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ロバート・キヨサキ氏は著書『金持ち父さん貧乏父さん』で「セールスとマーケティングの能力ほど重要な技術はない」と書いている。
日本の賃貸物件市場の厳しさは人口減少が背景にあるが、それだけではない。国土交通省が発表している新設住宅着工戸数のデータによると、昨年11月時点の年率換算で賃貸アパートなどの「貸家」は約41万8000戸。相続税など節税対策による供給増を背景に、持ち家27万4000戸や分譲住宅26万2000戸と比べて約2倍の着工数となっている。
「金の卵」を期待して取得した不動産も、空室が埋まらず返済がかさめば、地獄のような負債になりかねない。賃貸ビジネスで勝ち抜くために、どんなマーケティングが必要なのか。今回は「物件購入後」に焦点を当て、マーケティング・広告制作が専門で不動産投資も行っている吉野明生さんの考え方を紹介する。
吉野さんは、築40年前後で300万~1000万円程度、高利回りの戸建てや区分マンションに狙いを絞って投資。地方都市郊外や駅徒歩45分など、一般的に客付け困難な物件も多いが、「この手法を使った結果、ほとんど空室期間なく、想定通りの入居者を獲得できています」と語る。
「マーケティングは、マーケット(市場)の競合(ライバル)とターゲット(見込み客)を見定め、サービスや商品を購入してもらう戦略立案プロセスです」。吉野さんが考える、マーケティングを取り入れた入居者を獲得するプロセスは5段階に分かれる。
ステップ1:物件の特徴をキーワード化
マーケット(賃貸物件市場)で戦うには、まず「自分の物件の競合(ライバル)は?」を知ることが第一歩。吉野さんは賃貸不動産のポータルサイトで、自分の物件と同じ駅や条件を入力してヒットした物件50~100件程度と自分の物件との違いを整理し、キーワードにしている。
「たとえばヒットした物件が和室メインの間取りで自分の物件は洋室だけならば、『全室洋室』がキーワードになり得ます。一方、ヒットした他物件に洋室メインの物件が多ければ、逆に『和室が多い』がキーワードとなる。『ベランダなし』といった一見短所に見えることも、他の物件のほとんどにベランダがあるならキーワード候補に入れます」
吉野さんが実際に客付けに成功した物件をモデルに、マーケティングの方法を考えてみる。
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