賃貸物件の設備やリフォームにおいて「女性目線」を意識する投資家は多い。住むのは男性でも、母親や彼女が同伴して部屋を決めることがあり、女性ウケを意識して部屋作りを行うことは空室対策の基本ともいえる。

一体それはなぜなのか。現状を分析し、何を改善すれば女性に「ここに住みたい」「住み続けたい」と思ってもらえるのかを考え、実行することが重要だ。

有効な手段の一つにリノベーションがある。建物全体、もしくは室内に手を加え、雰囲気や動線、住み心地を格段に改善できる。今回はそのヒントとなるリノベの事例、費用の概算についてお届けしたい。

※本記事は、東京・品川で2017年11月18日に開催された賃貸物件オーナー向けのイベント「全国賃貸オーナーズフェスタin東京2017」(主催:エイブル)内で、株式会社朝日リビングが講演した「女子力企画室のリノベーションコレクション」「2017年のリノベテク~ざっくり金額も紹介します~」のセミナーで得たエッセンスから構成している。

所有する物件を多面的に分析しよう。おすすめはSWOT分析

株式会社朝日リビングには、対象となる賃貸物件に対して地域情報(近隣の施設や競合物件)を基にSWOT分析を行い、女性目線ならではの入居促進につながるリノベーションプランを提案する部署「女子力企画室」がある。プランナーや一級建築士が多数在籍し、女性にとって魅力的な物件へのリノベーションを数多く提案している。

セミナー「女子力企画室のリノベーションコレクション」では、「入居促進」と「退去抑制」の2つをテーマとして取り上げた。講師は同社企画プランナーの上原瑠理子さん。オーナーがすることとして、上原さんは物件の強みと弱みを整理する必要性を強調した。

物件には、手を加えれば変えられる意匠性や設備、間取りといった「内部要因」と、築年数や立地、交通環境など自分ではどうしようもできない「外部要因」がある。上原さんはそれらを把握するやり方として「SWOT分析」を紹介。内部環境と外部環境を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つのカテゴリに分けて分析する、というものだ。具体的には以下のようになる。

■内部環境

S(強み、Strengths):洗面・トイレ別、共用部にスペースがある

W(弱み、Weaknesses):セキュリティが甘い、古めかしい銘板、エントランス

■外部環境

O(機会、Opportunities):近くに大学がある、24時間営業のコンビニが近い

T(脅威、Threats):最寄り駅から遠い、築年数が古い

このような考えのもとで、どのようにリノベーションすれば魅力的な物件になるかを考えていく。同社がこれまで手がけたリノベーションの事例を見てみよう。

■1.外観

敷地外から玄関が丸見えで、プライバシーに難があった物件に対しては(物件A)、オシャレな門扉を新設することで、人の目につきにくくし印象を好転。同時に、オーナーにとって管理が手間になり得る植栽をなくし、玉砂利とポールに変更した。

築38年の物件では、隣家との間にあるレンガ製の壁が老朽化していた。同社は物件のテーマカラーをダークブラウンに設定し、木目の石調タイルへの貼り替えを行い、外壁の色も合わせた。

別の事例では、エントランスに入るのに階段を上る必要があった物件にスロープを新設。お年寄りや子育て世代の女性に配慮した。

■2.共用部

ポストを新しくしたり、宅配ボックスを新設したりして居住者の利便性を高めた。近年はネットショッピングの利用者が増えており、不在時の荷物の受け取りに便利。

名称看板が古いと、それだけで築年数を感じさせてしまう。たとえば「小島ハイツ」を「KOJIMA HEIGHTS」と表記するだけで印象がガラリと変わる。フォントや銘板の色は、物件の外壁の色やイメージに合わせて決める。

共用廊下がタイルの場合、割れたり傷んだりすれば荒れた印象を与えてしまいかねない。シート状の床材である長尺シートを貼れば、見た目だけでなく足音を軽減する効果も期待できる。

