(※画像はイメージです)

トランクルームやシェアオフィスなど、個人が活用するレンタルスペース需要は徐々に市場を伸ばしつつある。空き家が増加し、人口が減少している日本では、賃貸住宅の需要がすでに頭打ちを見せている場所もあるだろう。

そんな中、注目されている形態の一つに、個人向けのレンタルスタジオサービスがある。個人や趣味の仲間で写真を撮りたいという人がスタジオを借り、きれいな背景の前で理想の写真を撮影する。そこで今回は、コスプレイヤーに特化したレンタルスタジオの収益性について考えてみたい。

「コスプレイヤー向けレンタルスタジオ」とは

世界的にも注目を集める日本のサブカルチャー。海外でも人気が高い日本のアニメやゲームコンテンツを楽しむファンの中には、キャラクターと同じ衣装を着て楽しむ「コスプレイヤー」と呼ばれる人々がいる。近年は仮装用の衣装を来た若者が多数参加するハロウィンイベントもすっかり定着し、「コスプレイヤー予備軍」ともいえる人々も年々増加している。

現在、コスプレイヤーの人口はどの程度だろうか。国内最大級のコスプレイヤー向けSNSである「コスプレイヤーズアーカイブ」の登録数は34万人を超えている。コスプレイヤーの大半は10~30代の女性であり、男性の割合は少ない。一方でこのSNSに登録をしている人間にはカメラマンもいるため、カメラマンは男性の割合が高くなる。

ただ、コスプレイヤーという人々は「衣装を着て楽しむ」だけではなく「キャラクターに扮した自分たちを撮影して楽しむ」という文化を生み出している。写真を一枚の作品とするには、衣装を着てキャラクターになりきるだけではなく、作品の世界観に沿った背景が必要になる。

普通の写真館で撮影すれば、「ホリゾント」などの背景で個人をきれいに映し出すための写真は撮影できるが、ファンタジーやホラーの雰囲気を演出する、凝った背景を設けている写真館はほぼないといえる。そこで、アニメやゲームの世界のような背景、セットを用意したコスプレイヤー向けのレンタルスタジオが生まれてきているのである。

アニメやゲームのキャラクターになりきって撮影を楽しむコスプレイヤーは多い

コスプレイヤー人口は30万人超


コスプレイヤー向けのレンタルスタジオにも、大きく分けて2つのタイプがある。一つはマンションや事務所を改装し、個人やグループに貸し切りでレンタルすることを前提とした「貸し切りスタジオ」タイプ。もう一つはビル一棟、大型の家などをスタジオに改装し、多数の人間にシェアしながら利用してもらう「シェアスタジオタイプ」である。

いずれも時間ごとに課金されるシステムを採用していることが多いが、貸し切りスタジオタイプの場合は1時間数千円といったケースが多い。シェアスタジオは十数部屋、数十パターンの背景を他者と共同で利用できるシステムで、4時間や8時間で数千円と、半日以上の利用を前提としている。

 

貸し切りスタジオ

シェアスタジオ

物件種別

マンションや事務所、戸建てなど

戸建て、ビル一棟

面積

30~120㎡

300~1500㎡

利用可能人数

~20人程度

20~150人程度

背景の種類

10程度

30以上

人員

受付1人(掛け持ちのケースも)

受付、清掃、巡回など最低2名

シェアスタジオのほうが規模が大きく、利用者を多く収容することもできるが、ビル一棟規模のスペースが必要なので、スタジオ開設に伴うイニシャルコストが1000万円以上と大きく、そして毎日の営業に伴う営業用の人員も2名は確保しなくてはいけないので、ランニングコストも掛かる。貸し切りスタジオは1名受付の人員がいれば営業可能となっている。

学校を模したスタジオも需要は高い

コスプレイヤー向けレンタルスタジオの開設費用

現在運用されているシェアスタジオを見ると、古くなったビルを改装し、スタジオに転用しているものが目立つ。物件の賃料や改装費を合わせれば数千万円は最低必要であり、時には億を超えることもある。

ダンスレッスンなどに使われるスタジオで撮影する人もいる

そこで手軽に始めやすいマンションや戸建てを改装したタイプの貸し切りスタジオの開設費用を、実際に都内でコスプレスタジオを経営しているT氏に聞いてみた。

T氏は都内JRの駅から約10分の場所に2階建て、100㎡ほどの戸建てスタジオを借りて、5年以上経営を続けている。主な利用者はコスプレイヤーだが、時にはテレビの制作会社や、アニメファンのパーティールームとして使われることもあるという。

物件の毎月の賃料は80㎡ほどのスペースで12万円ほど。開設にあたっては改装可能な古い物件を不動産会社に探してもらったという。事業用に利用することを説明する際に「コスプレスタジオ」が何かオーナーに理解してもらえず、コスプレという趣味が風俗的なものではなく、若い女性を中心とした健全な趣味であることを理解してもらうのに苦労をしたということだ。

物件の初期費用は内装の変更が伴うため保証料が入り、やや多めの家賃7カ月で100万円ほど。そして内装は壁紙、床、天井の張替えはもちろんのことアンティーク家具や照明、造作などを設けて75万円ほど掛かったのこと。スタジオに蔦を張り巡らせたりするなど、細部は自分で細工をしている。

