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法律と聞くと、そのややこしさに身構えてしまう人も多いはず。とはいえ、大家さんが知っておいた方がいい法律があるという。

「それは民法と借地借家法です。全部を勉強する必要はありませんが、ポイントを押さえれば利回りアップのカギがありますよ」と話すのは、自身でも区分マンションや六本木、南青山、赤坂に複数のビルや土地を持ち不動産投資をしている、弁護士の堀鉄平さん。

2017年11月18日にエイブル主催の「全国賃貸オーナーズフェスタ in 東京」で「弁護士が実践してわかった! 法律を知っていると利回りが上昇する5つのポイント」と題して講演するなど、精力的に活動をしている。

契約をうまく使いこなす

「大家さんの利回りアップの方法は主に二つです。入ってくる賃料をいかに増やすかと、修繕費などの出て行くお金をいかに減らすか。それが利回りを上昇させるためのポイントです」

不動産投資も貯金と一緒。入ってくるお金を増やし、出て行くお金を減らすのが大事である。家賃を上げるための交渉を行い、大家さんが負担しなくてもいい範囲の修繕費などのコストは入居者が支払う形にするというわけだ。借地借家法をしっかりと読み込んでおけば、家賃の増額交渉も適法であるとわかる。

借地借家法を押さえて家賃を上げる

「家賃を上げることに対して抵抗がある大家さんも多いかもしれませんが、交渉自体は契約期間中であっても行うことができます。周辺家賃よりも明らかに低く家賃を設定していたのならば、交渉しない手はない。まずは『今までが低すぎましたね』と入居者さんが同意してくれば、それで利回りは上昇します。

とはいえ、入居者が同意してくれない場合は、裁判所の判断を仰ぐことになります。そして、裁判所の判断で賃料が増額された場合の処理については、借地借家法の第32条が関わってきます。大家さんが増額の請求をした時点から、入居者が実際に支払ってきた家賃と裁判で認められた金額との差額、それと差額に対する年利1割の利息を入居者は一括で支払わなければなりません。この支払いは入居者にとっては酷ですので、そうなる前にある程度の増額で和解に応じてくるといったケースもあります」

利便性がよい立地で入居者が確実に見込める物件ならば、定期借家契約の活用も手だと話す。

「定期借家契約は契約期間を決めてしまうので、同じ人に長く住んでほしいという大家さんの思いとは真逆になる、と思われるかもしれません。しかし、契約期間が終了しても、再契約は自由にできるわけですし、なにより家賃の交渉という観点では非常に有効です。定期の契約終了時に、再契約をする条件として、家賃を上げるといったことが自由になります。需要と供給をきちんと反映できるのでよいでしょう。周辺家賃が上がっているのに、低いままの家賃で貸し出す道理はないわけですから」

森ビルや三井レジデンスの都市部の物件は、定期借家契約が一般的になっているという。不動産価格や家賃相場は景気動向にも左右されるだけに、駅チカの物件などは、定期借家契約を検討してもよいかもしれない。

「一般的に修繕費、中でも経年劣化などは大家さん負担であることが多いです。しかし、特約に修繕費を借主が負担することを盛り込み、原状回復義務を借主負担にすることもできます。こちらも、借主さんがきちんと納得してもらえればOKなわけです。ただし、特約に盛り込んでもさすがにそれは大家さん負担ですよと言われる場合もあるので、事前に検討が必要です」

一つ一つの項目に対する金額は小さいものの、これら全部を行うことで5%だった利回りが6%になるなど、知っていると知らないでは後々に大きな差になるのだ。

法律は「書いて有効」「明確に書く」「経緯を書く」が基本

いずれの特約についても共通しているのは、「書いて初めて有効」「明確に書くこと」「経緯を書くこと」であると堀さんは言う。

「まずは、そもそも契約に際してきちんと『書く』こと。書かずに口約束では成立しません。なぜならば、民法で決められている修繕義務や原状回復義務について、大家さんに有利に、入居者に不利に変更するわけですから、当事者で納得して契約書に書いて初めて効力が認められるのです。

また、『明確に書くこと』も大事です。家賃の自動増額特約も、『何%家賃を上げるのか』を明確に書くことです。経緯を書くことも、その後の特約の有効性に関わります。

『経緯について書く』では、例えば『最初の2年間は学生である入居者を応援するつもりで家賃を下げていた。その後、卒業して社会人になったら、周辺相場と合わせる』などの経緯を明記しておくと、入居者も『それもそうだ』と納得しやすくなる。

仮にこじれて裁判となっても、客観的な状況を残しておくことによって、裁判所にも認めてもらいやすくなります。また、家賃回収にあたって、事故をなるべく防ぐように準備はしておきたいですね。賃貸不動産における事故は、家賃の滞納から強制退去になるまでのこと。稀に裁判に発展して、強制立ち退きが執行されます。

立ち退きの勧告をしているのに、居座られてしまうと、その間の家賃収入は入ってこないし、強制執行をするときの引っ越し業者への支払いや、入居者の荷物を預かっておかなければいけないコストなども発生します。そうならないためには明け渡しのルールを明確にしておくことです」

仮に強制退去までのフルコースになれば100万円近い損害につながる可能性がある。その前に、「損切りをしましょう」というのが堀さんからの提案だ。

「2カ月間家賃の入金がなかったら、その時点で家賃回収は諦めて『不払い家賃は払わなくていいから立ち退いてください』と損切ること。家賃を滞納する方の中には、消費者金融からの借り入れがあるなど、多重債務に陥っていて、取り立てようにもお金がない可能性がある。

すぐに立ち退いてもらえれば、その部屋を綺麗にしてまた貸し出すこともできますが、居座られてしまうと、解決に1年近くかかるのも珍しくないですからね。立ち退きに至るまでには、大家さんはあくまで冷静に損切りを覚悟することが必須条件です。賃借人の中には、引っ越し費用さえあればすぐにでも退去する意思がある人もいます。そのため場合によっては、家賃を滞納している賃借人に対して、引っ越し費用を払ってあげてでも、早期に退去してもらうのはありだと思います」

法律を知っていることは、時にトラブルが起きた際に味方になってくれる。民法と借地借家法、さわりだけでも勉強してみると面白いかもしれない。

○取材協力:
全国賃貸オーナーズフェスタin東京2017
http://www.able.co.jp/homeowner/fair/20171118/
弁護士法人マーシャルアーツ
http://www.martial-arts.jp/