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第4回目のコラムは前回に引き続き、キャッシュフロー(C/F)と損益(P/L)の話をしようと思います。前回の内容に少し補足した上で重要性をお伝えしていきます。

ところで、東京商工リサーチの調査によると、2016年に倒産した544社のうち、半数以上が黒字倒産だったようです。

一般的には、利益だけに偏った経営には疑問があり、キャッシュフロー計算書が重要であることを示しているわけです。不動産経営には馴染みが薄いかもしれませんが、売上を立てる時には売掛金、仕入時には買掛金と呼ばれる手法で決済をするため、その回収の期間も大切になってきます。

不動産でいうところの滞納が売掛金に当たるというイメージでしょうか。売上(家賃)は発生していますが、それが回収できていない状態です。売掛金は信用力で成り立っていますが、滞納は信用力をむしろ失っているので、実際は全く違ったものではありますが…。

一方、最近の不動産ブームで、安易に参入するサラリーマン大家はキャッシュフローに目がいきがちで、利益への感度が低いと感じています。(という私もロバートキヨサキさんの著書を読み、最初はキャッシュフローにばかり目がいっていたので、そんなに偉そうなことは言えませんが…)

不動産でリタイアを目指す場合は、キャッシュフローと利益、どちらの感覚も養わないといけません。この違いがしっくりくるまで安易にリタイアしない方が良いでしょう。

理由は二つあります。

一つは、物件を増やすために銀行の融資を受けるためには、キャッシュフローではなく、利益がどれだけ出ているかが大事であること。

そしてもう一つは税金問題です。キャッシュフローに対して税金がかかるのではなく、利益に対して税金がかかります。

なので、キャッシュフローはもちろん大事なのですが、それ以外に利益がどれぐらい出るのか? この利益への感度が重要となってきます。

参考までに、私の例を参考に利益とキャッシュフローについて考えてみます。

<前提>
・今期に購入した土地(建築中)が全てフル稼働する。

・保有している物件は個人・法人で分かれており、実際には複雑な所得・税金問題がありますが、仮に全て法人名義で保有、法人から個人へ役員報酬を払っていると仮定した暫定的なシミュレーションです。

<税引き前利益>

売上(家賃収入)- 一般経費 - 減価償却費 - 借入金利

・家賃収入:4900万円
・減価償却費:1300万円
・借入金利:830万円
・固定資産税・管理費:460万円
・その他経費:180万円
・役員報酬:1000万円
・営業利益:1130万円

生活費としてサラリー1000万円を確保しても、利益は1000万円以上残る計算になります。修繕積立金は経費にならないので、一部を修繕積立に回しながら残りを再投資して事業を大きくしていくイメージです。

<税引き前キャッシュフロー>

利益 + 減価償却費 - 返済元金

・1130万円 + 1300万円 - 1470万円 = 960万円

放っておいても1年間で1500万円近い返済が進んでいます。上記では1470万円で計算してみます。元金の減りが減価償却費よりも大きいので、B/Sは資産リッチになっていくことも想定できます。

ちなみに、利益とキャッシュフローの差を生まない、非常に分かりやすい一例は「築古の物件を現金で買い、数年後に減価償却が切れてしまった場合」です。減価償却ゼロ・返済元金ゼロとなり、利益とキャッシュフローが一致します。

ただ、私が考える不動産経営のメリットは、適度なレバレッジをかけて売上(家賃収入)を増やしながら、利益とキャッシュフローのバランスを取って少しずつ事業を拡大していくことです。言い換えれば、減価償却費と返済元金のバランスともいえるかもしれません。

そのために、必要以上に耐用年数を超える融資を引きません。(といっても木造新築で30年の融資を引いているので、絶対ではありませんが)

少し話がそれますが、融資期間と残耐用年数の差以上に重視しているのが「残耐用年数の絶対値」20年以上です。理由は、長期的な好不況の波を考えれば、20年あれば好不況が1サイクルし、この1サイクル間のどこかで売却という選択肢が取りやすいと見込んでいるためです。(それまでの間にインカムゲインで稼ぎ続けてくれる好立地物件を購入しています)

話を元に戻すと、銀行は賃貸事業に融資を出してくれるわけですから、しっかり利益を残していかないといけませんが、実は利益って調整の余地があったりします。

例えば役員報酬や減価償却などです。キャッシュフローの方が嘘をつきません。私の場合は、もし損益が赤字になってしまうぐらいなら、減価償却を減らして黒字にします。

実際、減価償却は単年で見れば節税ですが、売却までを見据えた生涯利益で考えると、毎年減価償却を最大額で償却していくと、簿価が減り、売却時の利益が出やすくなります。一過性の売却益は非常に節税しづらいので、それならば毎年の減価償却額を減らして別の手法で節税という戦略も出てくるわけです。

そして次に税金の問題。

税金はキャッシュフローではなく利益に対してかかります。法人の場合、節税として小規模共済、経営セーフティー共済、保険などが挙げられます。個人の場合は、住宅ローン減税やiDeCo・NISAなどの非課税の運用商品などです。あとは一時期ほどの過熱ぶりはありませんが、ふるさと納税なども効果的ですね。

これらを組み合わせながら、節税して税金を繰り延べしていくわけですが、ほとんどの商品は節税の犠牲として同時に現金も失ってしまいます。節税で現金を失うならば、多少の税金を払っても、攻めの再投資(例えば次の不動産を買う頭金など)に回すべきではと最近良く考えています。

少し前の、太陽光パネルを1年で減価償却できる(しかも融資も組める)というのは、税金の繰り延べ効果としては最強でしたね。その分、信用毀損してしまうので不動産拡大には向かないですが、現金を減らさずに税金を繰り延べながらキャッシュフローを増やす施策って非常に魅力があります。あとは航空機リースなんて手段もありますが、元本保証されないのでややリスキーです。

いずれにしても節税ばかりを考えていると、気持ちが小さくなり萎縮してしまうので、税金は最低限の知識を付け、最低限の守りを固めながら、自分が再投資出来る金額がいくらあるのか、それを何に再投資していくのか。これを考え続けることが不動産経営の醍醐味なのかもしれませんね。