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お金を残す不動産投資コラム。今回は、不動産投資の節税の一つとしてよく話題になる海外不動産投資について、その仕組みや今後の動向をわかりやすく解説したいと思います。

海外不動産投資の節税の仕組み

富裕層を中心に、節税対策の一つとしてよく話題になる海外不動産投資。では、なぜ海外の不動産に投資すると節税になるのでしょう?

まず、個人が普通に日本国内の物件を購入、運営して損失が出ると、給与所得などの他の所得と合算できます。これを損益通算といいます。不動産所得の損失を他の所得と損益通算すると、全体の所得が減少するため、税金が少なくなり節税になるわけです。

そして、日本に住んでいる人は国外で発生した所得にも税金がかかるので、海外の不動産に投資して損失が出た時も損益通算できることになります。

ここからがポイントですが、海外の不動産は日本の不動産に比べて、耐用年数がとても長いんです。国土交通省の統計によると、不動産の平均耐用年数は日本は約32年に対して、アメリカは約66年、イギリスは約80年となっています。

耐用年数が長いのに、税金上は日本の税制が適用される! ここにゆがみが生じ、節税につながるわけです。

どれぐらいの節税効果があるのか? 数字で確認

では、海外不動産に投資するとどれぐらいの節税効果があるのか、数字で見てみましょう。例えば、築30年の中古の木造建物1000万円、表面利回り10%(家賃100万円)で購入した物件を運営したとします。

日本の税制では、中古の耐用年数は簡便法を使って次のように計算します。

○法定耐用年数の全部を経過した中古資産

法定耐用年数 × 20 / 100

○法定耐用年数の一部を経過した中古資産

法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 20 / 100

これに当てはめると、築30年経った木造建物は法定耐用年数を過ぎているため、耐用年数4年で計算することになります。すると1年当たりの減価償却費は1000万円÷4年=250万円となります。家賃が年間100万円で、他に経費がなかったとしても毎年150万円の損失が発生します。

家賃100万円 - 減価償却費250万円 = ▲150万円

もし、この物件を購入した人が所得税・住民税合わせて最高税率55%なら、82万5000円の節税効果があることがわかります。

▲150万円 × 55% = 82万5000円

これが減価償却費のある4年間続くので、節税の合計は330万円になります。

82万5000円 × 4年 = 330万円

かなり大きな金額の節税ができることがわかりますね。

先の例だと5年目以降は減価償却費がなくなって、節税効果もなくなってしまいます。ただ、海外の不動産は実際の耐用年数が長いため、5年経ったとしてもそれほど価格も落ちないと考えられます。

仮に5年後に購入した金額そのままの1000万円で売却できたとすれば、帳簿上の簿価は保有中に減価償却費を計上した結果0円になっていますので、1000万円の売却益が発生することになります

売価1000万円 - 簿価0円 = 売却益1000万円

「それなら売却の時に税金をとられるので、同じでは?」と思うかもしれませんが、個人が不動産を5年超保有して売却益が発生した場合は長期譲渡所得となり、税率は20%となります。

結果、1000万円の売却益が発生しても、その20%の200万円の税金が発生することになり、所有していた時の節税効果とトータルで考えると、130万円の節税ができたことになるわけです。

所有中の節税効果330万円 - 売却時の税金200万円 = トータルの節税効果130万円

会計検査院の考えは?

これまで解説したような節税効果を狙って、富裕層の節税が多くなっているため、会計検査院が発表したレポートの中では、次のように書かれています。

「国外に所在する中古等建物については、簡便法により算定された耐用年数が建物の実際の使用期間に適合していない恐れがあると認められる。そして、賃貸料収入を上回る減価償却費を計上することにより、不動産所得の金額が減少して損失が生ずることになり、損益通算を行って所得税額が減少することになる」

「本院の検査によって明らかになった状況を踏まえて、今後、財務省において、国外に所在する中古の建物に係る減価償却費の在り方について、様々な視点から有効性及び公平性を高めるよう検討を行っていくことが肝要である」

会計検査院が入ってくると、税制改正となるケースが多いため、近い将来、海外不動産投資についても税制改正される可能性は高いと思われます。今後はそれを踏まえて投資していくことが必要でしょう。