私事で恐縮ですが、4カ月ほど前に東京都下の戸建てに引越しをしました。今年2回目の引越しです。なぜ、そんなに頻繁に引っ越すのか? 私もそのようなことになるとは思っていませんでした。ふとしたことで出合った戸建てが、まさか自分が住む家になろうとは。

そして、自宅として住み始めたこの戸建て、実は、将来的には賃貸しようと考えています。バブルの様相を呈する都心の不動産相場が落ち着いたら、都心に戻ろう。そう考えたとき、その時期がいつになるかは、なかなか読みづらいものです。しかし、今のように「テンポラリー(一時的の意)」の自宅を確保しておけば、その時期がいつ訪れようと、その時にアクションを起こせるのではないかとも思います。

きっかけは自宅の売却

毎年、住みたい街ランキングトップの座を吉祥寺と争う、都心に位置するある街。その住宅街に佇む自宅マンションを売りに出すことを決めたのは、昨年の6月のこと。家が売れたらどこに住もう? 次は、どんな暮らしになるだろう? そんなことを想像しながら月日は流れ、買い手が決まったときには媒介契約から半年が経過。そして、年明けの1月に売買契約締結の運びとなりました。

とはいえ、目標としていたキャピタルゲインもしっかりと確保。結果的には、良い取引をすることができました。

売買契約を終えた2月のこと。私は、伊豆でひとり田舎暮らしもいいなぁ…などと考えていましたが、妻が転居先として検討していた物件を一緒に見に行くことにしました。自宅マンションの引渡しと時を同じくして転勤が決まった妻。転勤先に近いエリアで物件を探していたようです。この内覧に同行したのがきっかけとなり、私たちの生活がちょっと面白い方向へと向かうことになります。

賃貸に住むつもりが…

23区から僅かに外れた東京都下、中央線・井の頭線沿線のエリアに位置する3つの物件を内覧した結果、2人の意見は一致。都心とは全く異なる、少し長閑さすら感じさせる穏やかな住環境と、都心へのアクセスの良さが気に入った私は、田舎暮らし生活の計画をもう少し先に持ち越すことにして、そこに一緒に暮らすことにしました。かくして、次の転居先は家賃15万円ほどのUR賃貸に決定したのでした。

内覧から数日後、その近隣エリアに建つ戸建ての販売価格が何となく気になった私は、賃貸のポータルサイトで検索。「井の頭公園至近、60坪の豪邸! 価格1億5000万円」や「吉祥寺駅徒歩圏、閑静な住宅街、30坪9800万円」など、ヒットした物件の多くは、「なるほどね~」としか言えないもの。

そんな中、ひときわ目を引く物件を発見します。それは、1100万円という超破格の築古戸建て。1億円超の物件が建ち並ぶこのエリアにあっては、「ゼロがひとつ足りないのでは?」と思っても不思議ではありません。

詳細を確認すると、最寄りの三鷹駅まで徒歩28分の立地、敷地面積・延べ床面積ともにおよそ50㎡の3K。もちろん、駐車スペースなどという贅沢なものもなく、いわゆる極小住宅の部類に入るかも? とはいえ、1100万円の価格は魅力的。即日内覧を申込み、現地へ急行することに。

現地では、売主の奥様が対応してくださいました。聞くと、ご主人の介護が必要になり、近隣のマンションに引っ越したとのこと。契約に向けて話がまとまりそうになったが、買主がさらに値引き交渉をしてきたため破談になってしまったそうです。これは、いい情報をゲットしました。

1階洋室はまずまずの広さ。とはいえ、図面に記載されているほどの広さ(10.25帖)はないように感じます。太陽が低い季節の日当たりはイマイチ。窓辺のベンチは活用できそうです。

1階洋室

1階洋室

続いて、キッチン・トイレ・浴室を拝見。どれもコンパクトな造りです。

キッチン

浴室

2階には共に6帖の洋室と和室が1つずつ。手作り感漂う洋室の棚は、少しでも収納を確保しようとして大工さんが造作してくれたものでしょう。

2階和室

一通り室内の確認を終え、その日は現地を後にしました。建物に大きな瑕疵が見当たらなければ、私の判断は「買い」です。あとは、妻の判断に委ねることに。この家こそが、私たちが今暮らしている自宅との出合いでした。

投資基準を満たすか?

これまで守ってきた私の投資基準に照らすと、この物件はどうでしょう。物件周辺の路線価は27万円/㎡、少々奥まった場所であることを考慮しても、25万円/㎡は下らないでしょう。この数字をもとに算出した路線価ベースの土地値は1250万円なので、販売価格は土地値以下。と言うことは、いざとなったら買った時以上の値段で売れる可能性もあり、リスクは限定的と言えます。

駅から遠かったり駐車場がなかったり、多少のマイナス要因は、販売価格が土地値以下である以上受け入れるべきでしょう。1100万円という価格は、私にとってそれほど魅力的でした。そして、1000万円までであれば指値は可能だと踏みました。それは、奥様とお話したときの、「さらに値切ってきて頭にきちゃって…」というくだりからヒントを得たもの。破談になったものの、1回目の値引き提案を受け入れたということであれば、1000万円の指値であれば大丈夫だろう。そう考えました。

