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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

昨年を振り返ると、私は物件売却という体験をしました。「出口」というものを体験したことにより、これで一応一通りの不動産投資経験ができたのではないか思います。もちろんまだまだ未体験なことも多くありますが、一般的な入口から出口まではわかった様な気がします。来年は新規に物件を購入していきたいと思っていますが、まだまだ諸物件の高値が続くのか不安要素も多いです。

さて、今回は「手抜き工事されやすい箇所」というテーマです。普段、建築施工に直接携わっている私は、酷い施工を直接見ることが多々あり、周囲からの情報でも様々な問題施工が報告されます。そのような中で、実際に起こりやすい問題や、予防可能な問題などを提示しながら、不安を抱える投資家の皆さんに少しでも安心して工事発注できるようにお手伝いさせていただきます。

建築工事で手抜きはなぜ起こるのか

建築工事は半年や1年、物件によってはそれ以上の長期に渡る工事になります。そして、建築費も通常の生活ではお目にかかることが無いような金額になります。さらには工事そのものの良し悪しは普通の方には判断し難いものです。こういった要因が元で、建築工事では度々手抜き工事が起こっています

長期に渡る工事では、最初から最後まで各工種を全て管理するのは不可能です。忙しい時期もあれば、広範囲で管理しなければならない時期もあるからです。

建築現場には監督員も居るのですが、10~20戸程度のマンションであれば、監督員は1名程度であり、多くても2名程度です。この人数では実際にチェックできる範囲は限られます。悪い職人がいれば監督員の目を盗んで何でもできてしまうのです。

工事費用も全体の金額が大きいだけに、ちょっとした手抜きでもわかりません。鉄筋を100mmピッチで入れるべき所を150mmピッチで入れても、できたものは見た目では全くわかりません。2mmの鉄板を使うところを1mmの鉄板を使っても、外観からではわかりません。こういった材料の量を減らし、質を下げることで工事費が安くできてしまうのです。

品質の問題もあります。例えばコンクリートは打設後に正常に硬化させるため一定の養生期間というものを取ります。床のコンクリートであれば、1週間程度は重量のあるものは乗れません。しかし、工事工程が短い場合、養生期間を十分に取ることができなくなります。

私の実際に見た現場では、打設した次の日に重量車両を走らせていました。非常に問題のある行為です。見た目ではわかりませんが、内部では大きなダメージを受けていることは間違いありません。

塗装も手を抜かれやすい工種です。塗装の場合は塗布後において見た目で判断するのは難しいのです。そして工数が多いため不正をし易いのです。本来は、下地処理→マスキング→プライマー→塗り(1回目)→塗り(2回目)となります。ここで十分な工期を取ることが困難な状況である場合や、請負金額が厳しいなどの状況下では、表面化しにくいところで工程を抜きます。また、塗料を薄めて使ってしまう事例もあるのです。

以上のように、手抜きを行う箇所は基本的に完成後に見えなくなるところです。手抜き施工を行う職人も馬鹿じゃありません。見た目でわかる手抜きは必ず指摘され、修正を求められますので、そのような二度手間になるような手抜きは行わないのです。


大きな金額を費やして完成させる建築物は、できるだけ良いものにしたいと考えるでしょう。そのためには施主はどういったことを注意すれば良いのでしょうか。

まずは優良なゼネコンに発注することです。優良というのは、知名度があるとか会社が大きいということではありません。評判が良いとか、工事に対する姿勢のよいゼネコンということです。小さな家族経営のゼネコンでも、RC造20戸程度のマンションを建築することもあります。

しかし、優良ゼネコンに工事を発注しても、建設業界は重層構造の請負関係で工事を進めますので、下請けに悪い業者が混ざっていることもしばしばあります。でもこういったあまり質の良くない業者でも、そうそう悪事を働くわけではありません。どこでもいつでも悪事を働いていれば、早々にその事実は元請に把握され、業者間の噂にもなりますので、その業者は仕事がもらえなくなるからです。

そして悪事を働くのは「十分なお金が貰えない」「工期が厳しい」と言ったときです。こういった要素を無くしていけば、問題が起こる可能性は低くなります。

手抜き工事防止には施主の発注形態にも原因があります。アパート、マンションの建築ではほとんどの場合、設計監理者というものが必要になります。設計監理者は施主の立場になり工事全体を管理します。工程から材質、施工方法、出来上がり品質まで、ポイントごとに確認します。