さらに、3人ほどで利用できる更衣室のためのパーテーションや鏡など設備で合計約100万円。その他に外注ホームページ作成費用として約5万、消耗品や雑費で5万、合計約200万円かかっているとのことである。

更衣室には鏡や化粧台など以外に作業用のパソコンを置くことも

物件探しのポイントは

T氏は元々アマチュアカメラマンとして活動しており、その中で出会ったコスプレイヤーに「安くて自分が撮りたい背景を持っているスタジオがあれば使いたい」との意見を聞くことが多かったので、自分で開設を決めたという。

広告費は特に掛けておらず、知り合いのコスプレイヤーの口コミやコスプレ趣味を持つ人たちが集うSNSでの情報発信を利用している。また競合物件が都内でも150~200室ほどと、それほど多くないので「地名 コスプレスタジオ」などで検索をすれば、SEO対策をあまりなくても検索上位に表示されやすいという。

苦労したのは、スタジオに向いている物件探し。小さな部屋がいくつもある物件は複数人の集合写真が撮りにくいのでスタジオには向いていない。20畳ほどあるような広い部屋、2.8メートル以上の高い天井の高い物件かつ、駅から離れすぎない物件を見つけるのに時間を要した。

コスプレイヤーは大掛かりな衣装やカメラなど、大きな荷物を持ち歩くので、できれば駅から10分前後以内が好まれる。駅から距離があるスタジオは敬遠されやすいという。

コスプレイヤー向けレンタルスタジオの収益モデル

では毎月の収益を見てみよう。

ランニングコストは家賃の12万円、水道光熱費が2万円、無料Wi-Fiを設置しているので通信費が5000円。人件費は基本的にT氏だけだが、自分の外出時は友人のコスプレイヤーに頼むこともあるので、平均で2~3万円だという。その他には内装を季節に合わせて変更をすることもあるので、年間の平均額で十数万円で、月間にすれば平均1万円。アメニティなどサービス品の消耗費で5000円程度だという。

収益面では時間あたり2500円のスタジオの稼働率が平日は10~22時の営業の中で50%。休日は80%なので、平日は20日×(12時間×0.5)×2500=30万円。休日の売上は10日×(12時間×0.8)×2500=24万円。その他に要望があれば時間外営業や深夜営業も行い、休日前には23~8時で1万5000円というサービスも行っている。

繁忙期はやはり学生の休暇時期である8月や12月、5月になるが、それほど季節によっての変動はなく、毎月60万円前後で売上は安定しているという。さらにT氏の趣味であるカメラ撮影の腕を活かし、スタジオでカメラマン撮影も有料で行っているため、それで5万円程度の売上もある。

その他に簡単な菓子や飲料などを販売したり、高性能カメラのレンタルもしており、2~3万円ほどの売上があるということ。余裕が出てくれば、コスプレイヤーから古くなった衣装を買い取ってリサイクル販売するビジネスも考えているという。

売上が65~70万円、ランニングコストが17万前後で、キャシュフローとしては50万円ほどを確保できている。もちろん、スタジオ設立間もない時期は固定客も少なかったため、現在よりも売上は低かったが、1年で売上は月40万に達するようになり、赤字になった月はないという。

スタジオ運営で重視すべき点は

コスプレイヤーから支持を受けるスタジオのコツや立地、設備面で重要な点を聞いてみた。

「女性アニメファンが訪れる池袋であれば、小規模なスタジオでも目に触れる機会が多いので、知ってもらいやすい。しかし家賃が高いので、狭い室内に多くの撮影用の背景を盛り込まなければいけないし、あまり多くの人数の利用者を集められない」という。

池袋は山の手線内では利用者数上位に入る交通の便の良さと、比較的低い家賃相場だが、それでも家賃の高いビルのテナント内にスタジオを作った法人はいくつも撤退しているという。

西洋ファンタジー風の背景は常に需要がある

 T氏は「自分個人で受付、掃除、撮影の手伝いなどの管理を行っているので、人件費が殆どかからず、管理以外の時間は空くので他の仕事をすることもできる。人を雇う場合は日中だけ頼んでも1日5000円以上の人件費が発生してしまうため、大型のシェアスタジオでない限りは人を雇うのではなく、自己管理でないと収益を出すのは難しいだろう」とアドバイスを送る。

また、管理人がコスプレやアニメに興味がないと、旬の作品を捉え、需要のある背景を考えることができないので、リピーターがつかないという。「管理人も写真撮影のアドバイスをしたり、コスプレイヤーと交流してどんな小物や背景を揃えないといけないのか、そういった情報収集は非常に重要です」

ただ場所を貸していればいいだけではなく、運営者本人もコスプレファンになって、カメラなどの知識を身につける必要がある。そうすればスタジオに固定ファンが付くようになり、月1回利用するようなリピーターも獲得できる。場所だけではなく、イメージ背景という「コンテンツ」を提供することこそが重要になる。

(楽待新聞編集部)