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昨今、東芝の粉飾決算や日産自動車、神戸製鋼のデータ改ざんなどの不正が報道されています。
実は、「決算書」(「貸借対照表」「損益計算書」「資金繰り表」等財務諸表)については、明確な相場の無い不動産の評価、実態の無い無形固定資産(ソフトウェア・のれん等)の評価、人件費等の仕掛原価諸掛への繰り入れによる経費先送り等でいくらでも調整可能であり、その実態は、外部の公認会計士・監査法人等では把握は困難です。
いや、その企業の経営者ですら、すべての実態は、把握できていないのかも知れません。
取引先・投資先の「決算書」は、あまり過信しないことです。決算書で見るべきポイントは次の通りです。
・財務内容(「貸借対照表:Balance Sheet(BS)」)としては、(運用)資産=(調達)負債+自己資本、短期支払能力(流動資産>流動負債)、自己資本比率(自己資本÷総資本)等。
・収益状況(「損益計算書:Profit and Loss statement(PL)」)としては、売上高-経費=利益。
・資金繰り状況(「資金繰表:Cash Flow(CF)」)としては、受取現預金―支払現預金=手残り現預金です。
データ改ざんは身近な業界でも…
このデータ改ざん、実は身近な不動産・金融業界でも起こっています。
金融業界では、商工中金が9割の店舗で、取引実績をあげ、ノルマ達成の為、取引先の決算書データ等を偽造していました。
不動産業界では、古くは、2005年頃の耐震偽装事件。私も、博多駅のそばの一棟アパート、名古屋駅のそばの一棟アパート新築で巻き込まれそうになった事件でした。最近では、杭打ちデータ偽装による、マンション傾き問題。大手不動産会社が関与していました。建物の瑕疵担保責任には、十分注意して下さい。
新築を購入する場合には、品質確保法で、重要な部分(基礎・柱・壁・屋根・雨水関連等)については、10年間保証がついています。売主は瑕疵担保責任を10年間負う定めになっているのです(実質意味があるのは、財務力が在る企業からの購入の場合が前提ですが)。
また、中古物件を宅地建物取引業者から買う場合には、2年間の瑕疵担保責任が付いています。
一方で、中古物件を宅地建物取引業者(宅建業者)以外(一般会社・個人等)から購入する場合には、特約で、瑕疵担保責任を排除、または短くすることが可能姉妹ですので、なるべく避けてもらうか、やむを得ない場合には、重要な瑕疵がないか、十分にチェックすることです。
素人でも傾き(水平器、パチンコの玉等利用)や、雨漏り(天井の雨漏り跡等)等、重要な瑕疵はある程度わかるものです。場合によっては、検査を入れることも可能です。
不動産・金融業界では、不動産売買金額を実際の金額より高くで見せかける。金融機関内で評価を高く見せかけ、内部承認を通し易く、融資金額・実績を多くする。こうした悪質な手法もはびこっています。
金融機関とお抱えの提携不動産会社がグルになって、或いは、不動産会社が単独で(金融機関は主導したり、暗黙で承認をしたり…)行っています。
買主・売主が協力してくれる場合には、二重に「重要事項説明書」「売買契約書」を作成・署名捺印したり、後で値下げして「覚書」を追加締結したりという手法ですが、実際には金融機関・提携不動産会社が主導しており、「重要事項説明書」「売買契約書」署名捺印等、弱い立場の借主・買主は、バタバタと言われるがまま、無意識のうちに署名捺印させられる場合も多いです。
私の知り合いでも、私と同じように、悪徳金融機関とお抱えの悪徳不動産会社がグルになって、本人が知らないうちに「売買契約書」の金額を多めに偽造され、それが原因で融資をドタキャン。売買契約は不成立になり、当該金融機関からは、出入り禁止(出禁)になったそうです。
ただ、不幸中の幸いで、私の場合と違って、手付金没収・違約金請求・仲介手数料にまではいかなかったようです。もっとも、その人は高金利で、悪徳な金融機関とは縁を切れて良かったと言っていました。
多額の損失の可能性も
悪徳金融機関の担当者・支店ぐるみの場合でも、実は金融機関の本店・審査部門・役員等でひっかかったり、売主・仲介会社等の意図的な妨害で取引を壊されたり(他に更に高値で転売、手付金・違約金・仲介手数料取得目的詐欺)ということもあり得ます。そうなると、まずは、売買契約は成立せず、物件を取得することはできません。今迄の物件取得・資金調達に向けた、時間・経費は無駄になってしまいます。
それならば、まだもとに戻るだけですが、そんな程度ではすみません。
心ある不動産会社ならいざ知らず、悪徳不動産会社の場合、手付金は返ってきません。それどころか、違約金・仲介手数料まで請求してきます。因みに、払う迄の金利(年利6%)、相手側の訴訟費用迄も請求されます。酷い場合には民事事件にとどまらず刑事事件にまで発展し、私文書偽造罪・同行使罪で逮捕された事例もあるようです。無実の罪、濡れ衣・冤罪もあります。
裁判になれば何年もかかり、また弁護士費用だけで何百万円もかかります。管轄裁判所は、通常、物件・売主・不動産会社所在地の場合が多く、地方の場合は、弁護士・裁判所から何度も呼ばれ、時間・経費が大変です。なにより、精神的苦痛も大変なものです。そして、当該金融機関からは以後出入り禁止(出禁)となります(もっとも、そういう悪徳金融機関とは縁を切った方がいいと思いますが)。
自己防衛のためのポイント
悪徳な金融機関・提携不動産会社は、借主・買主の知らないうちに、「重要事項説明書」「売買契約書」の原本をコピーし、そのコピーの売買金額等を改ざんするのです。
そしてその後に融資ドタキャン等、何か問題があり、トラブったら、そのことを「借主・買主が勝手にやったことだ」と嘘を言って、自分の非を正当化してきます。
これらのことはなかなか表沙汰にはなりにくいようですが、ある程度、口コミ・ネット・書籍等からも情報を得ることもできますので、注意して下さい。
○悪徳金融機関・不動産会社とは付き合わないこと
○悪徳金融機関・不動産会社から、「重要事項説明書」「売買契約書」二重作成・追加「覚書」作成、改ざん等、異例なことを持ち掛けられても絶対に関与しないこと
○「重要事項説明書」「売買契約書」は、あくまで原本を主とし、そのPDFを、金融機関・不動産会社等に電子メール添付送信する等、記録を残しておくこと
○特に重要な事項(売買金額・手付金・白紙解約期限等)については、口頭だけではなく電子メール本文にも記載して再確認し、記録に残しておくこと
○金融機関との交渉は担当者一人とのみではなく、上司等も含め複数と交渉すること
このように、自己防衛しておくことが重要です。
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