要はゼネコン及びその下請けが設計図書に則った建物をちゃんと施工しているかチェックするのです。しかし、設計監理者が施工会社の社員である場合があります。建物の設計をいきなりゼネコンにお願いする場合はこのパターンになります。

この場合は監理者が施工会社の社員になりますので、チェックは甘くなります。酷いところでは、不良箇所や不良施工を見て見ぬ振りのこともあります。

これを防ぐには、設計は別物と考えて設計事務所なり独立した所に別で依頼するべきです。実際に建築設計事務所が設計監理をしている現場とゼネコンが監理している現場では、ゼネコンの施工に対する真剣度が違うのです。結果、設計事務所の監理現場では手抜きも起こり難いものになります。

気をつけたいのは施主の行動にもあります。極稀ではありますが、施主が頻繁に現場に現れて、上から目線で直接職人に指示をしたり文句を言ったりすることがあります。職人はこれを非常に嫌います。こんなことも手抜き工事になる要因となりますので、注意が必要です。

しかし、施主が頻繁に現場を訪れること自体は良いことです。そして現場の作業員の方々ににこやかに「ご苦労さまです!」と声をかけて下さい。こうしたちょっとした気遣いで手抜き工事は減るのです。

ある程度大きな建物になると、施主、設計監理者、施工者で定期的に定例打合せ会というものを現場で行うことがあります。アパートやマンションでは施主抜きになることもありますが、できれば施主も参加すると良いでしょう。

ここでは工事の工程及び進捗状況から現場の問題点等が話し合われます。工事の現況を知るには良い会議です。なぜ工期が延びるのかとか短縮が可能なのかがわかります。


よく聞かれるのは優良なゼネコンはどうやって見つけるのかですが、これは難しい問題です。一番確実なのは、良い建物ができたと満足している、新築物件を経験した先輩大家さんに紹介してもらうことでしょう。ポイントはゼネコンとその監督をセットで依頼することです。ゼネコン指名だけであると、他の監督が来て期待通りではない結果になることもあります。

その他、アパートやマンション建築中の現場を見かけたらその現場を見学させてもらうのも有効です。建築現場には必ず工事看板というものが有り、そこには施工元請業者名(ゼネコン)が表示されています。ゼネコン名がわかればそのゼネコンに電話してみて下さい。

電話では「御社の○○地区で建築中のマンション建築を通りがかりに見たのですが、今度私もマンション建築を計画していて、参考のために御社の現場を見学させてもらえませんか? 具体的に計画が進んだ場合、御社にも見積もりをしていただきたいと思っています!」

こんな感じで話をすれば、喜び勇んで営業が段取りしてくれますよ。この電話で相手の印象が悪ければこの時点でこのゼネコンは問題外です。

建築設計事務所に設計監理までお願いする様なときには、設計事務所で付き合いのあるゼネコンを紹介してもらうこともできます。設計事務所は悪いゼネコンを紹介してしまうと自分が大変になりますので、できるだけ優良なところを紹介してくれます。希望すれば数社からコストパフォーマンスの良いゼネコンを選定する手助けも望めます。結果的に工事費が安くなる上に良質なものができます。

最後に

手抜き工事はどこでも起こる訳ではありません。むしろ一般的な建築工事ではそうそう起こるものではありません。しかし、ある一定の無理が発生すると「仕方なく」または「感情」で発生します。

その発生原因は工期であったり、費用であったり、はたまた工事環境であったりと様々でしょう。でもそれらの要因は施主が作り出してしまうことが多いのも事実です。竣工期限を無理に早めたり、工事金額を根拠も無く厳しくしたり、安易に工事業者を選定してしまうのも要因の一つと考えます。

安く、早く、良質のモノを! と願うのは投資家の誰もが願うことです。しかしこれら条件はお互いにバランスするものであり、どれかを強めればどれかにしわ寄せが行く関係にあります。全てが思い通りになる物件を建てることができませんので、上手にバランスする妥協点を探すことが結果良い建物ができることになります。満足いく物件を作り上げるのは大変ですが、やりがいもあると思います。