相談の結果、妻の同意も得られたので、翌日業者さんと共に再度現場を訪れました。調査の結果、目立った問題は発見されずひと安心。受けてもらえるであろうと予想した1000万円の指値で買い付けを入れてみると、意外にも簡単に通ってしまいました。後に、不動産会社の担当者に聞いた話ですが、1000万円というのは売主が考えていた最低ラインだったそうで、その最低ラインを見事に突いてきたとのこと。私にとっては幸運でした。不動産との出合いはご縁と言いますが、本当ですね。

活用法を考える

賃貸して家賃収入を得るか、自宅として利用することで家賃を浮かせるか、この家の活用法はいずれかになるでしょう。より大きなメリットを享受するには、どちらを採るべきか? ここで、考えてみることにします。

○賃貸した場合

賃貸する場合でも、現状を考えるとリフォームは必須。賃貸用と割り切ったとしても、リフォーム費用は250万円ほど掛かりそうです。すると、購入時の諸費用も含めると、物件価格は1300万円ほど。家賃設定を10万円とすると、利回りは9.2%とやや物足りなさを感じます。築41年の木造住宅ということで、建物の価値はほとんどありません。ということは、減価償却費の計上もほとんど期待できないということになります。

○自宅とした場合

ちょうど引越しを予定していたところ。一旦はUR賃貸に仮住まいすることになるものの、自宅として利用するのもアリかと思いました。自宅として利用した場合、リフォームの仕様はグレードアップします。とはいえ、際限なくコストを掛けることはできないため、初めに450万円という上限を設定することにしました。

この物件を自己使用すれば、家賃収入が得られない代わりに、自分たちが支払うべき家賃もなくなります。つまり、15万円の家賃収入を得るようなものです。その上、この「家賃収入」には税金がかからないというメリットもあります。ただ、この家に生涯住み続けるのは難しそうなので、期間限定ということにします。

仮に、家賃15万円のUR賃貸から引っ越して、この家に5年間住むとします。そして、その後は賃貸するとしましょう。すると、年間に浮かせることができる家賃の額は180万円なので、当初5年間の利回りは12%となかなかのもの。賃貸する際の家賃を12万円に設定すると、6年目以降の利回りは9.6%という計算になります。ちなみに、「賃貸した場合」における設定より2万円高い12万円という家賃は、設備のグレードなど工事内容を反映したものです。

これらの試算をとおして、質の高いリフォームをした後に自宅として活用する方が、私たちにとってはメリットが大きいと判断しました。

当初、外壁と屋根の塗装も考えていたのですが、予算と優先順位を考えて、今回の工事ではこれらを見送ることにしました。次に挙げるのが、主たる工事の内容です。

○1階部分間取り変更

キッチンと洋間を隔てていた壁を取り除き、LDKに変更しました。同時に、キッチンと浴室の配置を入れ替え、それに伴って洗面台と洗濯機置き場を移設。限られたスペースをなるべく有効に活用したいという思いから、余計なものは取り除くことにしました。 

1階リビング

カップボード

○水回りの交換

キッチンと浴室の配置を入れ替え、在来工法の浴室(床や壁をタイルで貼ったような、古くから日本で行われている建築方法)をユニットバスに交換。キッチンはグレードが高めのもの、IHクッキングヒーターに関しては最上位機種を採用しました。まさに一点豪華主義です。

洗面台・トイレともに、一般的な賃貸用よりはハイグレードなタイプに。無駄な設備は必要ないので、オプションは見栄えが良くて機能的なもののみを選びました。

キッチン

浴室

○玄関たたきの拡張

玄関のたたきの広さは、猫の額ほど。あまりにも狭いので、2倍程度に拡幅することにしました。

○2階洋室

収納がなかった2階の洋室にクローゼットを設置。代わりに、大工さんお手製の収納を撤去しました。

○2階和室

畳は、畳表が樹脂製のものに畳床ごと交換。賃貸した後のことも考えると、い草の畳表よりランニングコストが低く抑えられるのが、樹脂製の畳表の特長です。窓ガラスも断熱性の高いものに交換しました。

2階和室

○床および壁

元々クロスが貼られていた壁は、新しいクロスに貼り替え。ただし、量産版を採用しました。和室の聚楽壁と天井、柱に関しては、自分たちで塗装しました。また、床のフロアタイルも全て自分たちで施工。そうすることで、これらのコストを2分の1以下に抑えることができます。

余談ですが、私はこの時の床張りが原因で椎間板ヘルニアを発症しました。床張りは腰にかなりの負担が掛かるので、チャレンジする際は注意するようにしてください。

自分自身の労働力も提供することで、工事は予定どおり450万円に収めることができました。

しかし、これにはカラクリがあることもお話しなければなりません。私がお願いした業者さんに、私ではなく他の人が工事を発注しても450万円ではやってもらえません。同じ工事内容であれば、560万円ほどの請求を受けることでしょう。なぜ、私は他の人より100万円以上も安く工事をしてもらえるのか? それは、私とこの業者さんとは協力関係にあるためです。

私は、所有する物件の1部屋を、この業者さんに格安で賃貸しています。その代わりに、私が発注する工事の代金で便宜を図ってもらっているというわけです。

今後も続くDIY

9月に住み始めたものの、この家はまだ発展途上。いわば、「サグラダファミリア」(例える相手が壮大過ぎて恐縮ですが)のようなもので、少しずつDIYを重ねながら暮らしています。

次の課題は断熱でしょう。マンション暮らしが長い我々にとって、戸建て特有のしんしんと伝わってくる寒さは久しぶりの体験です。また、昔の建物なので気密性も良くありません。この冬の寒さをいかにして乗り切るか、試行錯誤を続けていくことになりそうです。