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前回前々回の記事で「猫専用賃貸に必要な装備」についてお伝えしました。おさらいをすると「猫が三次元に動ける工夫」と「猫を安心して外に出すことができる工夫」です。まだ秘策はあるのです。今回は3つ目のポイントについて解説します。

3つ目のポイント、それは猫脱出防止扉の設置です。現在、日本における猫の飼育環境は「完全に室内だけで飼養する」ことがデファクト・スタンダードとなっています。ペット共生・ペット可を標榜するのであれば、提供する側の責務として「猫が容易に脱出できない工夫」を施すべき、と考えています。私が作っている猫脱出防止扉の例をいくつかご紹介します。

Gatos Aptの玄関部分。一見、何もありませんが…

実は猫脱出防止用の引き戸が隠れています

Seilan Aptの猫脱出防止扉が付いた玄関ホール

猫脱出防止扉は文字通り、猫の脱出を阻止するために設置します。例えば、玄関先で宅急便のやり取りをしていた時、知らないうちに脇からスルッと外に出てしまった…などという「事故」を防ぎます。

私が監修した猫専用賃貸Seilan Aptの写真を見ればお分かりいただけると思いますが、何の変哲もない、完全に閉まるドア付きの玄関ホールがあれば、それで良いのです。但し、猫が開けられないよう手前側に取手の鍵が来るようにするなど、細かい配慮は必要です。

格子のガードを脱出防止用の柵として設置している物件がありますが、猫が爪を立ててガリガリされる可能性、格子が大きいとすり抜ける可能性、上までカバーできていないとジャンプして飛び越える可能性があります。こうした理由であまりお勧めしていません。

猫脱出防止扉は使われないことが多いという事実

「猫脱出防止扉、使ってますか?」と、私が監修する物件にお住まいの方々にお話を伺ったことがあります。多くの方が「実は『猫脱出防止』という意味では、使っていません」とお答えになるのです。

Gatos Aptにお住まいの入居者さんと、お部屋の玄関で立ち話をしていた時のことです。しばらく話をしていると様子を伺いに飼っている猫が玄関口までゆっくりと来て、私に一瞥をくれた後、まるで挨拶でもしているかのように「ニャー」と一鳴しました。

このように多くの飼い猫は自ら進んで脱出しないことが多いのです。猫リテラシーの高い飼い主さんで「玄関の扉を開けていても、逃げない」ことを熟知しているため、脱出防止扉を使う必要がないのです。

ですが、世の中には脱出を企てる猫たちもいます。それはどういう猫でしょうか。私が考えるのは、こういう猫たちです。

1.野良猫で保護したばかりの猫

2.部屋にいることがストレスになっている猫

3.玄関より先に行ったことがある猫

1の場合、人間からすると「あなたを保護してあげた」ですが、猫からすると「捕らえられた」と思っているはず。こういう猫は外の世界に戻りたいので、虎視眈々と脱出の機会を伺います。玄関が開いた音を聞き、ドアが開いた瞬間、後先考えずに脱兎のごとく外に向かって脱出しようとするかもしれません。

2は1に相通じますが、室内にいる猫がストレスを感じている場合です。ご飯がマズい、猫トイレが汚い、(狭いのに)猫が多すぎる、最近連れて来る飼い主の彼氏が気に食わない…などなど、ストレスの元凶は環境に応じて多種多様です。

3の場合は、一度脱出したことがあり、玄関ドアから先がどうなっているかを知っている猫の場合、です。

一般的に猫は、とても臆病な生き物と言われています。個体差は激しいですが、自分の知らない所、初めての所はどんな怖い外敵がいるか分からないので、もし冒険をするとしたら慎重に行うことが多いのです。もし玄関ドアが無防備に開いていたら、猫はまずドアの近くまで行き、安全かどうか、時間をかけて確かめます。安全だと思ったら初めて、ドアの外の世界をソロリソロリと探索し始めるのです。

なので宅急便のやり取りなど、1分にも満たない場合、大抵の猫は外に行きたくても、行けません。対して脱出を企てる猫は、一刻も早く脱出したいので、危険があるかどうかなど顧みません。なので、猫脱出防止扉はこうした一部の猫たちには、とても有効なアイテムです。

何故、無駄とも言える玄関ホール・スペースを設けるのか?

「ただの玄関ホール」と表現しましたが、30㎡程度の賃貸部屋を作る際、極力、リビングやダイニング、ベッドルームなど「一番目立つ所」が大きくなるよう、他のスペースは無駄を省いて設計する日本の賃貸事情から考えると、「玄関ホールがある30㎡以下の賃貸部屋」なんて、もの凄いレア物件のはず。だって無駄以外の何ものでもないですからね、普通の賃貸なら。

私が監修する物件は可能な限り敢えて大きな玄関ホールを作っています。それは、猫脱出防止扉が付いた玄関ホールは、「人間用のエスケープ・スペース」にすることができるからなのです。

私の作る賃貸は、20代~40代の単身女性がメインターゲットです。この層の女性が、猫と住んでいて困っていることがあります。それは猫が足にスリスリして猫毛が付くこと。

オシャレは元より、ビジネスシーンにおいて猫毛が沢山ついているスーツやコートで会社に行くことはできれば避けたいもの。なので多くの方が玄関先に粘着クリーナー、通称「コロコロ」を常設していたりします。猫脱出防止扉がなければ、片足をコロコロしている時に、もう片方の足を猫がスリスリ…なんて、コントのような光景が日本全国で繰り広げられているワケですが、このスペースがあれば、その心配も無用なのです。

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「猫に触れられたくない物」は、コート以外にも沢山あります。例えばブーツや帽子、猫の餌や猫の砂、面白いところでは米の袋、などです。猫飼いの間では、猫が米袋をバリバリやってしまうことは「あるある」ネタ。

このように、せっかく設置した脱出帽子扉を有効活用するため、玄関ホールに余裕のあるスペースを敢えて作っているのです。