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金融庁が各金融機関に過剰なアパートローンへの融資に警鐘を鳴らしたことに端を発して、2017年は、4月前後を境に「融資が締まった」という声が多く挙がりました。2018年は、その動きがより強くなるのか、それとも、停滞した状態で推移するのか、誰もが気になるところだと思います。

僕は2007年から10年間、前半は不動産鑑定士として、後半は不動産投資家として、不動産市況および金融機関の融資姿勢を見つめてきました。以下は私見にはなりますが、2018年以降の融資および不動産投資について、過去を踏まえながら予想していきたいと思います。

不動産市況と融資姿勢の関係

言うまでもありませんが、景気は好況と不況を繰り返します。記憶に新しい2008年のリーマンショックに端を発した世界同時不況では、アメリカ市場のみならず世界の市場が混乱に陥り、株価が暴落しました(不動産価格も同様)。

僕は当時、不動産鑑定士事務所に勤務していましたが、クライアントである新興ファンドや上場間もない不動産会社がバタバタと倒れていくのを目の当たりにしました。クライアントが倒産・縮小してしまったことで鑑定士事務所の売上は半減し、社長が沈痛な面持ちで頭を抱えていたのを今でも思い出します。

ファンドや不動産会社が倒産した原因は、リファイナンス(債務の借り換え)できなかったこと、目論んでいた価格で売却ができなかったことによります。つまり、リーマンショックによる金融機関の貸し渋り・貸しはがし、不動産価格暴落で出口を塞がれたことが主因です。

しかし、10年後の2018年現在はどうでしょう? アベノミクス主導により景気は好転し、不動産市況も活況といって良いでしょう。不動産市況のピークは過ぎたという意見も多いですが、リーマンショック後に比べると不動産価格はまだまだ割高ですし、金融機関の融資姿勢も積極的な方だと思っています。

不動産価格は金融機関の融資姿勢と密接に連動しています。換言すれば、金融機関が不動産価格を作っているといっても良いと思います。

不動産市況(価格)と金融機関の融資姿勢には以下のような相関関係があります。

好況時: 融資は積極的 → 不動産価格は上昇

不況時: 融資は消極的 → 不動産価格は下落

単純な相関関係ではありますが、これを理解されていない方が意外に多いような気がします。

2018年は昨年以上に「二極化」が進むと思っています。2017年は「融資に積極的な金融機関と消極的な金融機関」「順調に購入している不動産投資家と購入に行き詰まる不動産投資家」というのが浮き彫りになった年でした。2018年以降はこれがより鮮明になると見ています。

僕自身に当てはめてみても、付き合いのある金融機関も二極化しています。積極的なところは「まだまだご融資できます」とコメントする一方、消極的なところは「本部方針でこれ以上のご融資は難しいです」といった残念なコメントをしてきます。

僕の場合は、消極的な金融機関にいくらアタックしても無駄だと思っていますので、積極的な金融機関との取引関係をより密なものにし、新規開拓する際も積極的な金融機関だけアプローチするようにしています。

既述のように、世の中の景気や不動産市況は変動します。好況・不況を繰り返します。不動産市況は既にピークを迎えた訳ですから、普通に考えれば、この後は不況へ向かうはずです。しかしながら、不況へ向かうにもそれがいつ来るのか、何年もかけて徐々に不況に向かうのか、それとも、リーマンショックのような事変が起きて一瞬にして世相が変わるのか、神のみぞ知るといったところなので非常に難しいです。

僕は今後、更なる「二極化」が進むことを踏まえ、世の中は不況に向かうであろうという仮説の下、不動産投資をやっていこうと考えています。

将来を見据えた投資戦略

2016年~2017年はどう見ても物件購入フェーズではなく、物件「売却」フェーズだったように思います。

僕は基本的に長期保有・キャッシュフロー獲得を取っていこうというスタンスの不動産投資家ですが、売却についても常に頭の片隅に置きながら不動産投資を実践してきました。

2016年~2017年の2年間で数棟の売却に踏み切っていますが、これは不況時に備えてのことなのです。いずれの不動産も購入価格の150%~250%で売却してきましたので、売却益もそれなりの金額になります。売却益には多額の税金がかかってしまいますが、これを差し引いても結構な額の手残りがあります。

好況時にまとまったお金を作っておきたいと考えるのは過去の体験によります。

不動産鑑定士事務所に勤務していた頃(リーマンショック後の2009年~2011年)、僕はクライアントをはじめとする個人投資家の動きを注視していました。当時は今では考えられないほどの割安かつ優良な不動産がゴロゴロと転がっていましたが、金融機関が貸し渋り・貸しはがしをしているときでしたので、一般の個人投資家が融資を引いて購入できるはずもありません。

しかし、そんな中、融資を引いて購入している個人投資家が何人もいたのです。彼らに共通していたのが「まとまった現金を持っていた」ことでした。お金を持っていることを金融機関にアピールし、フルローンが難しくても頭金を1~2割を入れることでうまく融資を引いて超優良物件を購入していたのです。

以下、実際にあった事例です。

2009年当時、懇意にしていた某個人投資家は東京都港区にある某有名商店街のソシアルビルを利回り15%ほどで取得しました(頭金1割・融資9割)。これを見ていた僕は「自分にもお金があれば…」と非常に悔しい思いをした経験があるのです。ちなみに、このビルは後に購入金額の3倍近い金額で売り抜けています。

時代は繰り返します。リーマンショック級の事変が起こるかは判りませんが、不況時に備えて準備していくのも不動産投資における大切な戦略の一つだと考えています。

不動産投資は読んで字の如く「投資」の一種です。

こと不動産に関しては、投資の大原則である「安く買って高く売る」ということを忘れてしまっている人が多いように感じます。

不動産も他の投資と同様、安く仕入れることで旨味を享受できる投資です。安く仕入れることができれば、高値で売却することも出来ますし、高利回りで運用することも出来ます。

僕はブレない投資基準を持っていますので、これにマッチしない不動産は購入しないようにしています。購入することを目的としていないからです。その証拠にここ1~2年の購入スピードは格段に落ちています。

僕のメンターの一人に80億円の投資規模を持つ方がいらっしゃいます。まったく表には出てこない人です。元サラリーマンで2010年頃から不動産投資を始め、わずか5年ほどでここまでの投資規模を築いています。投資規模も然ることながら、特筆すべきは、2016年以降は1棟も購入していないということでしょうか。理由は「高すぎて買っても意味がない」といったシンプルなものです。

保有資産の時価は120億円ほどになるようですが、これまで1棟も売却していないというスタンスも凄いと思っています。売らない理由としては、「再投資先がない」からだそうで、この理由も非常にシンプルです。年間キャッシュフローは3億円超ありますし、脱帽というか納得です。

不動産を安く仕入れることで旨味を享受できる典型例です。次は自分がこうなる番だと思っています。