この時期、すべての不動産投資家が行わなくてはならない「確定申告」。一度行ってしまえば要領もわかるが、昨年初めて物件を購入したという「新米投資家」の中には、人生で初めて確定申告を行うという人もいるかもしれない。

一見しただけではどのように書けばいいのかわからないことが多そうな不動産投資家の確定申告。今回は税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所の渡邊浩滋先生に、昨年、晴れて大家デビューを果たした楽待スタッフの馬場が、一欄ごとに確定申告の書き方や、注意すべきポイントを教わった。

開業前のリフォーム、経費の項目に注意

馬場 本日はよろしくお願いします!

渡邊 よろしくお願いします。早速ですが、まず必要な書類を拝見しますね。物件の契約書、諸費用の領収書、それと登記簿謄本。うん、必要なものはありますね。

馬場 ちなみに、登記簿謄本は何に使うんでしょうか?

渡邊 築年数を見ます。それによって耐用年数を決めるので、大事なんです。売買契約書には築年数が書いていない場合もあるので、謄本で確認しましょう。

馬場 なるほど。

渡邊 購入したのが3月、入居がついたのが8月ですね。8月までの間、リフォームはしていますか?

馬場 はい。全部DIYでやっているので、細かい領収書なんですが、大丈夫でしょうか。

渡邊 領収書は問題ないですが、その金額や項目は、エクセルなどですべて集計することで、帳簿をつけなくてはいけません。

領収書を部材と開業費に分類(音声なしでもご覧いただけます)

▼ポイント▼

部材や開業費を修繕費に入れるケースはありがちだが、実は間違い! 賃貸開始前のこうした費用は修繕費とは別に計上する。

・部材…賃貸開始前のリフォームに必要となった壁紙や材料費など
・開業費…賃貸開始前にかかったセミナー代やコンサルティング費用など

馬場 教えてもらった通りに分類して、エクセルで集計しました!

渡邊 これでOKです。いよいよ記入ですが…その前に一つ確認です。今回青色申告をするということですが、「青色申告承認申請書」の提出は済ませていますよね?

馬場 はい、もちろん!

渡邊 受付印が押された控えはお持ちではないですか。

馬場 控え…? 提出時、ネットで調べたら1枚の申請書を書いて郵送すればいいと書いてあったので、そうしてしまいました。

渡邊 郵送でこの申請書を送る場合には2枚送って、1枚は返送用封筒をつけるんです。そうすると受付印を押して返送してもらえます。そうすると、「受理されたかどうか」が確認できます。

馬場 え、じゃあダメなんですか!?

渡邊 いえ、ダメというわけではありません。ですが、確認のためにはやっておくほうがベターです。これは、確定申告の郵送の時も同じです。控えは必ず送って、受付印を押してもらって返送してもらうようにしてください。今回は、おそらく受理されているでしょうということで、大丈夫です。

渡邊 では、記入していきましょう。不動産収入の場合、提出するのは次の書類です。

・青色申告決算書(3枚 ※ただし事業的規模の場合は賃借対照表を含め4枚)
・確定申告書B(2枚+添付書類台紙)

渡邊 まずは青色申告決算書からです。1枚目は損益計算書ですが、収入と経費を書いて、利益を出していく表になります。初めに「29年分」と空欄を埋めてしまってください。それから、「1月1日から12月31日」と。それから、収入の内訳を、2枚目に記入しましょう。

馬場 はい。まず一つ目の欄は「貸家、貸地の別」ということですが、僕の物件は戸建て物件なので、貸家で合っていますか?

渡邊 はい。今回は戸建てだから簡単ですが、ここの欄は、1部屋ずつ記入してください。つまり、1棟アパートやマンションを所有している場合には、101号室、102号室…とそれぞれの部屋ごとに住所や入居者の名前、入居期間を書いていかなくてはいけないということです。

馬場 それは大変ですね…いつか1棟モノを購入した時の参考までにお聞きしたいのですが、同じ物件の場合、住所の欄は「〃」とか「同上」じゃだめなんですか…?

渡邊 いいですよ! 書いてられないでしょう、腱鞘炎になっちゃいます(笑)ただ、PCで作ればコピーできるので、断然楽ですよ。

馬場 安心しました。それでは、次の欄ですね!

