に入った。

<こんな意見も>

福島県双葉郡
「原発による避難から帰還する人が増えてくると思うが、仕事の都合で新しく住居を求める人も出てくる。その時に家を買うのではなく、ひとまず賃貸で様子見という人たちが多いと思う」(埼玉・45歳男性)

長野県飯山市
「新幹線が停まり、都会から行きやすく、自然と過ごす『第二の軽井沢』となりえるから」(神奈川県・48歳男性)

静岡県富士市
「東京の投資家で所有している人、物件を狙っている人をあまり見たことがない。しかし物件を買ったところ、家賃水準、地価の水準が比較的高くて、賃貸運営がしやすいという印象を持った」(東京・48歳男性)

滋賀県長浜市
「新幹線駅が近くにあり、名古屋、京都、大阪方面へのアクセスも良好な交通の要所。行政が空き家対策に乗り出している」(京都・23歳男性)

福岡県古賀市
「人口増加率日本一の新宮町と成長著しい福津市に挟まれて、徐々に人気が出てきそうだと感じる」(福岡・34歳女性)

あのコラムニストはこう見ている

■名古屋駅が中心に

かっちんさん
投資歴:10年
所有物件:愛知県、岐阜県に7棟72室
総投資額:約3億5000万円
年間家賃収入:約4000万円

やはり名古屋市でしょう。名古屋は今までは「栄」にどうやって出られるか(路線があるか)が勝負所だったのですが、今は完全に名古屋駅に中心がシフトしています。そのため、今まであまり注目されていなかった関西線や近鉄線、あおなみ線など、名古屋西部・南部へ伸びる鉄道線の沿線が「名古屋駅への利便性の良さ」から注目されていくのではないか、と感じています。

これまで名古屋は閉鎖性の高い都市で、他県からの流入も少ないと言われてきました。しかし、リニアの開業や車産業の好調で、全国、あるいは全世界からの流入が増えていると感じます。リニア中央新幹線が大阪まで延伸されると、今までと同じ「ただの通過点」になってしまうので、「名古屋止まり」である期間にどれだけ発展させられるかが勝負だと思っています。

物件価格は売主の期待感から高止まりしており、地元の地銀や信金ははここ半年ぐらいの間にどこも融資を絞っているようです。良い売り物も少ないため買い時とは感じていませんが、それでも川上の物件が紹介されることはあり、常に買う姿勢は崩していません。

判断基準を明確に

どんな状況でも「買い時」はあり、それぞれの投資戦略に合った手法を取ることが重要ということを思わせる結果となった。エリア選びに関しては自分の居住地域の近くを挙げる声が多く、「自宅の近くで経費率の低い経営を目指す」「土地勘のないエリアは避ける」といった姿勢が目立った。

実際の投資にあたっては外面的な情報だけに頼るのではなく、現地の状況を自分の目でしっかりと見定めることも必要になる。投資先として有望か、将来像はどう予想されているか。多角的にチェックした上で、確信を持って決断を下したい。