■3.内装

最寄り駅まで徒歩10分で、都心へのアクセスに優れている築20年ほどの物件。家具を配置しづらい間取りであったことや、需要が少ない和室だったためフルリノベーションを実施し、和室をカフェ風の対面キッチンにリノベした。カウンターは木を基調とし、黒板クロスを貼ることで部屋の印象を一気にカフェ風に近づけた。

その他、同じく対面キッチンへのリノベでは、カウンター上部に吊り戸棚を設けず開放感を演出するという事例もある。

■4.壁面アレンジ

玄関脇にあるデッドスペースに小物を置ける棚と鏡を設置。活用しづらいスペースを利用してオシャレさを演出した。

話はターゲットの選定に進んだ。ターゲット選定の見極め方としては「間取り」と「エリア」から絞り込むやり方があるという。たとえば3DKの物件のターゲットを間取りからファミリー層と想定した場合、その家族構成や年代、所得などまで細分化していく。また、物件の半径数キロ以内のエリアに大学があるならば、ターゲットを大学生に絞ってみるという具合だ。

次に大切なのが入居者ニーズだ。上原さんは「思わず入居したくなる、思わず更新したくなる物件にするにはどうすればいいか」と話す。2015年のSUUMOなんでもランキングで退去理由を見ると、「物件に不満があったから」「よりよい条件の物件を見つけたから」が上位となっている。そのためターゲットとなる入居者のニーズを掴み、「入居後の生活を想定した部屋づくり」を行うことが重要なのだ。事例を見てみよう。

■5.家具の配置がイメージできる

築40年ほどだが、駅からのアクセスはいい物件。室内は劣化して個室はすべて和室だったほか、デッドスペースが多く家具の配置に難があった。そこで同社はキッチンと隣室を区切る壁をなくし、空間を広くすることで家具の配置がイメージしやすい間取りにした。

■6.入居者のイメージに合わせる

お嬢様大学に近い女子学生専用の築30年の物件は、オートロックやインターフォンもなく設備面で難があった。清楚やおしゃれといったイメージとは裏腹に、暗い印象の外観で、ターゲットである若い女子学生とのギャップがあった。

同社は洋館をイメージし、白を基調にした清潔感のあるエントランスに変更。女子学生が安心できるよう玄関をオートロックにし、さらにフェンスを設けて敷地の外と中の区切りを明確に作った。さらに室外灯を複数設置し、夜でも明るくした。共用部も明るい印象にし、廊下の壁には小鳥の形をした可愛らしい照明をつけた。上原さんは、「帰ってきたい家になるように工夫した」と説明した。

入居者のニーズを満たすことが、退去を抑止することにつながる。

セミナー「2017年のリノベテク~ざっくり金額も紹介します~」では、同社女子力企画室プランナーの白砂友季さんが登壇。エントランス、外壁、共用部、内装の4項目について、リノベーションにかかった費用の概算を紹介する形で進められた。一部を紹介する。

既出の物件Aでは、門扉や植栽などの設置費用として190万円〜とのことだった。敷地内に居住者専用のゴミ捨て場がある別の物件では、ゴミ捨て場があった場所に物件名を記した壁を作り、その裏側にゴミ捨てスペースを新設して、印象を格段に上げた。費用は65万円〜だ。

共用部のリノベでは、傘かけを新たに付けるケースがある。一つあたり1200円〜だという。トイレでは、ペーパーフォルダーやタオル掛けをファッション性のあるものに変更するだけで印象が良くなる。ペーパーフォルダーは、3000円程度〜、タオル掛けは1500円程度〜で交換できる。

「女性受けする物件」と言っても、学生か社会人か子育て世代かによって、物件に求めるものは異なる。オーナーとしては、そもそもどんな人に入居してもらいたいかを把握し、それに見合った造作や間取りを整える必要はあるだろう。

○取材協力
・全国賃貸オーナーズフェスタin東京2017
http://www.able.co.jp/homeowner/fair/20171118/

・朝日リビング
https://www.asahiliving.co.jp/

・女子力企画室
https://www.asahiliving.co.jp/jks