渡邊 不動産の所在地は、その物件の住所を。その次の賃借人の住所・氏名の欄ですが、ここにはアパートなどであれば部屋番号と、入居者の名前を書いてください。

馬場 実はこの方、12月に退去してしまったんですが、その場合は…?

渡邊 それであれば、入居していた方の名前を書いて、その方が入居していた期間を次の欄に書いてください。29年の8月から12月ですね。入れ替わった入居者はいますか?

馬場 いえ、まだいません。

渡邊 であれば、これでOKです。もしすぐに入居された場合には、次の段に次の入居者の名前、そして期間を例えば29年12月から29年12月、というように書いてくださいね。

退去があり、すぐに入居者がついたときの書き方

渡邊 では、次に面積ですが、これは謄本で確認して、延べ床面積を記入してください。書けましたか? では次ですね。月額賃料は5万5000円。この物件は、共益費はありますか?

馬場 ありません。

渡邊 それでは、この欄は5万5000円のままで大丈夫です。共益費があれば、それも含めた金額を書いてください。次は年額ですね。これは、入居者さんがいた期間の賃料の合計額を書いてください。

馬場 口座に振り込まれた額ということですか?

渡邊 いえ、口座に振り込まれた額は管理費が引かれていますよね。引かれる前の額を記入してください。これも経費と同じですがエクエルなどで帳簿をつけ、残しておいてくださいね。

馬場 わかりました。

渡邊 次の欄に行きましょう。礼金、権利金、更新料という欄です。この物件は礼金5万5000円ですね。なので、「礼」に○をつけて、5万5000円と記入してください。その次が保証金、つまり敷金です。ですが、この敷金、退去の時に返還していませんか?

馬場 管理会社に確認したんですが、まだみたいです。

渡邊 じゃあ返還は1月以降ですかね。それなら、この時点ではまだお預かりしている状態なので、この保証金の欄に敷金5万5000円と書きましょう。

馬場 返したときはどうしたらいいんですか?

渡邊 100%返還したのであれば、0円ということになります。ただ、入居者負担の修繕費がある場合には、お預かりした金額と返還額の差額が収入ということになるので、そうした処理が必要になります。1枚目に戻って、賃貸料と礼金の金額を先ほどの通り埋めてください。そのあと、その下の空欄に「その他の収入」と記載してください。ここに、退去時に返さなくていい「クリーニング代」として8万1000円をいただいていますので、その金額を記入します。

渡邊 先ほど説明した入居者負担の修繕費がある場合、その差額を収入としてここに含めましょう。違約金などをいただいた場合も、この欄です。

馬場 全部合算で記入するんですか?

渡邊 合算です。何度もいいますが、こうしたものもすべてエクセルで管理しておいたほうがいいですよ。

決算書2枚目(クリックすると拡大します)

渡邊 さあ、次は減価償却費の計算です。決算申告書の3枚目ですね。まず、減価償却資産の名称ですが、これは「○○ハイツ」「××マンション」など、建物名があればそれを書きます。戸建てなどで名前がない場合には、「◯◯(地名)戸建て」などと分かるようにしておきましょう。

馬場 はい。

渡邊 次に、面積は先ほどの面積と同じですね。平米であれば平米、と単位も書いてください。その次は、項目名は取得年月日となっていますが、減価償却は実際には事業を開始したときからでいいので、29年の8月からということになります。

馬場 購入した時期ではなくていいんですか?

渡邊 減価償却は「事業の用に供したときから」スタートという考え方です。

馬場 リフォーム期間がある場合には、リフォームが終了して、貸し出したときからですか?

渡邊 正確に言うと、入居者がついたときではなくて、「募集を開始し、かつ、貸せる状態になっているとき」という二つの条件があります。募集をしているけどリフォームが終わっていない、というのはNGです。二つの要件がそろって初めて減価償却がスタートします。さて、次は建物の取得価格ですが…

建物の取得価格の求め方(音声なしでもご覧いただけます)

▼ポイント▼

取得価格は、売買契約書の建物金額だけではない! 仲介手数料や、部材も加えたものを建物価格として記入する。

馬場 来年以降、この減価償却の欄はどうなるんですか?

渡邊 償却の基礎となる、取得金額自体はずっと変化しません。変化するのは、未償却残高の欄ですね。さあ、ここからはさくさく埋めましょう。償却方法の欄は、建物は定額法しか使えませんので、「定額法」と書きます。耐用年数は、この物件は木造で、耐用年数の22年をオーバーしていますので「法定耐用年数×20%」ということで、4年です。償却率は、ネットで調べて書いてみてください。

馬場 僕の場合は、0.250ですね。

渡邊 はい。その次ですね。本年中の償却期間は事業を開始した時から12月までということなので、5カ月間です。12分の5、ということになります。1カ月未満であっても、1カ月と数えて問題ありません。次の本年分の普通償却費は、(ロ)×(ハ)×(二)、つまり償却の基礎になる金額×償却率×本年中の償却期間です。計算して、記入してください。割増償却は0円で、本年分の償却費合計の欄に同じ金額を書きます。割増償却にあたるのは、サービス付き高齢者向け住宅を賃貸に出しているときのなどの場合です。

馬場 次の貸付割合は1人の人に、100%貸しているから100%で間違いないですか?

渡邊 はい。これは例えば、自分の車なんかを減価償却する人がいますね。事業で使っているのが50%、とすればこの欄は50%になります。なので、本年分の必要経費算入額も、先ほどまでと同じ額を書いてください。

馬場 次の未償却残高という欄ですが…

渡邊 これが何かというと、今回資産から経費に変えたので、残りはいくらでしょうか、という額です。なので、全体から本年分の償却費を引きます。翌年は、前年の未償却残高からその年分の普通償却費を引いたのが翌年度の未償却残高、ということになりますね。耐用年数は4年、償却率も変わりません。変わるのは、未償却残高の欄だけが減っていきます。ここが1円になるまで続けていくということですね。ここまで来たら、あとは合計額を入れればこの紙は終了です。1枚目に戻りましょう!

決算書3枚目(クリックすると拡大します)

渡邊 ここまでくれば、あとは簡単ですよ。集計したもので、項目を埋めていくだけです。最初に不動産収入、ここは2枚目ですね。ここで出た数字を入れます。この後は経費ですが、まず租税公課。こちらはけっこう多岐にわたるんですが、まず収入印紙、それから不動産取得税、あと、登録免許税ですね。その次の損害保険料の欄で気を付けておきたいポイントは、もし1年を超える保険に加入している場合には、期間按分が必要です。例えば10年間の保険なら、120の何カ月分、という感じですね。1年以内なら全額でOKです。

馬場 次は修繕費です。

渡邊 これは、賃貸を開始した後に発生する固定費的な修繕とか、汲み取り式の浄化槽の定期点検代とか。

馬場 水漏れが発生しちゃって、業者さんに直してもらった、とかもここですか?

渡邊 そうですね。あとは通常のお部屋のリフォームとかも含まれます。次の借り入れは…今回は現金買いということなので記載なしです。借入がある場合にはその年に支払った返済金額のうち、利息のみを抜き出して集計したものを記載します。

馬場 はい。地代は、借地権がある場合ですか?

渡邊 そうなりますね。さて、あとはここに5カ所ある空欄を適当に埋めていきます。よくあるのは、管理費。これも経費にしていきましょう。

必要経費を埋める(音声なしでもご覧いただけます)

馬場 書籍代や不動産投資のセミナー代は経費に含まれると聞いたんですが、どうしたらいいんでしょうか。

渡邊 細かい経費は、「その他の経費」にまとめて入れちゃいましょう。

まさかの赤字…控除受けられず

渡邊 青色申告をすると、本当は10万円の控除(※事業的規模の場合、最大65万円)があるんですが、交通費を入れていないこの時点ですでに赤字なので、控除が受けられません…。なので、青色申告の控除前の所得金額や控除額は書かず、所得金額の欄をマイナスで書いてください。

馬場 はい…。

渡邊 借り入れがある場合、その下の「土地などを取得するために要した負債の利子の額」の欄の記入も必要になるのですが、その場合、借入利子について土地の部分のみを按分して記載しましょう。これが何かというと、赤字が出た場合、サラリーマンの給与所得と損益通算、つまり相殺ができるわけですが、ここに利子の土地分を書くことで、その分を除いた赤字のみが、相殺の対象になるのです。

馬場 なるほど。

渡邊 今回は記入はなしですね。これで決算書は完成です!

決算書1枚目(クリックすると拡大します)

ここまで四苦八苦しながらも書き上げた馬場。しかし、まだ確定申告は終わらない。次回「確定申告書B記入」編へ続く。